恐山アンナ
彼女がアンナの頭を撫でる度、何故か心がざわめく。 冷たく凍り付いたアンナの心を少しずつ溶かしていくのは彼女の掌だ。 反発して、突っぱねて、拒絶して、それでも彼女は離れていかなかった。いつも困ったように笑って、アンナの事などお構い無しに頭を撫でるのだ。
彼女がアンナの頭を撫でる。 彼女がアンナの手を取って歩き出す。 彼女がアンナの身体を抱き締めて。
触れて、撫でて、抱き締めて、彼女がアンナに触れる度によくわからない感情が蘇る。 ざわざわと落ち着かない。けれどそれはどこか心地良い。
──なあ、アンナ。
冷たく凍って、何も感じない人形のように生きていた筈なのに。
──アンナの髪は、綺麗だな。 ──お前の髪、撫でるの好きなんだよなあ。
そう言って、彼女はまた暖かな手でアンナの頭を撫でる。
冷たく凍った氷は、溶けてアンナの頬を伝った。
雨水
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