感想 


37.夢幕末〜佐幕編〜
 2010/09/05 - 辛口感想
ジャンル:時代小説
長さ:長編(連載中)

第二章37ページ目まで読ませていただきました。


いいかげんなあらすじ:
文久3(1863)年。
武家の生まれだが、茶屋で過酷な労働を強いられていた少年・真田薫。
客である沖田総司に茶を引っかけてしまった事件がきっかけとなり、薫は新選組に入隊する。


人物・展開が主人公に甘く、主人公が物語から浮いています。
また、心理描写が少なく、主人公の気持ちや考えがわからないせいで、感情移入できませんでした。
しかし、文章の流れやテンポがいいため、読みやすかったです。





よく感想に「日本史が苦手」と書いていますが、特に幕末以降が苦手です。
当然、新選組がなにをした人たちなのかも、ほとんど知りません。

そんな人間でも、サクサクと読めた作品です。
本文中に年月日が明記されているため、「史実が反映されている=背景もしっかりしているはず」という安心感もありました。


読みやすい作品ですが、主人公である薫の存在が物語から浮いています。
人物も展開も薫に甘すぎて、薫が史実に入り込んだ「お客さま」となってしまっているのです。

まず、沖田が薫を新撰組に連れ帰った時点で、都合がよすぎます。
さらに、他の隊士たちも、薫を新選組に入隊させることに関して、誰ひとり反対しません。
それどころか、気持ち悪いくらいみんな薫に好意的です。
いくら薫がかわいいとはいえ、とんとん拍子に話が進みすぎなのです。

第二章でも、不逞浪士の取り締まりに薫も同行したことが、腑に落ちませんでした。
入隊して数日しか経ってない薫を連れて行っても、役立たないどころか、足手まといになりかねないような気がします。


さらに、自分の置かれている状況について、薫の気持ちや考えが見えてきませんでした。

たとえば、茶屋から離れられた薫は、いったいどれくらいうれしかったのか、よくわかりません。
また、新撰組の隊士にかわいがられていることについて、薫がどう感じているのか、掴めませんでした。

加えて、薫が新撰組でなにをしたいのかわからなかったため、薫に感情移入できませんでした。
主人公の目的や方向性がわからないため、物語の牽引力が弱いのです。

薫の内面についてよくわからなかった原因としては、心理描写の不足が考えられます。
また、体感描写も少ないため、臨場感に欠けていました。


描写については、戦闘シーンのインパクトのなさも気になりました。
人物の動きをさらっと書きすぎていて、迫力がないのです。
そのため、せっかく隊士たちが強さを見せつけるシーンなのに、「強い」という実感がわきません。
また、隊士たちのカッコよさも、イマイチ伝わってきませんでした。

情景や背景の描写についても、やや不足感を覚えました。


しかし、登場人物の外側からの描写はとてもていねいです。
特に、人物の口調や表情、動作がきっちりと書き込まれているため、人物を映像化しやすかったです。
特に、沖田と芹沢鴨のイメージは、はっきりと浮かびました。

また、文章も読みやすいです。
流れが自然で、テンポもいいからでしょう。
サクサクと歯切れのいい文体は、読んでいて気持ちがよかったです。


読みやすくて、いい男もたくさん出てくるので、幕末史好き以外の人でも楽しめそうな作品です。


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