感想 


43.真紅の溜まりと鋭さと
 2010/11/07 - 辛口感想
ジャンル:中世風ファンタジー
長さ:長編(完結)


いいかげんなあらすじ:
吸血鬼ハンターのアルノルトは、自分の血を吸ってくれる吸血鬼を探していた。
とある町で仕事をしていたところ、アルノルトは吸血鬼・ディートヘルムに出会う。
互いの利害の一致から、ふたりは行動を共にするが……。


よくも悪くも地味な作品です。
ストーリーも登場人物も骨格はしっかりとしていますが、おもしろみに欠けています。
一方で、主人公の動機や吸血鬼の設定に独自性があり、物語を読み進める原動力となりました。





中世ヨーロッパ風の舞台で、吸血鬼が出てきて、しかも主人公は凄腕のハンターで……と聞くと、華やかかつド派手な内容を想像してしまいます。
しかし、この作品はどこまでも堅実です。
むしろ、堅実を通り越して、よくも悪くも地味な印象でした。

欧風ファンタジーなら地味なほうが好きなのですが、この作品は私には少々地味すぎました。
全体的にしっかりとした作りで、安定感のある作品なのですが、その分勢いに欠けているのです。


ストーリー構成は上手です。
ですが、ありがちなエピソードが多く、おもしろみに欠けている面がありました。
どこかで見たことがあるから、次の展開が予想できてしまうのです。
そのため、「次はどうなるんだろう?」というハラハラ感がなく、盛り上がりに欠けていました。


また、ストーリーがありがちでも、登場人物の個性が強ければ、十分に楽しめるのですが、
この作品は登場人物も無難すぎて、おもしろみに欠けていました。
そのため、「この人はなにかやらかしてくれそう」というドキドキ感がないため、読んでいて刺激が足りなかったです。


文章はていねいな印象です。
しかし、なにについて書いてあるのかわからなくなることが、1ページに1回程度ありました。
主語や目的語が不足している、代名詞がなにを指しているのかわからない等の点が、原因として考えられます。

また、戦闘シーンにスピード感がありませんでした。
どんなシーンでも、一文が長めなことが多いからではないでしょうか。
あと、戦闘中、なにが起きているのかわかりにくかったです。
視点の向きや距離感が、整理されていなかったせいかもしれません。

背景や気候の描写も、もっとほしかったです。
中世ヨーロッパ的な舞台であることはわかるのですが、風土や建築、政治や経済、情報伝達の手段等が見えてこなかったため、もの足りなかったです。

他にも気になった点はあるのですが、文字数の都合で割愛させていただきます。


設定はかなりおもしろかったです。
まず、吸血鬼について、独自の味付けがされていて、興味深かったです。
「読者の持っている一般的な吸血鬼のイメージ」に頼っていない点が、すごく好印象でした。

また、「多すぎる血をなんとかしたい」から「吸血鬼を探す」という主人公の動機も、ユニークでおもしろかったです。
この動機のおかげで、作品を読み進めることができました。
主人公が有名なハンターになれた理由にも、説得力がありました。

上で少しだけ触れましたが、ストーリーもしっかりとしています。
伏線はちゃんと張られており、話に整合性もあり、人物の成長もきちんと描かれています。


安定感は抜群なので、堅実な異世界ファンタジーを求めている方にオススメです。


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