感想 


28.プリンセス・ジャック
 2010/07/18 - 辛口感想
ジャンル:中世風ファンタジー
長さ:長編(完結)


いいかげんなあらすじ:
農業で栄えるグリーデント王国。
隣国との交流の最中、食事への毒物混入事件が起き、二国間の争いへと繋がっていくが……。
女装王子・ジュリアと少女騎士・マーヤを中心にした、さまざな人々の家族愛と恋愛の物語。


主人公側にとって有利な設定が多く、少々ご都合主義な印象を受けました。
また、敵側のストーリーのほうが魅力的でした。
しかし、全体的に安定感があり、読みやすかったです。
女装設定を生かせているのが好感でした。





実は男女逆転ものが大好きです。
特に男装少女が好きなのですが、女装少年も捨てがたかったりします。
そんなわけで、昔、冒頭部を読んだ記憶がある作品です。


いわゆる中世風ファンタジーな世界観で、陰気な雰囲気のない冒頭なため、とっつきやすそうな印象を受けました。

ですが、序盤(〜episode 3)の流れが悪く、作品になかなか集中できませんでした。
「現在の主人公たち」にまだ馴染めていないのに、
episode 2が回想メインであるせいで、感情移入が妨げられてしまったのです。

また、各エピソードが盛り上がりに欠けていました。
そのため、「先が気になる」という牽引力が弱く、読み進めたいという気持ちになれませんでした。


物語が大きく動き出す中盤以降(prologue〜)はおもしろかったです。
ただ、主人公(グリーデント王国)側にとって有利な設定が多いせいで、あまりハラハラとしなかったのが残念です。
強い味方が多く、また、自国内あるいは国境付近で戦っているため、主人公側が勝つのは目に見えています。

また、グレイ・ケイシュ王国が工業大国である設定が生きていませんでした。
高い技術力を持つ国ならば、グリーデント王国よりも強力な武器を持っていてもおかしくありません。
敵側の戦力が不足していたのも、ハラハラとしなかった一因でしょう。

むしろ、敵(エヴァリーヌ)視点のストーリーのほうがおもしろかったです。
エヴァリーヌの物語は、四面楚歌な状況から逆転してハッピーエンドを迎えています。
また、恋愛面についても、きちんと障害が設定されており、ドラマチックに仕上がっています。


文章については、視点が不安定な面もありますが、基本的には読みやすかったです。
描写もそれなりにされています。
しかし、読み手のなかにある一般的な「中世風ファンタジー」のイメージに、少々頼りすぎな印象を受けました。
「どんな世界なのか」ということが、しっかりと書かれていないため、物足りなさが残りました。

ただし、世界観に対する描写や説明がない分、軽くて読みやすい作品に仕上がってると考えられます。
そのため、携帯からファンタジー小説を読む分には、ちょうどいいのかもしれません。


登場人物が文字数のわりに多めで、散漫になってしまっている部分もありましたが、
登場人物の書き分けはしっかりとできています。
また、王道あるいはベタな要素が多い分、安定感がありました。
ジュリアの女装設定がしっかりとストーリーに生かされていたのも好感です。

変なクセがないため、設定にピンときた人にお勧めできそうな作品です。


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