生恋し心恋し | ナノ

「見てみて、日向子ちゃん!隣のペドロのぬいぐるみですって!」
「うわぁシュール!そよちゃんペドロ好きなの?」
「ちょっと気持ち悪くて、好きです!」
「ええー!」

なんだかんだ、仲良くなりました。
さっきは心配していたものの、意外と私神経図太いからさ、大丈夫だったよありがとう花田さん。
お友だちになったのだから、様付けは駄目ですよ!と言われ今やタメ語だ。
私の適応能力…我ながら凄い。

「沖田さんはペドロはお好きですか?」
「あのだらしない腹がサド心を擽るから嫌いじゃないですぜィ」
「やっぱり、そこが可愛いですよね!」

沖田さんとそよちゃんの会話はなんだか噛み合ってないのに成立していて、なんだか面白い。
意外と3人で馴染めている感じで、まだ沖田さんとは一言も話していないけど、こんな風なのも悪くないかなって。

「あ、あっちに酢昆布があります!」

すると、そよちゃんは駄菓子屋さんを見つけて走っていく。
神楽ちゃんと出会ってから好きになったんだっけ?
ニコニコしている姿が可愛いなぁと思って微笑ましく見ていたら、視線を感じて私はその先に振り向いた。

「…どうしたんですか、沖田さん」

私を見ていたのは、沖田さんだった。
どうやら沖田さんは私と会ったことがあることに気付いてないらしい。
気付いたら何がある、とかではないが、なんとなく気付かない方が色々めんどくさくならない気がして、楽だったのだが。

「いやぁ、なんか、…あ、分かった。あんた、あん時のホームレス女…」
「もう家は見つかりました!」

思わず間髪いれてそう言った。
ホームレスって覚え方!さすがサディスティック星から来た王子!

「あれ、お2人はお知り合い?」

気付けば戻ってきた酢昆布をくわえたそよちゃん(可愛い)に、私は、顔見知りなだけだよ、と言って誤魔化す。
沖田さんも否定せず、何も言わない。

「そうだったのですね…そういえば、日向子ちゃんは何歳?」
「18歳だよ」
「じゃあお2人は同い年ですね!」
「…18歳にしては身長ちっちぇねェ」

あ、そうか。よくよく考えれば、確かに。
最後の沖田さんの声は聞こえなかったことにする。
運命ですね、というそよちゃんに、なんかその運命いやだァァァと心の中で叫んだ。
声に出したらいけないことくらい分かるからね。私一応常識人のつもりだからね。
それから、せっかくだから3人でメルアドとケー番交換しましょう、とそよちゃん。
ケー番ってなんか古いよそよちゃん!!
と思いつつ、そよちゃんの可愛さには勝てず、こちらの世界に来てからも何故か使える携帯を取り出し、そよちゃんと沖田さんを登録した。
言った相手が姫様だからか沖田さんも特に嫌がりはせず、私の番号も業務作業のように入力していく。

「名前なんだっけ」
「…朝木日向子です」

覚えてなかったんかい、とのツッコミを胸に秘め、私も彼から受け取った番号に、沖田さん、と名前を入力。
これでいつでも連絡できますね、とそよちゃん。
まじか。私、よくよく考えたら姫様とメルアド交換しちゃったよ。
まぁ沖田さんとは、連絡とることもないだろうけど。

それからしばらく色々なお店を回って、そよちゃんとはかなり仲良くなれたし、江戸も回れたしなんだかんだで楽しかったな。

「また遊びましょうねー!」

空が茜色に染まり始めた頃、ぶんぶん、と手を振りながらそよちゃん達と別れた。
意外だったのは、沖田さんが結構私たちに合わせてくれたこと。
きっと姫様が相手だったこともあるだろうが、やはり漫画で見るより普通なことも出来る人なんだなぁと思った。

それにしても、今日は結構楽しかったなぁ。
そうだ、花田さんにお礼に何か買っていこう、と私は近くに会ったケーキ屋さんに入った。

そよちゃんも漫画で見るより面白い子だったし、キャラクターと関わるのも、意外と楽しいかも、と思えた1日でした。またそよちゃんと遊べる日が、実は結構楽しみです。…アレ、作文?



- ナノ -