麻倉葉+7





腕の中で眠る愛しい人の髪を撫でながら、ふと己の髪が目に入った。

いつの間にか長く伸びた葉の髪は双子の兄と同じくらいの長さになっていた。身長が同じであるなら、後ろ姿では判断出来ないだろう。
切ってしまおうか、と考えた事もあったのだが、今はそんな考えは微塵も無かった。
兄とお揃いである事が嬉しくもむず痒いものではある。しかし今腕の中に眠っている陸が葉の長い髪を気に入ってくれているというのがあって、どうも切る気にはならなかった。

葉の髪を梳く姿は楽しそうで、浮かぶ笑顔が愛おしい。陸の頼り無さげな身体を抱き締めると髪がくすぐったいとくすくす笑う。陸が髪を優しく撫でる手付きすら愛おしく心地良く、彼女が葉の髪をいじると柔らかな眠りに誘われる。

──愛おしい。

葉の腕を枕にして眠る陸を更に近くに抱き寄せて首に顔を埋めた。優しい花の香りが鼻孔を擽り目を細める。

陸と共に旅に出て様々な国を巡った。
世界各地で続けられる戦争。未だ根強く残る紛争の爪痕。 事実平和な国など何処にもない。
それらを少しでも無くす為に、世界を巡った。

愛と平和を説いてまわった。兄との約束を守る為、愛おしい彼女に報いる為、葉は世界を巡り歩く。

途方もない時間がかかるのは百も承知。
雨が大地に降り注ぎ、それが溢れて染み渡り世界を巡る。どれだけの時間がかかろうと、必ず世界に巡り渡る。
例えどれだけかかろうと、愛と平和を世界に示そう。


穀雨


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