オー!マイブラザー!



・相互記念
・ブラコンな雪燐




【ブラコン】
意味:ブラザー・コンプレックスの略。兄弟に対する強い愛着や兄弟愛を超えた性を対象とする愛情や愛着心・愛情を抱くことを指す。しかし心理学的には定義されていない用語である。どの程度の愛情がブラコンに該当するかという境界線や解釈は人によって異なる。姉妹間ではシスコン(シスター・コンプレックス)と表現することもある。





「あぁ、もう…兄さんはほんっとに可愛いね…」

「えぇっと……いや、そういうお前の方が可愛いと思うぞ」


助けてくれ、とシュラから連絡を受けた時は何事かと思ったが、なるほど、どうやら雪男はシュラの酒をうっかり間違えて飲んでしまったらしい。最初はなんとか理性を保っていたものの徐々に酒がまわり、シュラが燐の元へ雪男を運んできたころにはべろんべろんに酔って幻覚が見え始めていた。今はシュラを燐だと勘違いしているらしい。肩に担がれたまま普段絶対に見せることのないふにゃりとした笑顔でシュラを見つめている。流石のシュラも罪悪感を感じているのか、早々に雪男を燐に預けてミネラルウォーターを買いに行った。


「雪男、俺が誰か分かるか?」

「………クロが喋ってる…?あれ、クロって喋れたっけ…?」

「駄目だこりゃ…完っ全に酔ってやがる」


コートだけ脱がせてベッドに運んだのはいいものの、メガネを外して視界の悪くなった雪男(しかも酔っている)は燐のことをクロだと認識しているらしい。日頃の疲れもたまっていたのかうとうとし始めた雪男の頬に手を添える。


(やっべええええ!!やっぱ雪男超可愛いいいい!!!)


燐は声に出せない思いを心の中で叫んだ。抵抗されないのをいいことに髪や額を撫でてみたり、唇をちょんと触って一人で悶えてみたり。傍から見れば完全に変質者である。


「うっは…!肌もっちもちじゃん!どうなってんだこれ!?」


撫でるだけじゃ飽き足らず突いたり軽く引っ張ってみたりと雪男を弄んでいると、ふいに雪男が目を開いた。あ、怒られるかな。燐の心臓がドキリと跳ねて動きを止めると、雪男はだるそうに起き上ってメガネをかけた。


「おぉ…大丈夫か?」


驚きつつもとりあえず声をかけてみれば、何の前触れもなく雪男が燐を抱き締めた。しかも背中を摩りあげられている。突然すぎてわけがわかっていない燐を表すかのように、ぴんっと伸びた尻尾が戸惑いがちに揺れ動く。


「やっぱり兄さん可愛い…ほんっと可愛い…大好き」

(全然大丈夫じゃねえええ!!)


だいたい、男が可愛いなんて言われて素直に喜ぶわけねーだろ!ていうか俺は可愛くねぇ!カッコいいんだ!そう言ってやりたいのは山々なのだが雪男は幸せそうに燐の首元に顔を埋めている。こんなに幸せそうな顔をしている雪男を悲しませる(かもしれない)ことを言えるはずがねぇ…!ぎりぎりと奥歯を噛みしめて雪男の抱擁を受け入れる。
自分が雪男に言うのはいい。だって本当のことだし。小さな頃から自分の後をちょこちょこと付いてきていた雪男が今ではすっかり可愛くなくなってしまった。…なんてことを言ったかもしれないが、燐は雪男がたまに見せる弟の顔がたまらなく可愛く見えてしまうようになってしまったのだ。日頃可愛くない雪男を見続けた結果だろうか…これはその反動というやつなのかもしれない。


「ねぇ、兄さん」

「なんだ?」

「兄さんも一緒に寝ようよ…布団が寒い」

「ちょっ、今シュラが水を買いに行ってくれてるからもう少し待とうぜ?な?」

「んー…」


そう諭せば雪男の顔は一気に不機嫌そうなものへと変わった。やばいと思いつつも、あぁこれはこれでカッコいいのかもしれないと燐は緩む頬をぐっと引き締める。


「もう酔ってないよ」

「目が据わってるやつが何言ってんだ」

「兄さんが僕の顔を触ってたのも知ってるし」

「そ、それは忘れような!!?」


起きてたのかよ!?背中に冷たい汗が伝って燐の尻尾もそわそわと動き出す。雪男はそんな尻尾と燐とを交互に見やってにやりと微笑んだ。


「可愛いなあ…」

「可愛くねぇ!!」

「そうやってすぐムキになるところがまた、ね」

「ムキにもなるだろ」

「兄さん可愛いから襲われないようにね」

「おそ…っ!?んなことあるわけねーだろ!?どう考えてもお前の方が顔整ってるし可愛いし…まじあぶねぇって!!」

「双子なんだからたいして変わらないよ…でも兄さんは格別かわいいから本当に心配だな」

「俺はお前が心配だよ!」


そんなやりとりを続けるうちにどちらが先に結婚するかの話になって。


「兄さんが結婚したら僕も安心して結婚する!」

「いーやっ!俺がお前に可愛い嫁さんが出来てから結婚する!」

「兄さんバカだから先に結婚してくれないと安心できないよ!」

「バカは関係ねーだろ!!」


兄さんが先、雪男が先、と言い争いを続けてくとなんだか虚しい気持ちになって。それは雪男も同じだったようで、二人は自然と言葉を失った。


「……やっぱ、結婚とかすんなよ」

「えっ…」


沈黙に耐え切れなくなった燐が先に口を開く。二人とも互いが互いに幸せな家庭を築いてほしいという気持ちに嘘はない。嘘はないのだがどこかやるせない思いもあって。


「…う、ウソだウソ!お前は今まで苦労してきた分これから幸せにならなきゃいけねーんだ」

「…僕は…」


雪男は少し悩んでから真面目な顔で燐の手を取った。


「僕にとっての幸せは兄さんとこれから先もずっと一緒にいることだから」

「雪男…!」


俺はずっとお前のそばにいるからな!と、今度は燐から雪男を抱きしめる。くすぐったそうに笑う雪男につられて燐も笑えば何もかもがどうでもよくなって。
雪男は燐の髪にキスを落とした。


「な…っ!?」

「酔っ払ってるってことにしておいてよ」

「…それはもったいねーから却下」

「そんな可愛いこと言わないでよ兄さん」

「だから可愛くねーって何度言えば…!」

「可愛いよ、たった一人の兄さんだしね」

「そんなこと言ったらお前だってたった一人の弟だろ!」

「うん、そうだね。僕らはたった二人だけの兄弟だ」


すり寄って確かめて、さぁ今夜はもう寝ようという空気になったところで部屋の扉が勢いよく開かれた。


「大丈夫か雪男!お前の好きな水買ってきたぞ!」

「「うおわあああああ」」



■■■



「頭が…痛い…!」

「う゛っ…なんかお前酒くせーぞ」

「酒臭い!?えっ、なに、昨日の僕に何があったの…!?」

「お前何も覚えてねーのか?」

「うん、結構記憶が曖昧かも…」

「実は俺も途中から記憶がねぇんだよ…」

「………もしかして僕、昨日何かやらかした…?」

「それは覚えてる。パン一でひょっとこ踊りをしてた」

「おい、嘘ついてんじゃねーぞ…っ!」

「おっ、俺だって覚えてないだからしょうがねーだろ!?」



「……なぁ、メフィスト」

「はい?」

「今回ばかりはお前に感謝してやるよ」

「おやおや!あなたが礼を言うなんて珍しいこともあるんですねぇ」

「あのままいけばあいつら一線を越えてたかもしれねーからにゃ…ビビリメガネの目がマジだった」

「私はただ面白かったので手を貸したまでですよ。我々がいくらこうして手を加えたとしても無駄でしょうけどね☆」

「んな怖いことさらっと言うなよ…」



********


相互リンク記念ということでAISHINのやわちゃんに捧げます!(*´∇`*)
リクエストは「ブラコンな雪燐」とのことでしたが…ブラコンというよりただの雪燐になってしまいました…すみません!><
こんなものでもよければお納めください…!

リクエストありがとうございました!

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