感想 


44.ハトカイ。
 2010/11/21 - 辛口感想
ジャンル:西洋風ファンタジー
長さ:短編(完結)


いいかげんなあらすじ:
戦時下にある陰鬱な王国。
灰色の羽を持って生まれたがために、虐げられていた鳩の「わたし」。
鳩舎から逃げ出した「わたし」は、衰弱していたところを隻眼の男に拾われ、彼の元で暮らすようになるが……。


主人公に感情移入しにくく、文章がやや読みにくいため、なかなか読み進める気になれませんでした。
また、文体が鼻につき、素直に物語を楽しめなかったです。
ストーリーはよくまとまっていて、着地点もきれいです。





主人公はハトに喩えられているのかぁ……と思いながら読み進めたら、本当にハトでした。
イヌやネコ視点の物語はたまに見かけますが、ハト視点は初めてです。

物珍しくはあったのですが、なかなか読み進める気にはなれなかった作品です。
数ページ読んでは放置することを繰り返し、短編なのに読了するまでに数日かかりました。

先を読もうという気持ちになれなかった原因としては、まず、主人公に感情移入できなかった点が考えられます。

ハトはイヌやネコほど身近な動物ではない時点で、主人公との一体感が得にくいのでしょう。
内面描写がていねいなら、ハト視点でも十分に感情移入できたかもしれません。
しかし、この作品では主人公の気持ちについて、具体的な描写が欠けているため、イマイチ主人公に共感できなかった可能性があります。

たとえば、2ページ目に「生への執着と青い空への渇望」とあります。
この文章について、主人公がどんなふうに・どの程度、執着や渇望をしているのか書かれていないため、実感がわかなかったです。

また、文章が読みにくかったせいで、読み進める気が起きなかった面もあります。
一文が長くて読点が少ないため、一読しただけでは文意がわからないことが、しばしばありました。
ひとつの文章に詰め込まれた情報が多いため、なにが主語で、なにが述語なのか、把握しづらいのです。

言い回しに凝りすぎて、なにについて描写しているのか、すぐにはわからなかった文章もありました。


終盤は一気に読めて、「いい話だなぁ」という印象も受けました。
しかし、好みの問題かもしれませんが、詩的な文体が鼻についてしまい、素直に物語を楽しめなかったです。
ちょっと説教臭くて先の読める内容が、妙にまだらっこしい文章で書かれているせいで、心のなかにもやもやとしたものが残りました。

また、主人公の自己憐憫(ちょっと違うような気もしますが)の強さに引っかかってしまったせいで、素直な気持ちで読めなかった面もありそうです。
「『この哀れな鳩』だなんて、大真面目に自分で言っちゃうなよ……」と、少し引いてしまった記憶があります。


なんだかんだ書きましたが、短編としてよくまとまっている作品です。
序盤〜中盤に散りばめられていたピースが、終盤できれいに組み合わさり、説得力のあるラストになっています。
物語の着地点もきれいでした。
また、主人公がハトであるという設定も、十分に生かされていました。


読後感がよく、長さも手ごろなので、「いい話」を読みたい気分の方にオススメです。


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