それはどうかな?






・雪燐
・18禁ですので18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください




「………マジでやるの…?」

「やりたいって言い出したのは兄さんだろ?」


呆れ顔で溜息を吐きつつも雪男はどこか楽しそうに剃刀の準備をしている。その様子をベッドの上で膝を抱えて見守る燐の背中に冷や汗がたらりと伝った。


「兄さんもズボンを脱いで準備しておいてね」

「……………」


そう言って雪男は剃刀負けして肌が荒れないようにとどこからかご丁寧にクリームまで出してきた。そりゃ高校生にもなるのだから髭を剃ることはあるし、世間一般的に持っていても何ら不思議はない。ただちょっと…ちょっとだけ、俺にはまだ髭なんて大人の証が現れていないのに雪男には生えてきていたんだなと思うと兄貴として悔しいだけだ。それと、いつの間に買ったんだって思っただけで…うん。
なかなか動き出そうとしない燐に気付いた雪男が早く準備をしろと促す。話しかけた時は「忙しいから」と適当にあしらおうとしてきたくせに。いざとなったらノリノリじゃねーか変態メガネ。
心の中で悪態を吐きながらゆっくりゆっくりズボンを降ろしていく。言い出したのは確かに燐であったが、そもそも最初は「テイモウって何だ」という純粋な疑問だった。その日志摩が話していたのをふと思い出したのだ。それなのに雪男と話しているうちに話題が転々としてゆき、最終的には「やってみたい」と言ってしまっていて。なんだかとてもしてやられた感が否めないが、それでも言ってしまったものはしょうがない。脱いだズボンを脇にのけて再び膝を抱える。


「あれ?何でパンツ脱いでないの?」

「ぬ、脱がなくてもいーだろっ」

「脱がなかったら剃れないんだけど」

「ちょっとずらせば剃れる…ってちょっと待て!何でお前が剃るみたいな話の流れになってるんだ!?」

「え、何で?違うの?」

「その心底不思議そうな顔ヤメロ!」


どうも所々会話が噛み合わないような気がしていたのだ。何故もっと早く気付かなかったんだ俺のバカ…!経験上この流れは非常によろしくない匂いがする。
支度を終えた雪男がベッドに乗り上げてくる。古いスプリングが軋んで燐は思わず後ずさった。きっと剃刀をこちらによこせと言っても雪男はそう簡単に渡そうとしないだろう。生まれた時からこいつの兄ちゃんやってんだ。それぐらい嫌でも分かる。なんとか気を逸らして力ずくで奪うしかないだろう。口では勝てないが力勝負なら雪男より上だ。
意識を集中させてタイミングを見計らう。がしかし、力勝負でも雪男の方が一枚上手だったようで。


「ぎゃあッ!?」

「男に二言はないんだよね?」


燐が雪男の剃刀を持つ手に集中した瞬間、雪男は燐の下着を素早くずり下ろした。冷えた外気に触れて燐はゾクリと震える。暴れてでも抵抗しようと思った頃には冷たいクリームが陰部に塗り込まれていて。恥ずかしくて間抜けすぎる光景に燐は思わず顔を覆った。もうやだ何これ穴があったら埋まりたい。純粋すぎる質問を雪男に投げかけようとしている数十分前の俺よ、今度から分からないことがあったら雪男じゃなくて勝呂に聞こうな。それか携帯で検索することを覚えよう。


「…ぅっ、や、どんだけ塗り込むんだよ…!」


ひたすらクリームを塗り続ける雪男の手つきと、クリームから発せられるねちねちとした粘着質な音がどことなく情事の時のそれとかぶってしまって。ただクリームを塗られているだけなのにそんなことを考えてしまうなんて俺は変態かよ。燐は気を紛らわせようとぎゅっと強く目を瞑り雪男の髪の毛を縋るように掴んだ。変に力んだせいでもしかしたら何本か抜けてしまったかもしれないが、それは不可抗力ということで許してほしい。


「…じゃあ剃るよ」

「……と、整えるだけだからな…?」

「………」


返事が返ってこないことに一抹の不安を覚えたが、それでもすぐに聞こえ始めたじょりじょりと毛を剃る音に意識を奪われた。雪男が入念にクリームを塗ったおかげで引っかかりを感じることなく、金属独特の冷たさを含んだ刃がスムーズに毛が剃られてゆく。そう、スムーズに……って、ちょっと待て、何かがおかしい。


「おいおいおいおい!!」

「どうかした?もしかして痛かったとか…?だったらごめんね、僕も初めてだからさ」

「違うわ!!なにさも当たり前のように全剃りしようとしてんだよお前はッ!!?整えるだけだって言っただろ!?」

「分かったとは言ってないよ」

「ヘリクツか!!ちょっ、マジでやめろって!!」


今度こそ本気で抵抗しても雪男の手は止まらない。止まるどころか剃るコツを掴んだのかどんどん早くなっている気がする。ただでさえ実の弟の手によって下の毛を剃られるという罰ゲームのような羞恥心を味合わされているというのに、その上ツルツルにされてしまいましたとか絶対に笑えない。


