どうしよう





お化け屋敷での感想を言おう。


ほとんど覚えていない。




ただ、それだけだ。
何でかって?ハッ、愚問だね。シズちゃんにあんな至近距離で手を繋ぎながら歩かれたら普通はヤバいでしょ?しかも本当に俺を守るみたいにぎゅって手を握られたらさぁ…っ!おかげでオバケが出てきたかどうかなんてサッパリ覚えてないよ。オバケ役の人ごめんなさいだよ。


出た途端に凄い勢いで離されたけどね(笑)


「何で離すの?」

「……もう大丈夫だから必要ねぇだろ」

「シズちゃんのけちんぼー」


自分から繋いできたくせに真っ赤になっちゃってさ。そもそもジェットコースターの時だってシズちゃんから繋いできたんじゃん。今更だよ、今更。


「あ、ちょっとトイレ行ってくるから待ってて」

「……手前まさか、女子トイレに入るつもりか?」

「……シズちゃん、車椅子の人専用の広いトイレがあるでしょ?あれ、男女共用だから別に問題ないんだよ」


なるほど、と感心して黙り込んだシズちゃんを置いて近くのトイレに入る。…にしても、本当に違和感ないよなこの格好。入り口にあった鏡を見て改めて感心。むしろ寒心。高校生にもなってこんなにも女装が似合うとは自分でも思わなかった。でも九瑠璃と舞流が言ってた通り、シズちゃんの好みの格好は効果絶大だな。まだ一回も殴られてないし。それは俺が今は見た目だけ女ということもあるのかもしれないけど。


……んー、ちょっと傷つくなぁ。






用を足して手を洗っていると扉の向こうで人が動いた気配がした。あぁ、早く出ないと誰かが並んでいるのかもしれない。
扉を開くとそこにはやっぱり人がいた。しかも4人。

………あ、あれ?こいつら…


「よぉ、さっきはフってくれてどうも」

「ちょーっと君に用があるんだけど、いいかな?」


…間違いない。駅前で俺をナンパしてきた男達だ。いくら俺が可愛いからってまさかここまで後をつけてきたとかは……ないよね、うん。


「何の用かな?外で人を待たせてるんだけど」


流石に今の俺では4人相手はキツい。ちょっと面倒だけど適当にあしらって逃げよう。なんていう俺の考えはバレていたのか、逃げられないようにもう一度トイレの中に追い詰められて鍵をかけられた。……おぉ、ピンチ到来?


「実は俺達、君にフられた後ある人物に雇われてさ。金をやるから平和島静雄の彼女を攫ってくれって、ね」

「それをネタに平和島静雄を潰すんだってよ」


えーシズちゃん関係かよ。俺関係ないじゃん。とばっちりじゃん。…いや、シズちゃんの彼女っていうのはちょっと嬉しいけどさ。とにかく、こいつらをどうにかしたらその雇い主殺す。俺は優しいから社会的に殺してやる。


「じゃあこんなところに閉じ込めちゃったら駄目なんじゃない?仮に私を薬か何かで眠らせたとしても、運び出す時に外にいるシズちゃんに見つかっちゃうよ?シズちゃんだけじゃない、他の人もいる。まぁ、それ以前に私を眠らせることが出来たらの話だけどね」


いくらなんでも無理でしょ、見たところスーツケースとかも持ってないみたいだし。気絶した女を担いでたりなんかしたら、それこそシズちゃんじゃなくても誰かが不審に思ってくれるだろう。


「うん、そうだよね」

「………は?」


男の1人がゆっくりとニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべながらゆっくりと近付いてくる。それに伴ってさっきまではなんとなーくしていた嫌な予感が確実なものへと変わっていく。気持ち悪い顔で笑うな更に気持ち悪い。


「でもさ、そういうネタにするならもっといい方法を知ってるんだよね、俺達」

「……へぇ、どんな?」


他の奴らも同じように近付いてくる。…くそっ、緊急用の呼び出しスイッチから離されてしまった。


「俺達に強姦された君の写メを見せ付ける、とか」


こいつら馬鹿かと思ってたけど別の意味で想像以上の馬鹿だ。おいおい嘘だろ、俺は男だぞ!?


「でも私が大声出せばすぐに誰かがとんで来るんじゃないの?」

「そこはホラ、こういう便利なものを支給されてるからさ」


いつの間に準備したのか、男の手にはハンカチが握られていた。おそらく何かしらの薬を染み込ませているのだろう。

あー…もう、最悪。

いっそのこと俺は男だとカミングアウトしてやろうか。でもそうなると『折原臨也が女装した』という情報が流れるだろうし…。


「あはは……困ったなぁ」


女装がバレるのは駄目だし、強姦されるだなんてもっての外。どうしようどうしよう、ただでさえそんなに広くないトイレの中で追い詰められるのはあっという間だった。冷や汗が止まらない。嫌だ、嫌だ、嫌だ!シズちゃん以外の野郎に触られるのは嫌だ!


「ちょっとの間静かにしててね」


ハンカチが口に押さえつけられて俺の意識は段々と薄れていった。





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無理矢理感がありますよね分かります

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