感想 


27.神様は宇宙人
 2010/07/04 - 辛口感想
ジャンル:現代SF
長さ:中編(完結)


いいかげんなあらすじ:
逃亡者を連れ戻すため、地球にやって来た、宇宙人のリルキとギア。
二人は目的のために、女子高生の花南に目を付ける。
一方、花南は様子のおかしい幼なじみを気にしていた。
そんな花南に、リルキとギアが干渉し……。


文章に抑揚がなく、登場人物に血が通っていない印象を受けました。
全体的に掘り下げ不足で、説得力に欠けています。
また、後半にまとまりがなく、話の軸がわかりません。
しかし、巧みな伏線回収に感心しました。





昔読んだ「神様=宇宙人」なSF小説がなかなか難しかったので、この作品も警戒しながら手を着けました。
しかし、少女漫画的な雰囲気であるため、安心して読み進められました。

ひとつひとつの要素はライトなのですが、文章が取っ付きにくかったです。
また、登場人物も文章も非人間的で、血が通っていないような印象を受けました。

まず、冒頭の三人称が誰の視点でもないせいで、作品の世界に入りにくかったです。
さらに、存在しないはずの視点となっている人物の思考も入り込んでいて、読んでいて落ち着かなかったです。

また、花南の一人称にも、全然感情移入できませんでした。
それなりに内面描写はされているのですが、人間らしい生々しさが感じられないのです。

おそらく、単調すぎる文章が原因だと考えられます。
どんな場面でも、文章の書き込み具合がほぼ一定で、緩急がないのです。
大事なシーンが書き込まれていないせいで、花南の気持ちを理解できず、感情移入できなかったのでしょう。

また、三人称でも一人称でも、平易な言葉が使われている割に、情景をイメージしにくかったです。
三人称は視点となる登場人物が存在しないため、カメラワークが乱れていたのだと考えられます。
さらに、単語選択の的確さにも欠けていたのでしょう。

あと、抽象的すぎてわけのわからない表現が、たまにありました。
言葉が足りなくて、作者さまのなかにある世界を、表現しきれていないのかもしれません。


文章の書き込み不足は、登場人物や設定の掘り下げ不足にも繋がっています。
そのせいで、ストーリーの説得力に欠けていました。

マルディは登場が遅かったのもあって、特に厚みが感じられませんでした。
背景がわからないせいで、マルディの言い分については、取って付けたような印象を受けました。

また、花南の過去や強姦についても、彼女の生々しい感情が伝わってこないせいで、どこか安っぽかったです。


前半は単調なりに安定していたのですが、後半で一気に散漫な印象になってしまったのが残念です。
中盤でやっとストーリーが動き出したと思ったら、
瞬く間に内容が空中崩壊し、なにがなんだかわからないうちに物語が終わってしまいました。
いろいろな要素が入り乱れているせいで、話の軸が見えてこないのです。

また、書いてあることが一般論であるせいで、作者さまの書きたいことや伝えたいことがつかめません。
そのため、読後になにも残りませんでした。


全体的に書き込み不足でしたが、伏線はしっかりと張り巡らされています。
伏線の回収も巧みです。
前半のさりげない描写が、後半のイベントに繋がっていて、素直に「すごいなぁ」と感心しました。
伏線の扱いが上手なだけに、いろいろと惜しい作品です。


 |  | 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -