朝日が差し込むホグワーツ寮内だが、地下にあるハッフルパフ寮では暖かい夕日色のランプが照らされている。 ハッフルパフ寮の一室に置かれたベッドでシーツの塊がもぞもぞと動き始めた。完全に体を覆われたシーツの中で出口を探すように手が動くが、中々出口が見つからずに諦めたのか――はたまた眠気に負けたのか――動いていた手がぱったりと落ちた。そのまま動かず、シーツの塊からはまた静かな寝息が聞こえてきた。どうやら眠気に負けたようだ。
二度寝を楽しもうとするマスターをサーヴァントは楽しそうに笑んでシーツを捲る。シーツの中から見つけた手を引いて柔らかく口付けた。
「さて、奏者よ。そのように稚く眠るそなたを起こすのは忍びない。が、起こさなければそなたの困る事態になるのでな」
そろそろ起床して支度をしないと朝食に間に合わないだろう。SE.RA.PHにいた時の名残であまり食べる事に関して積極性を欠くナマエだが、今は現世でも定着できる生身の《器》を使っているのだから食事は必要不可欠だ。食べる事や寝る事を怠ればその分《器》は弱まる。人間の体と同じだ。
撫でていた手がぴくりと動きまたもぞもぞとシーツの塊が動き始めた。セイバーがシーツを捲っていた為今度は簡単に出口を見つけてうっすらと瞳を開けた。ランプで照らされたセイバーの金髪が柔らかく輝き、蛍石をはめ込んだような瞳に夕日色が差し込んでいる。その美しい情景にナマエは寝ぼけ眼のまま微笑んだ。
「愛らしいな」
くつくつ喉を鳴らして笑い、ナマエを覆っていたシーツを彼女の腰辺りまで引き下げる。優しく抱き起こすがナマエはぼんやりとセイバーを見上げているだけだった。
「また寝惚けているな。相変わらずそなたは寝起きが悪いな」
「うん……」
「もう起きねば朝食の時間が終わってしまう」
「んん゛ー…いらない……」
ぐずるようにセイバーの胸に頭を擦り付けた。舞踏服の裾を握って嫌々と首を振る。
「いらぬではない。そう言ってこの前昼食まで持たずに顔色を悪くしていたのは奏者だろう」
「うー…」
嫌々ながらもセイバーから離れたナマエはのろのろとベッドの隅に座る。そして背後に腰掛けたセイバーがサイドテーブルに置いておいたブラシと赤いリボンを手に取った。 ゆっくりナマエの髪にブラシを通していく。まず毛先に通して絡まった所を梳いて次に全体的にブラシで梳いていった。 ナマエの黒曜石のような髪に触れる度セイバーの笑が深まる。触り心地が良いというのもあるし、無防備に背後を晒してくれる事が自分への信頼感を表しているようで嬉しい。
「……セイバーの手は優しいな」
「無論、奏者だからな!」
ナマエの髪を後ろで一まとめにし、セイバーが贈った赤いリボンで二回巻いてリボンを結んだ。端の長さを調節して満足気に頷きナマエの後頭部に口付ける。
「さあ終わったぞ、奏者(マスター)」
「ああ、ありがとう、セイバー」
ナマエは綺麗に纏められた毛先をつまんで嬉しそうに笑って立ち上がった。ようやく完全に目を覚ましたナマエはセイバーを振り返り、美しい白磁の頬に唇を寄せておはようのキスを贈った。
リクエストありがとうございました。 親世代は出しても出さなくても、と言う事だったので普通にセイバーといちゃいちゃした学生生活を。
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