※その刹那が堪らない。の番外編です。奥さんの語り+裏です。









「ジーノっ、お前酔ってるのか?」

「酔って無いよ、っ…ぁ…」


試合後の打ち上げの後と言うこともありすっかり出来上がっている夫の帰宅と、胡散臭い笑みが特徴の彼が家に押し掛けて来たのが22時を半分程過ぎたぐらい。今日は夫が帰って来たらこの子を寝かしつけて、二人で晩酌でもしながら、ゆっくり時間を過ごそうと考えていた私は見事に玉砕。長い睫毛の付いた切れ長の目で私達を少なからず敵視しながらも口元に笑みを絶やさないこの男は、昔からよく知っていた。彼と結婚する前から。

私は酒の肴になりそうな物とグラスを用意してやり、後は楽しんでなんて余裕綽々な台詞を吐きながら娘と寝室に入った。

去りぎわの私の背中には出来た嫁だろう、可愛い子だろうと上機嫌な夫の言葉が刺さった。出来た嫁でも、今は余裕なんて無いのよ、あなた。


「ちょっ、やめ…っ」

「黙って、静かにしないと気付かれるよ。」


豆電球を点けただけの暗い部屋。娘が眠っているのが幸いだと思う。暫くすると薄い壁の向こうで夫があの胡散臭い笑みを浮かべた男と交わろうとしているらしい声が聞こえて来た。私の中の何か幸せな其れがあの頃と変わらずにちょっとづつ壊れていく気がして。漏れ聞こえてくる男とは思えない艶やかな嬌声と、セックスの時に聞きなれた夫の艶めかしい吐息。私が気付いていないと思っているのだろうか。私があの頃からずっと知らないとでも思っているのだろうか。

センスの欠片も無い娘に合わせて履かせたハローキ○ィのトランクスを見て少しばかり彼が萎えてくれるのを期待したけれど、衣擦れの音がするからこれにも私は玉砕した。夫のペニスを口に入れて愛撫する彼を思い浮かべる。舌を使って舐めて、口を離しては扱いてやって、また咥えては一気に吸い上げてみたりして。

ジュルッ…ジュルルッ…ジュパッ

卑猥な音が狭いリビングを越えて私の鼓膜に響く。夫が彼の名前を小さく呼んだのさえも、耳殻を伝って私の鼓膜を揺らす。涙さえ出てくれはしなかった。


「ンんッ!…んふ、っ…ぁ…」

「ジーノッ、」


夫が彼の腰を掴んで突き上げているのだろうか。お互いに声を我慢しながら行為を進めているらしく、水音と彼と夫の小さな嬌声が聞こえる。

人間、セックス中に何らかのスリルがあればそれは快感を感じさせる1つになる。つまりスリルがある程に燃えるのだ。

私や私の隣ですやすやと何も知らずに眠る娘が気付いてしまうかも知れない、けれどもう、止められない。彼はスリルと快感の中で夫を求めているのだ。あの頃からちっとも変わらずに夫を求めているのだ。


「ジーノッ…もう、イくっ…ンくッ!」

「ァ、あ…ナッツっ、」


堪らなく孤独を感じた。泣きそうになってしまう。夫が私と共に神の前で永遠を誓ったあの日を、思い出したから。何とも言えない寂しさだった。涙は止まらなくて、声を必死に抑えるのがやっとだった。

夫は彼を咎めないのか。気持ち悪いと。罵らないのか。気違いだと。叫ばないのか。私がいると。


“ナッツ、結婚するの…かい?”

“おう!世界一の女とな!”


“ちょっと、恥ずかしいってば。”






(あの頃から変わらずに思うわ)(壊さないで、私の幸せ)








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うわあああああ←
何これ珍百景www

とりま奥さんは昔からジーノがナッツを好きだって知ってたっていう…w
“”は昔の会話をイメージ。
ジーノはこの時、どれだけショックを受けたんやろorz