親世代スリザリン6年生の女の子がうっかり知らぬ間にサボの所にトリップその2 マイペースが二人揃うと緊張感なんぞ無い
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「……おはようございます」
「……あァ、おはよう」
「……夢じゃなかったんですか」
「……そうみてェだな」
サボは足りていなかった睡眠を十分に補給してさっぱりと目覚めることが出来た。 寝不足による頭痛やら倦怠感やらも全て無くなっていて気持ちのいい目覚めだった。久しく感じていなかった満足感を味わう程である。
しかし、全ての問題が片付いたという事ではない。新たな問題が浮上し、どう解決しようかと頭を抱えたい衝動に駆られている。
その問題というもの目の前でさっぱりとした顔で隣に寝転んでいる少女の存在である。 銀色の髪を緩く三つ編みにしてシンプルなパジャマに身を包む少女はサボの記憶が正しければ楓と名乗っていたか。 こんなに綺麗な銀髪も持った女は革命軍で見たことが無い。
――夢を見た。 隣に銀髪の可愛い女の子が寝ていて、自分と同じように忙殺されていたらしい少女と一言二言語り合い、結局二人共睡魔に負けて寝てしまう、という夢。
「一体、どういうことなんでしょうかねえ」
のそのそと起き上がった楓はきょろきょろと辺りを見渡して「ホグワーツじゃない」と呟いた。 そのままベッド脇まで移動して下を覗き、落胆したように肩を落としていた。 サボも起き上がって少女の様子を観察する。
――夢だと、思っていた。 何故ならサボは自室に女を連れ込んだ記憶は無い――ましてや疲労で死にかけていたのだからそんなことをする訳が無い――し、連れ込もうとしたことも無い。 あの夜、不意に目が覚めて目の前にいた少女の髪が綺麗な銀髪で、柄にも無く絵本に出てくる天使のようだと思った。そんな少女が自分の部屋に居る訳が無い、筈だったのだが。
「カエデ、だったか。なんでおれの部屋に居るかわかるか?」
「サボさん、でしたよね。それが申し訳ないことにさっぱりなのです。わたしはようやっと眠りに就く日の晩、ホグワーツはスリザリン寮自室にて、確かに自分のベッドで眠りに就いた筈なのです。――なのに、ここはどこです?わたしは移動をした覚えも、移動する必要も、移動《させられた》覚えも無い。ホグワーツ校内にこんな部屋は無いし、《必要の部屋》ということもないのでしょう?」
「《ホグワーツ》ってなんだ?《必要の部屋》?」
「《ホグワーツ魔法魔術学校》。魔力を持った子供たちが魔法と魔術について勉強する全寮制の学校です。《必要の部屋》はホグワーツ校内にある、目的によって部屋の内装や道具が変わる部屋です。《あったりなかったり部屋》とも呼ばれます」
「ホグワーツの寮の自室ってことは、お前は――」
「――魔法使い、です。まだ半人前ですが」
状況を把握しようとサボの頭がどんどん回転していく。 とりあえず、互いにとってこれは不測の事態であり、理由も何もかもわからない、と言う訳だ。――情報が足りなさすぎる。
楓と向かい合うように座っていたサボは溜息を吐き、ベッドから降りて乱雑に脱ぎ捨てられていたブーツを引っ掛けた。 不思議そうにサボを見上げる楓に笑いかけた。
「とにかく、おれ達は色々話をした方が良さそうだ。で、まず目覚めのコーヒーでもどうだ?」
「その意見に賛成します。コーヒーは砂糖とミルクをたっぷりお願いします」
とにかく眠たいので寝かせてください2
2015/01/25 23:36 ( 0 )
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