感想 


32.ゆきうさぎ
 2010/08/15 - 辛口感想
ジャンル:現代ファンタジー
長さ:中編(完結)


いいかげんなあらすじ:
先天性白皮症の女性・愛は、外出先で死神の少年・葵に出会う。
愛はとっさに家へ逃げ帰るが、愛を迎えに来た葵は愛に付きまとう。
死にたがりの愛を咎める葵。
愛は葵に「生きる希望を与えてみなよ」と告げるが……。


主人公の性格と地の文にクセがあり、好みが分かれそうな印象です。
主人公の背景の書き込みが不足しているせいで、説得力に欠けている面がありました。
しかし、物語の軸が早々に示されるため、読みやすかったです。





冒頭から、主人公が先天性白皮症であることに、強烈なコンプレックスを抱えていることが、色濃く描かれています。

そのため、初っぱなから抵抗を覚える人もいそうです。
私自身、「苦手なタイプだな……」と、ちょっと引きながら読んでしまいました。
しかし、心理描写がていねいなので、主人公に共感できる人は、一気に物語に引き込まれるでしょう。

文体にもクセがあります。
ドタバタとしたシーンの書き方が、悪く言えば古臭い、よく言えば懐かしい印象でした。
私にはテンションが高すぎて、やっぱり少し引いてしまいました。
ですが、好きな人は好きそうな文体です。
主人公の性格も文体も、好みが分かれそうです。


ストーリーや設定は定番で、変な小細工もクセもありません。
そのため、すんなりと内容が頭に入ってきました。
ですが、登場人物、特に主人公が好きになれませんでした。

主人公の歪みっぷりや不器用さは、とてもよく表現されています。
デリケートな問題を抱えているがゆえに、性格が歪んでしまったのも理解できます。

しかし、主人公は神経質すぎる気がします。
外見や体質よりも、主人公の性格に問題があるような印象を受けてしまいました。

原因としては、主人公の背景について、あまり書き込まれていない点が考えられます。
本編を通して、主人公の性格が歪むに至った具体的なエピソードが、存在していないのです。
幼いころに、どれだけひどいイジメを受けたのか分からないせいで、
周囲からの差別感は、主人公の被害妄想かもしれない……と、穿った見方をしてしまいました。


全体的な流れは、無理がなく自然です。
ていねいな心理描写のおかげで、互いのなかで相手の存在が大きくなっていく課程が、よくわかりました。
しかし、互いに恋愛感情を抱いていることは、最後の最後までわかりませんでした。
そのため、主人公と葵が両思いだと判明するラストシーンは、少々唐突でした。


文章はたまに怪しいところもありますが、基本的には読みやすいです。
ですが、地の文に「……」や「――」が多いせいで、キャラクターが自分に酔っているような印象を受けました。
また、一人称と三人称が入り乱れているのが気になりました。
あと、改行でごまかされていますが、一文が長いです。


エピローグは登場人物に興味を抱けなかったので、退屈でした。

しかし、本編は一気に読めてしまいました。
物語の軸が、早々に明らかになっていたからです。
どんな方向に物語が進むのか見当を付けやすいため、安心して読めました。
また、主人公たちが迎える結末に、興味が持てました。

読みやすく、構成も整っています。そのため、登場人物や文体が合いそうな人にオススメできる作品です。


 |  | 




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -