08.出口どっち?




08.出口どっち?

・雪燐





「だーかーらー!分かってねぇなーお前!下着は黒でレースとかついてるやつの方が燃えるってさっきから言ってんだろ!?」

「分かってないのは兄さんの方だ!僕は白で清楚なものの方が好きだって言ってるのに!そうやって自分の考えを人に押し付けるのやめなよ、子供じゃないんだし」

「あぁ!?誰が子供だ!誰がっ!」

「兄さん以外にいるっていうの?」

「俺はっ!お前の!そういう人をバカにしたような目が嫌いだっ!」

「何でそうなるんだよ!あと兄さんはもとからバカだろ!?」

「もー怒った!俺今日の晩飯絶対ぇお前の分作んねぇからな!!」

「勝手にすれば?言っとくけど、その食材を買っているお金は僕のものだっていうことをお忘れなく」

「〜〜っ!くっそぉおお!もうお前なんか知らん!!変態カタブツホクロメガネッ!!」

「ホクロは関係ねぇだろ!!」


ばたんっ


「…………ほんとに出て行ったよ」


ぎぃっ


「!!……なに、もう帰ってきたわけ?」

『ただいまー』

「…なんだ、クロか」

『むっ!しつれいだぞ!』

「あぁ、もしかして怒ったのかな…。ごめんねクロ」

『ゆきおはいじわるだからゆるさない!』

「んー…困ったな。僕にはクロの言葉はわからないよ」

『ほくろめがね だからな!』

「…今のはなんとなく悪口だってわかった」

『!!すごい!なんでわかったんだ!?』

「あ、尻尾凄い揺れてる。っていうことは当たってたのかな。…いまいち喜べないんだけど」

『?ゆきお どうした?』

「クロは兄さんと似てるね」

『りんと?』

「尻尾の反応とか、あと嬉しい時とかびっくりした時に目が大きくなるのとか凄く似てる。ペットは飼い主に似るっていうけど、使い魔も同じなのかな」

『おれは ぺっと じゃない!』

「あれっ、また怒らせちゃった、のかな…?」

『ゆきおなんて もうしらないっ!』

「え、ちょっ、クロまで出て行こうとしないでよ」

『うわあぁあ!なにするんだ!はなせー!』

「ふぅ…まったく。怒ると部屋を飛び出す癖も兄さんと似てるなんて、勘弁してよね」

『ゆきお…?どうしたんだ?』

「うわ、尻尾くすぐったいよ。……ねぇ、クロ。僕の話してる言葉が分かるなら一方的になっちゃうけど話を聞いてもらってもいいかな?」

『よくわかんないけど いいぞ!』

「尻尾を振ってるってことはオーケーってことでいいのかな。…あのね、僕兄さんと喧嘩しちゃったんだ」

『けんか?けんかはかなしいって りんがいってた!』

「最初は覚えてすらいないぐらい些細なことだったんだけどね。兄さん…と、僕もお互い意地っ張りだから余計にこじれちゃって」

『なかなおり しないのか?』

「変なところで似てるから困るよ…普段は似ていないってさんざん言われるのにね」

『はやくなかなおり してほしいなぁ…』

「わ、尻尾がしゅんってなってる…。そうだよね、僕と兄さんが喧嘩してたらクロも嫌だよね」

『おれは なかよしなりんとゆきおが すきだ!』

「僕が大人にならないといけないって思ってはいるんだけど、兄さんといるときはついついただの弟になってしまうんだ。さっきは兄さんのこと子供だって言ったけど、僕だって十分子供だよ」

『おれからしたら ふたりともこどもだぞ?』

「何か言いたげな顔だなぁ…ごめんね、僕にはわかってあげられなくて」

『ゆきお…』

「……よし、そろそろ謝ってくるよ。後半の言い争いなんて今思えば馬鹿馬鹿しすぎる」

『…あれ?りんのにおいだ』

「話を聞いてくれてありがとうね、クロ」

『ゆきお!りん!りんがいるよ!』

「?なに?どうしたの?」


ガチャッ


「ゆ、雪男!」

「!?兄さん…?」

「雪男あの、その…さっきは…ごめんな。流石に言い過ぎた」

「僕こそごめん…兄さん相手だとつい口が出ちゃって」

「あぁ、うん…実は、さ…聞こえてたんだよな、雪男とクロが話してんの」

「ちょっ!!?」

「だから、その…俺としては雪男がそういう風に思ってくれてるのってすげぇ嬉しいっていうかなんていうか…何でも言い合えるのってやっぱいいことじゃん。特に、お前にとってはさ」

「兄さん…」

「うん、だからさ、めいっぱい甘えてもいいんだぞ!俺はお前の兄ちゃんだからな!」

「…ありがとう、兄さん」

「いやぁ、なんか俺もお前の本音を聞けて安心したわ」

「………え?」

「無理に大人ぶんなくったていいんだぞ?雪男も俺と同じ子供なんだからさ」

「………………」

「なんだかんだ言ってもお前も俺と変わんねぇよ。おこちゃまな雪男は兄ちゃんの俺にどーんと頼っていいんだからな!」

「………だれが…」

「へ?」

「だれが…おこちゃまだって…?」

「!!お前が言ったんじゃねぇか!」

「僕は子供だって言ったんだ!あと、兄さんには言われたくないよ!僕よりも断然おこちゃまじゃないか!!」

「はぁぁあああ!?もー怒った!!一緒に買い物行こうって誘うつもりだったけどやめだやめ!!一人で行く!!」

「へぇ…勝手にすれば?僕の財布がなけりゃ材料だって買えないくせに!」

「〜〜っ!!もう知らん!!雪男のバーカバーカ!!」


ばたんっ


「………………」

『………ゆきお?』

「〜〜だあぁあぁああっ!!」

『!!び、びっくりしたぞ!!』

「もうっ!何なんだよっ!!そうやっていつもいつもいっっつも…クロ!僕も出てくるから留守番よろしくね!」

『えっ、えっ、』

「一人じゃ買い物できないくせに!!」


ばたんっ


『………………』

『……さんぽ いこうかな…』




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お題配布元『確かに恋だった


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