感想 


14.鳥への憧憬
 2010/02/15 - 辛口感想
ジャンル:現代
長さ:短編(完結)


いいかげんなあらすじ:
いつも中庭で鳥を描いている「彼」。
ある日、「俺」は彼が教師と接吻をしているのを目撃してしまう。


どこか乾いた空気が印象的です。
心理描写が不足気味で、主人公の心境の変化についていけませんでした。
代名詞の多さや、体感描写も少なさが気になりました。
しかし、文章の流れ・テンポがよく、読みやすかったです。





漢字が多めなのに、文章自体はシンプルなのが、独特の空気を作り出している作品です。
ほんのりとBL臭がして、女性が書いている感にあふれています。
しかし、文体のせいか、かなりドライな印象を受けました。


文章はていねいで読みやすいのですが、内省的な内容のわりに、心理描写が不足気味なのが気になりました。

具体的にいうと、「俺」から「僕」に視点が移り変わっているのに気付きませんでした。
同じシーンを異なる視点から書いているのに、代わり映えがしないからです。
同じ状況に置かれていても、視点となる人物が異なれば、
風景の見え方や、セリフの捉え方に違いが出てくるのではないでしょうか。

また、同じシーンを異なる人物の視点で書いた意図が読めません。
どちらか片方の視点だけでも、物語の進行に大した影響はなさそうです。

「僕」が「俺」に将来について説得されるシーンも、
口調描写や心理描写が少ないせいで、盛り上がりに欠けていました。

また、「僕」が弟の死を受け入れるラストシーンでは、「僕」の心境の変化についていけませんでした。
2年間ずっと弟の死を理解できず、二重人格にまでなっていた「僕」が、
「俺」に軽く諭されただけで、なぜ弟の死を受け入れられたのか。
「僕」の心の動きがわからないせいで、ストーリーから置いてけぼりにされたようか気持ちになりました。

また、「俺」と「僕」の関係がよくわからなかったのも、置いてけぼり感の原因ではないでしょうか。
せっかく二者の視点で書いてあるのに、互いに相手のことをどう思っているのか、あまり伝わってきませんでした。
少なくとも、「俺」は「僕」を説得できるような間柄にはみえません。


文章面では、「その」「そう」などの代名詞が多い点が気になりました。
代名詞がなにを指しているのか理解するのに時間を要するので、作品を読むリズムが乱れてしまうのです。

また、視覚情報以外の体感描写がないため、物足りなさを覚えました。
舞台の様子がわからないので、物語の世界に入りにくかったです。

しかし、基本的には読みやすい文章です。
だらだらとした長い文がなく、平易な表現が使われているからだと考えられます。

また、淡泊な文章でありながら、自然な流れがあります。
ひとつひとつの文のつながりが意識されているからでしょう。


「矢張り」「些か」など、ふだんはひらがなで表記されている単語が漢字変換されているため、好みがわかれそうな作品です。
しかし、独特の空気があるため、ハマる人はとことんハマるのではないでしょうか。


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