「どうせ僕以外が見ることはないんだしいいだろ」

「よくねえええよ!!?学校のトイレで誰かに見られたらどうすんだ!!」


そうこうしているうちに雪男の手が止まる。雪男の中に残っていた情け心というやつがついに顔を出してくれたのかと思いきや、それは燐にとって一番直視したくなかった現実を直視させる合図だった。


「うん、綺麗に剃れたね」

「…〜〜ッ!!?」


衝撃的すぎて言葉が出ない。濡れタオルで拭われたそこはあろうことかツルッツルだった。わなわなと震える燐とは逆に雪男は清々しく笑顔を浮かべている。先にも言ったけど、まじで笑いごとじゃねぇんだよ…!
二度も言うが、燐の下肢は15歳の男子高校生としてはありえない程ツルッツルになってしまっていた。おかげで燐の陰部が部屋の明かりにこれでもかと晒されてしまっている。初めてにしてはそれはそれは見事な剃毛をぶちかましてくれた弟を久しぶりに本気で殴りたいと思った瞬間だった。燐が怒るのも無理もない。


「お、おま、お前はなんてことを…!!」

「僕兄さんに比べて不器用だからさ、中途半端にするよりいっそのこと全部剃ってしまった方がいいかなって思って」

「お前本当はバカだったのか…!?」


よし、その優秀なのかおかしいのかよくわからない頭に兄ちゃんが怒りの鉄槌をお見舞いしてやろう。ぐっと拳を握りしめてそう決心した燐をよそに、雪男は燐のモノを下からねっとりとなぞり上げるように触れた。


「ひッ!?な、なに…」

「それより兄さんのここ反応してるんだけど」

「ぅあ、あああッ!」

「ただ剃っていただけなのに感じちゃうなんて兄さんは変態だね」


雪男の艶を含んだ低い声にゾクゾクと背中に快楽の甘い痺れが走る。たしかに雪男が毛を剃っている間何度か毛が剃られていく感覚とは別の、もっと言えばよく知っている感覚を感じたことは認める。けれどそれは触れてくる雪男の手つきが情事を彷彿させるものだったからであって、別に燐が進んで意識していたわけではない。
快楽から逃れようと唇を噛んで目を瞑る。けれど悲しきかな身体は快楽に対し非常に素直で。剃られたばかりで敏感になっている箇所を重点的に撫でられたり舐められたりしているうちに、燐のモノは腹につくほど反応してしまっていた。


「感じちゃった?」

「ん、な、わけ…ッ、ぅあ、あああッ!」

「兄さんのここドロドロなのが見える?ここも毛がないからはっきり見えちゃうね」

「みっ、み、るなァ…ッ、あ、あッ、ああ!…ひッ!?」

「イってもいいよ」

「あッ、あああッ!!…ッ、ふ、ぅ…ッ」


びゅくびゅくと吐き出された精液が燐の腹を汚す。いつもより数倍も早く達してしまったことに戸惑いが隠せず、燐の目には薄い涙の膜が張られ始めた。
一切毛が生えていない下半身が視界に入る度に何とも言えない虚しさが込み上げてきて。自分の言葉で傷つくことは目に見えていたが、それでもあえて言うのならこの格好はまるで…


「なんだか小さい子相手に悪戯してるみたい」


思わず頭の中を覗かれたのではないかと燐は耳を疑った。雪男は心底楽しそうな笑顔を浮かべ、ゆるゆると燐の性器を上下に擦り上げる。見たくもないのに目を逸らしたり顔を隠そうとすると、「ちゃんと見てて」という言葉と共に亀頭に爪を立てたり裏金にうっすら浮かんだ血管を軽く押しつぶすようになぞり上げてくるのだからたまったもんじゃない。情けないと呆れてしまうほどだらだらと先走り液を垂れ流すそこは、毛が生えていないというだけで粗相をしてしまったかのようにも見えてしまう。それでも半ば強制的に見せつけられている自身の痴態はやがて興奮材料となり、燐のモノは再び頭をもたげ始めた。


「兄さん、舐めて」

「ぅッ、ん、ぐッ…」


唐突に口の中へ突っ込まれた雪男の指を丁寧に舐めていく。認めたくはないがこれはもう燐の中で完全に条件反射と化してしまっていることのうちの一つだった。行為中に雪男が指を差し出してきたらしゃぶりつく。しとどに濡らされたそれがその後どのような使い方をされるのか身体が知っているからこその反応だ。
もう頭はびりびりと甘い痺れに支配されて正常な判断が出来なくなりつつある。どうしてこんなことに、なんて考えは既に頭の端に追いやられてしまっており、今や燐の頭は雪男の関節、爪、皮膚の細胞の一つ一つを丹念に舐め上げることしか考えられていなかった。じきに与えられる快楽を思うと自然と腰が揺れ始める。
雪男の指が燐の口腔内から引き抜かれた。


