感想 


22.群青
 2010/05/20 - 辛口感想
ジャンル:近未来架空戦記
長さ:長編(完結)


いいかげんなあらすじ:
北海道はロシア領、本州以南はアメリカ領として分割された、近未来の日本。
半サイボーグである軍人の誓(♀)は、フライトオペレーターとして、やはり半サイボーグのエリートパイロットの佐久(♂)と組まされるが……。


情報が整理されてなくて、全体的に雑多で散漫な印象を受けました。
切り取られたシーンばかりなので、起承転結が弱く、内容が頭に入りづらかったです。
一方で、ネット小説ではあまり見かけない題材が興味深かったです。





「米露によって分断された2023年の日本」が舞台の、典型的な架空戦記ものです。
少しレトロな雰囲気のSF要素が、この作品の特徴でしょうか。

空軍のお話なので、航空関係の専門用語がたくさん出てきます。
文脈や語感から、なんとなく意味はわかるのですが、知識のない分野なのでイメージしづらかったです。

一応説明はあるのですが、説明部分が固まっているため、読みづらいのかもしれません。


専門用語に限らず、全体的に提示される情報が頭に入りにくかったです。
情報が多すぎて、なにが大事なのか、よくわかりませんでした。

情報が雑多に詰め込まれているため、ひとつひとつの要素を理解するのに、時間がかかりました。
また、場所・時系列・視点がわかりづらいせいで、状況も把握しにくかったです。
必要のない人物が多いのも、内容が散漫になってしまった一因でしょう。

説明や描写の流れもごたついていました。
説明する順番・描写する順番が悪いのか、情報がすんなりと頭に入ってきません。

また、あまり必要ではない情報と、もっと掘り下げるべき情報が、同じ調子で書かれているのが気になりました。


ストーリーの流れも悪かったです。
どの話も日常シーン→戦闘(飛行)シーンという流れで進んでいくのですが、
日常シーンと戦闘シーンの切り替わりが急すぎて、ついていけませんでした。

全体的に「課程」が抜けている印象を受けました。
そのせいで、起承転結が弱くなってしまい、内容が理解しづらかったです。

誓と佐久が互いに抱く信頼や恋愛感情は、作品の肝のひとつだと考えられます。
ですが、全然ふたりの心境の変化についていけなくて、退屈でした。
最初は嫌い合っていた誓と佐久が、信頼関係を築く課程が、あらすじみたいな文章で書かれているだけだからです。

あらすじだけでは、登場人物に感情移入するのは難しいかもしれません。
登場人物の細かな心の動きがわからないため、人物に共感しようがないのです。
常に登場人物との温度差を感じながら、作品読んでいました。

視点があちこちに分散しているため、各登場人物の心理描写が不足しているのも、
感情移入しにくい原因のひとつでしょう。
主人公でさえ、最後までキャラが掴めなかったです。


戦時下っぽい雰囲気が出ていなかったり、戦況や戦況が起こった背景がわからなかったのも、気になりました。
SF設定を生かせきれてなかった点も、残念でした。

ですが、なかなかネット小説で架空戦記ものを目にする機会はないので、その点では興味深かったです。
また、あまり読まないジャンルなので、新鮮でもありました。

浅くて広い需要はなくても、狭くて深い需要がありそうな作品です。


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