麻倉葉





「大丈夫か、陸」

力なく布団に横たわる陸の顔を覗き込む。陸は赤らんだ顔で葉を見上げ、へらりと笑った。

「ちょっと逆上せただけだ……」

今日は冬至だ。冬の最中で、一日の中で最も昼が短く夜が長い日。生命が終わる日であり、それを乗り越える為に無病息災を願いかぼちゃを食べたり柚子湯に入る。

そんな訳で今日の風呂には沢山の柚子が浮かべられていたのだが陸はそれが大層気に入ったようだった。大きな湯船に沢山の柚子がぷかぷか浮かび芳しい香りが鼻腔をくすぐって、体を芯から温めた。浮かぶ柚子を手に取ったり適当に流してみたり普段とは違う風呂の趣に浮かれて長湯をしてしまった。そうすれば案の定逆上せてしまったのである。

陸を引き上げたたまおにはひどく心配され、アンナにはこれ以上無い程慌てふためき怒られた。浴場から運ばれた後水分と休息を取る為に布団に押し込まれたのがつい先ほど。

「無病息災を願う筈の柚子湯で逆上せてたら世話ないんよ」

静かに陸を団扇で扇ぐ葉の声は呆れた色をしていた。団扇を持っていない方の手で陸の頬を撫でればまだほんのりと熱い。

「葉の手、気持ちいいな」

「オイラの手なんかいくらでも貸してやるから、早く良くなれよ」

さらりと髪を撫でると陸は猫のように目を細めた。


冬至


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