宣戦布告




ついにやってまいりました日曜日。天気は晴れ、絶好のお出かけ日和。

なんとなんとなんと!ついにこの俺、折原臨也が今日シズちゃんと初デートしちゃいまーす!楽しみだなぁ!楽しみだなぁ!楽しみだなぁ!

……とまあ、現実逃避はこのぐらいにしといて。非常に残念なことに今俺の前には沢山の女物の服(よりによって全部スカート系)が並べられている。この時点で既にちょっと話がおかしいよね。言いたいことはわかるよ、物凄く。言っとくけどこれは俺の趣味じゃないから。
そしてさらに疑問なのが双子の妹(基トラブルメーカー)、九瑠璃と舞流が俺の両脇で楽しそうにきゃっきゃとはしゃいでいることだ。

駄目だ、どう頑張っても嫌な予感しかしない。


「イザ兄どれでも好きなの選んでいいからね!これ全部私達がイザ兄の事を想って買ってきた選りすぐりの服なんだから」

「…………了(選んでもらって構わない)………」

「……それがどうしたら全部女物になるわけ?…ていうか、何で俺用なんだよ」


ご丁寧にどの服も俺のサイズに合いそうなものばかりだ。どうして俺のサイズが2人に割れているのかなんて無粋なことは今更聞かない。聞かないけど、どうしてそれを今日この時間に持って来たのかが不思議だ。心底不思議だ!


「因みに私達のオススメはこれでーす!静雄さんって、いかにも可愛いっていう感じの人に弱そうだしさ。ほら、所謂守ってあげたくなるような女の子!」

「…………弱(か弱い女の子)………」


俺の気を知ってか知らずか、妹達(主に舞流)は白いカーディガンと淡いピンクのワンピースを持って楽しそうに笑っている。無邪気とかそういうのじゃないからね、ここ重要。


「………何でそこでシズちゃんの名前が出てくるの?」


そう、これだ。俺は今日の事を新羅とドタチンにしか言ってないし、この2人には口が裂けても言うわけがない。……どこで情報が漏れたんだ。


「え?だってイザ兄今日は静雄さんとデートなんでしょ?ね、クル姉」

「…………知(知ってる)………」


よし、後で情報を漏らした奴を見つけ出して消そう。よりにもよってこの2人にばれてしまったんじゃ言い訳が出来ない。俺の妹なだけあってそういうところは妙に鋭いからなぁ。下手な嘘を吐いて自滅するよりさっさと退散してもらおう。それが一番安全だ。


「言っとくけど、俺は着ないからな。お前達が何を考えて買ってきたのか知る必要も興味もないけど、俺はもう来て行く服ぐらい決めてるんだから余計なお世話」

「えー勿体なーい!折角静雄さんのところに行って好みの服装やタイプまで聞き出したのにー」

「…………損………」

「…………………」


え、何?2人してシズちゃんのところまでわざわざ聞きに行ったわけ?好みのタイプや服装を?わざわざ答えてあげるところ辺りシズちゃんは年下に弱いよねぇ。

…俺にはそんな事一言も教えてくれなかったのに。

馬鹿シズちゃん…。


「………それ、本当にシズちゃんの好みなの?」


確かにシズちゃんなら『守ってあげたくなるような女の子』とか好きそうだけどさ。でももしそうだとしたら、俺はシズちゃんの好みから一番遠いところにいることになる。俺はか弱い女の子みたいに誰かに守ってもらわなきゃ駄目!みたいな弱音は絶対に吐かないし、第一自分の身は自分で十分守れる。


「当たり前じゃーん!だって静雄さんと一緒に買いに行ったんだもんねー?」


こくりと九瑠璃が頷く。……一緒に買いに行ったんだ、シズちゃん。いつの間に行ったんだよ。なんか、俺とデートする前に俺の妹達とデートしたみたいに考えちゃうじゃん。アハハ!これなんて乙女思考?
たしかに俺はシズちゃんに今日の事を一言もデートって言ってないんだけどさ。遊園地よりもそういう女の子の店に一緒に入って買い物する方がよっぽどデートらしいっていうか、なんていうか…。シズちゃんはやっぱり女の子の方が好きなんだよね。俺は両刀使いだけど、シズちゃんは純情チェリーボーイだからその辺かなり夢見ちゃってるんだろうなぁ。

可愛いけど、複雑……。


「静雄さんったら私達が問い詰める度に真っ赤な顔で目を泳がせてたんだよ?可愛かったー!ね?静雄さんのためにも絶対着るべきだって!ちゃんとカツラも買ってきたんだから!」

「…………是(被った方が良い)………」


だんだんとテンションが上がってきている九瑠璃と舞流がカツラをいくつか取り出して俺に押し付ける。ロングヘアが多いのはやっぱりこれもシズちゃんの好みを参考に選んだからっていうわけ?


……面白いじゃん。


「……分かった。こうなったら徹底的にシズちゃんの好みのタイプになってやろうじゃないか」

「やったー!クル姉、部屋から化粧道具持ってきて!あとアクセサリーも!」

「…………解(分かった)………」


これは俺からシズちゃんへの宣戦布告だ。それもこれも全部シズちゃんが悪いんだからしょうがない。今に見てろ、絶対に可愛いって言わせてやる…!

こうして俺は何故か妹達の手によってシズちゃん好みの女の子へと変身させられることになってしまった。


…時間、間に合うかな。





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まさかの双子登場です。

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