「慣らすよ」

「ぁ、あッ、あああ、や、やぁッ!」

「まだ指だけなのに…もうちょっと力抜いて」

「や、む、りぃ…ッ!」


唾液でべとべとになった雪男の指は空気に触れたことによって冷たくなっており、燐は身体を小さく震わせた。じゅぷっと小さく音を立てて挿入された指を熱くうねる燐の内壁は待ち構えていたかのようにねっとり絡みつく。逃がさまいと言っているかのような締め付けに雪男は困ったなと苦笑を零した。


「ちょっと手伝ってもらってもいいかな」

「…ぁ、やああッ!?やめ、はっ、なせ…ッ!」


雪男は燐の手をとり、その手に燐自身を握らせた。完全に不意打ちだったため燐はされるがまま自身に触れてしまい、たまらず声を漏らす。離そうとしてもその上から雪男の手が重ねられて逃げられない。薄く張っていた涙の膜からぼろりと生理的な涙が零れる。二人とも息遣いが荒くてなんだか獣みたいだ、なんて自嘲じみた意味を込めて雪男がはっと息を吐く。


「そうだ、折角綺麗になったんだから生かさないと」

「へ、ぁ…ッ、な、に…」


燐の身体がビクビクと跳ねて限界を訴え始めたところで手を離す。あと少しでイけそうだったところを食い止められた燐は眉根を歪ませて雪男を見やった。雪男がクスリと笑ったのを見て燐の後孔が無意識にひくひくと伸縮をする。
ベッドを離れて机の引き出しを探っていた雪男は目当てのものを取り出すと燐の眼前にそれを差し出した。途端、燐の顔が真っ赤に染まり、雪男の手の上にある所謂性器の形を模した大人の玩具に視線が釘付けになる。どうしてこんなものを持っているのだとか、よりにもよって何故こんな大きなもの(ご丁寧にイボまでついている)を選んでしまったのだとか。聞きたいことは山ほどあるが、今はこれをどういった風に使うのかという疑問でそれどころではなかった。初めて本物と見たが、こんなにもグロテスクなものだとは…志摩の持っていたDVDに出ているお姉さん方は大変だな、なんて混乱しすぎて的外れな感想を抱く。その間にも雪男はそれにローションを塗り込み、ベッドの上で呆けている燐に四つん這いになるようにと言う。


「大丈夫、僕のより小さいから」

「え、や、ちょっと、まっ…ぁッ、ああああ!!」


無機物を感じさせるシリコン状のバイブが燐の後孔にずぶずぶと呑み込まれてゆき、燐は目の前にあった枕に歯を立てる。唾液がじわりと滲んだがそんなことはどうでもいい。バイブについていたイボが偶然にも燐の前立腺をひっかいて、それの弾みで燐は二度目の射精を迎えた。頭の中が真っ白になって身体が独特の気怠さを訴える。
雪男は燐の耳を甘噛みし、ゆっくりゆっくりバイブの抽挿を始めた。達したばかりの身体に与えられる刺激は大きな快感となって燐に襲い掛かる。そうして何度か抽挿を食い返しているうちにぐずぐずに解れた燐の後孔から抜ける寸前までめいっぱいバイブを引き、雪男の手は動きをぴたりと止めた。


「実はこれもう一つ機能があるんだ」

「は、ぁ…、ぁッ、…ひ、ぅッ」

「ここにスイッチがあるんだけどね、これを押すと」

「ひ…ッ!?」


ブブブと虫の羽音のような音が自分の体内を通じて聞こえる。まるで生き物のように好き勝手暴れ始めたそれに燐の思考回路が溶かされていく。


「やッ、ああああッ!!ゆ、ゆき…、や、だ、これぇ…ッ!」

「兄さんにはこっちにも集中してもらわないとね」


腰を高く上げる形で四つん這いになっていた燐の太腿を閉じさせて、その間に雪男の熱く反り返ったモノを挟み込む。燐の制止を乞う声を無視して抽挿を開始すれば、自分と燐の先走り液や燐の吐き出した精液でぐちゃぐちゃになったそこからひっきりなしに卑猥な音が聞こえてくる。普段は毛によって守られている箇所に雪男の亀頭がひっかかったり、浮いた血管を直に感じてしまったり。肌と肌が触れ合うことによって生まれるそれは今まで味わったことのない強い快感で、燐はこのまま下半身が溶けてなくなってしまうのではないかなんて錯覚を覚えた。


