感想 


11.桜色の空
 2010/01/11 - 辛口感想
ジャンル:現代青春
長さ:短編(完結)


いいかげんなあらすじ:
「寺を継ぐ」と頑なに就職を拒む、大学生の翔太。
翔太が寺を選んだ背景には、一人の少女との桜をめぐる約束と思い出があった。


文章や構成は悪くないのですが、設定について引っかかる点がありました。
また、ストーリーの要となるさくらとの交流ついて、描写が不足気味です。
しかし、心理描写がていねいで、読んでいて引き込まれる作品です。





桜・病気の女の子・最後は死ぬ、というのは、定番の組み合わせなのでしょうか。
しかし、主人公と病気の女の子が10歳も離れていて、
当然ながら恋愛要素を含まないので、新鮮な気持ちで読めました。


クセのない文章や構成は、やや粗さはあるものの、頭に入りやすかったです。
ですが、物語の背景について、引っかかる点がありました。

まず、主人公が大学生らしくない点が気になりました。
冒頭で先生と就職について2者面談をしているため、高校生だと勘違いしてしまいました。
また、「体育教師」という言葉も、中学や高校を連想させます。
あと、大学生は「生徒」ではなく「学生」ですね。

「寺を継ぐ」ために、主人公が具体的な行動に出ているのかどうかも、気になります。
そもそも、「寺を継ぐ」ということは、住職になることなのでしょうか。

宗派にもよるのでしょうが、住職になるためには、
仏教系の大学や専門学校で資格を取ってから、さらに修行をする必要がある、
と聞いたことがあります。

主人公は、仏教系の学科に属しているようには見えません。
また、卒業後、修行をする気配も感じられませんでした。
そのため、主人公は就活をしたくないがために、「寺を継ぐ」と言っているのではないかと、
穿った考えが頭から離れませんでした。
ゆえに、主人公に感情移入しにくかった面がありました。

他にも引っかかる点はいくつかあったのですが、長くなりそうなので割愛させていただきます。


設定以外では、主人公がさくらと接するシーンが不足気味なのが気になりました。
さくらに関する描写が少ないため、さくらに対してあまり情が移らなかったのです。

さくらが身の上を語るシーン、そして、物語の要となるさくらと約束を交わすシーンは、
省く必要はあったのでしょうか。
友人の瀧との会話はしっかりと描かれているので、余計気になりました。


文章については、一文が少し長いせいで、読みにくいことがありました。
また、場面と切り替えが唐突だったり、
14ページでなぜか一文だけ三人称視点にだったりして、引っかかることがありました。


構成については、ひとつだけ気になった点がありました。
この物語はほとんど主人公の回想です。
そのため、1ページだけさくら視点になっていることに、違和感を覚えました。


いろいろと書きましたが、6月に桜を探す終盤の展開は緊迫感とスピード感があり、
気がついたら次々にページをめくっていました。

先の読める物語ですが、心理描写がていねいなので、読みごたえもあります。
また、ムダな要素がないため、中だるみがなくて読みやすかったです。


全体的によくまとまっていて、ありがちながら引き込まれる作品です。


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