最近レッドはよくシロガネ山から下りてくるようになった。
それは恐らくナマエの影響が大きいのだろう。ふらふらうろうろと全国を歩き回り、レッドが会いに来てと頼んでもあまり来ない。仕方なしにレッドがシロガネ山を下りて全国を徘徊するナマエを捕獲しては話に突き合わせたりバトルを仕掛けたり。かつてのレッドとグリーンの立場が逆転したようなものだった。

今日も今日とて彼女は全国を回れるだけ回り、バレンタインのお菓子を食べ歩く。
丁度ナマエを捕獲出来たレッドも付き合い、コガネのカフェテラスでお茶とケーキを楽しむ。

「このチョコムース美味しいですよ、レッドさん!」

きらきらと輝く笑顔を浮かべるナマエ。
彼女を餌付けしたがるジムリーダー達の気持ちが分かった気がした。

「ガトーショコラも美味しいよ」

「本当ですか?一口ずつ交換しませんか?」

そう言ってナマエは一口大の掬ったムースを差し出した。特に気にする事無くナマエのスプーンからムースを食べて、満足に頷く。

「うん、美味しい。……ナマエ」

「む、おお……!これも美味しいですね!」

お返しに、と切り分けてフォークに刺したガトーショコラをナマエの口に突っ込む。

にこにこへらへら笑うナマエは大変可愛らしかった。
レッドは温かい気持ちになりながら、コーヒーを口に含む。
すると、レッドの両肩を何者かに掴まれた。

「ぅお前らぁ、何いちゃついてんだアアアアアア!!」

「!?」

現れたのはレッドの幼馴染みのグリーンで。涙目になりながらレッドの肩をがっくんがっくん揺さぶった。
そんな彼の、左頬には鮮やかな紅葉、が咲いている、のだが。

「グリーンさん、それ……」

「うるせえよ!フられたんだよ!なのに傷心中な俺の前でいちゃつきやがってレッドコノヤロオオオオオオ!」

「グリーンざまあ」

「ケンカ売ってんのかてめえ!!」

怒りを露わにするグリーンとは対照的にレッドは涼しい顔でコーヒーを飲む。

「ま、まあまあグリーンさん。落ち着いて下さいよ。ほら、私のムースをあげますから!」

レッドにしたように、ムースを掬ってグリーンに差し出す。

「ナマエは優しいな、お前と違って!」

グリーンが差し出されたスプーンを口に含もうとした瞬間。目の前からムースが消える。
ナマエの手を取ったレッドが無理矢理自分の方へ引き寄せて、スプーンに乗ったムースを食べた。

「え」

「うん……美味しい」

「ってめえ表出ろやコノヤロオオオオオオ!」

「もう表だよ。グリーン頭大丈夫?」

「っていうかお店の迷惑になるのでやめて下さいよ!」



Happy Valentine Day



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