「や、ぁッ、あ、ああッ!」

「ふふ…腰揺れてるけど、そんなにイイの?これ」

「ひゃ…ッ、や、ぁあッ、そ、それ、やらぁ…ッ」

「でも兄さんのここ凄くひくついてるよ、こっちもぐちゃぐちゃだし」


性器と性器を擦り合わせる粘着質な音が激しさを増して、燐の後孔がバイブを締め付ける。締め付ければ締め付けるほど振動を帯びたイボが燐の内壁を犯し、その悪循環によって痛いほど張りつめていた燐のモノは精液を吐き出した。しかし雪男のモノは未だ精液を吐き出していなくて。
射精後ではひはひと短い息を繰り返す燐の後孔からバイブを荒々しく引き抜き、そこに自身を宛がう。まるで今までナカを塞いでいた質量の代わりになるものを探すかのように、赤くなったそこはぱくぱくと口を開閉させて自ら雪男のモノを呑み込まんとしている。雪男はゴクリと喉を鳴らし、一気に燐のナカを貫いた。


「ふッ、ぅ、ぁッ、ああああッ!」

「…ッ、きっつ…!兄さん、もうちょっと力抜いて…」

「あッ、ああ、む、むり…、ぅ、ああッ!むりぃ…ッ!!」


厭らしい音と燐の喘ぎ声が部屋を支配する。泣きじゃくりながらも夢中で腰を揺らしてよがる燐に手加減してやれる余裕などとうに残ってなくて。雪男は遠慮なく燐のナカの一番弱いところを狙い穿つ。


「ねぇ、何で無理なの?」


耳の穴に舌をねじ込んでわざと水音を立てる。燐と目が合ったのでそのままどちらからともいわずキスを交わした。互いに歯列や舌の裏を探り合い、リップ音にしては些か大きな音を機に離れれば燐は寂しそうに切ない声を漏らした。


「ねぇ兄さん、何で?」

「…ッ、ぅ、ああ、あッ」

「答えてくれないとイかせてあげないよ」

「…や、…ッ!き、もち、いー、からぁ…ッ!」

「ふぅん…?兄さんは気持ちいいからこんなに僕のを締め付けるんだ」

「ぁ、ああッ、だ、だめッ、そこ、だめだってばぁ…ッ!」


ぬるり、と燐自身を擦り上げれば燐は白い喉を晒してよがった。そのことに気を良くした雪男は絶頂に向けて腰の動きを速める。唇を噛んで快感に耐えようとする燐の唇に舌を這わし、もう一度深くキスをした。噛むなら僕のを噛んでも良いから、と言えば燐は苦笑して雪男の首に腕を回した。


「そ、なこと、したら、ぁあッ!…ゆき、が、傷付く、だろ…?」


ナカを抉られて漏れる喘ぎ声を堪えて紡ぎ出せば、雪男は返事の代わりに燐の目尻にキスを落とした。零れる涙を吸ってやると燐はにこりと笑ってキスを強請る。けれど甘ったるいキスを交わしている間も抽挿は続いており、燐はぐっと雪男の頭を抱え込んだ。


「も…い、イく…ッ!」

「うん、…ッ、一緒にイこう、兄さん」


ギリギリまで引き抜かれ最奥を貫くように穿てば、二人ともほぼ同時に精液を吐き出した。ナカに注がれたものが繋がった個所から零れる度に跳ねる腰をそっと撫でてやる。熱くて頭がクラクラして。熱に浮かされた頭でも考えていることは雪男のことばっかりで。


「ゆき、お…」

「…ん?」

「……すき、」

「……うん、僕も兄さんが大好き」


ずっと昔から誰よりも近くで聞いていた優しい声音でそう言われたのを最後に、燐は襲い掛かる睡魔に身を預けた。





「いつまで拗ねてるつもり?」

「……………」

「黙ってちゃわからないだろ」

「………だから、」

「うん」

「だから言ったじゃねぇかよおおおお!!!」


たまらず張り上げた声はほんのりと涙声を含んでおり、流石の雪男も少々ぎょっと目を見張った。


「今日!俺が!どれだけの苦しみを味わったか!!お前にわかるか!?」

「何の話だよ…」

「お前がこの間下の毛をツルッツルに剃ってくれたおかげで今日勝呂にドン引きされたんだよ!!」

「えっ、なに、もしかして勝呂君に見せたの…!?」

「んなわけねえええだろ!!?トイレに行った時にたまったま見られただけだっつーの!!」

「へぇ…?……で?」

「お前まじでいい加減にしろよ!?俺に何か言うことがあんだろーが!!」

「……………」

「……………」

「…あぁ!もう一回綺麗に剃り直す?」

「やっぱお前本当はバカだろ!!!」





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