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帰りの電車の中で木乃に貰ったぽち袋を開けてみれば、マタムネから葉宛ての手紙が入っていた。
大晦日、葉とアンナを助ける前に書き残したものらしい。達筆すぎて葉には殆ど読めたかったけれど、一番最後に書かれていた詩は読むことが出来た。


恐山ル・ヴォワール

葉さんへ
お前さんが愛する
その人は
きっと寂しい思いなぞ
させはしない
少なくとも
少なくとも

お前さんの会う
その人は
きっと寂しい思いなぞ
させはしない
少なくとも
少なくとも

路上に
捨てくされ
やるせなさ
途上に
ふてくされ
やる気なし
愛は
出会い・別れ
透けた布キレ
恐山ル・ヴォワール

アンナさんへ
黒い千羽鶴
その人は
じっと寂しい重い謎
かかえ夜
折れなくとも
折れなくとも

黒い千羽鶴
その人は
じっと寂しい重い謎
かかえ昼
折れなくとも
折れなくとも

気丈に
ふるまえど
ほころんで
無性に
ブロマイド
欲しくなり
愛は
出会い・別れ
透けた布キレ
恐山ル・ヴォワール

小生へ
齢千余年小生は
やっと寂しい思いから
はなれます
はかなくとも
はかなくとも

弱いこの心
小生は
やっと寂しい重い殻
はがれます
墓なくとも
墓なくとも

衆生に
長らえど
せつなくて
賀正に
出会えたら
うれしくて

愛は
出会い・別れ
透けた布キレ
恐山ル・ヴォワール

不肖の身なれど
この度は
至上の喜びと
ちりぬるを
非情に思われど
気にはせぬ
微笑のひとつでもくりゃりゃんせ


慕情にもならぬ
この詩も
以上もちまして
終わります
頭上に輝くは
どの国ぞ
地蔵さまおわす
あそこかな

愛は
出会い・別れ
透けた布キレ
恐山ル・ヴォワール



小生、麻倉家に仕える事約1000年。
この度葉さんの旅のお供に世界の股旅から戻ってまいった。
ねこまたのマタムネと申す。
好きなものはマタタビ。
ではまた


voir ヴォワール……会う 隠語としての花嫁のヴェール

au revoir オー・ルヴォワール……さよなら











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