Melting night



・雪燐
・18禁ですので18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください













「…ん、…ふぅ……なぁ、雪男…」

「…っは、ぁ……なに、兄さん」


真夜中ベッドの上、電気の点いていないその部屋は代わりに月が二人を照らしている。ちゅっちゅっと啄むようなキスの合間に紡がれる言葉はお互い緊張の色を含んでいた。


「これ、いつまで…ふッ、…はぁ…続けんだ…?」

「…もうちょっと…ン、待って……」


もうかれこれどれだけの時間が過ぎたのだろうか。暗くて時間を確認する術を持たない二人にはお互いの唇を貪りあっているこの時間がやけに長く感じられた。鼻で息をするのが下手な燐は徐々に長くなっていくキスについていけなくなってきたのか、雪男より少し息が上がってきている。


「そろそろ…んンッ……はッ、ぁ…次に行っても、いいんじゃね…?」

「……ん、わかった…ちゅっ」


今の今まで息をする間も惜しむかのようにキスをし重なっていた二人の影はゆっくりと離れた。最初は二人ともラフな夜間着を着ていたのだが、今燐は裸の上に雪男の布団をかぶっている状態である。雪男がキスをしながらやっとの思いで脱がしたのだが、あまりの恥ずかしさに居たたまれなくなった燐が咄嗟に手近にあった雪男の布団を羽織ったのだ。
視線を合わせるどころかお互い向かい合うように正座をして自分の膝頭を見つめている。


「じゅ…準備は、いいか?」

「だい、じょーぶ……多分」

「おま…俺の方が覚悟決めるの大変だったんだからな」

「……うん。そう、だよね…」

「こういう時こそ落ち着いて、な?」

「…ありがとう、兄さん」


雪男は燐の額にちゅっと軽くキスを落とした。
付き合い始めて約3ヶ月。ようやくディープキスにまで至った雪男と燐はそれぞれうんと悩んで、それこそ思いが通じ合った日からずっとずっと悩んで、そして今日ようやく次のステップへと足を進めることになったのだ。
雪男はあらかじめネットで調べて用意しておいたローションのキャップを開いて中身を手にとった。二人しかいない部屋で雪男の手に落ちるローションの音がいやに響く。ただでさえお互いの顔を見るのも恥ずかしい状況の中、燐にとってはそんな音すらもこの後の行為を余計に意識させる材料となった。布団に包まれきれていなかった尻尾がそわそわと揺れる。


「…よし、ちょっと冷たいかもしれないけど我慢してね」

「ん、分かった……」


ぱちん、とキャップの閉められた音に燐の背中はびくりと小さく跳ねる。…いよいよ、なんだ。燐は覚悟を決めたかのようにきゅっと目を閉じて促されるまま仰向けに寝転がった。おずおずと羽織っていた布団を脱ぐと雪男が困ったように笑いながら、何度目かもわからないキスを交わす。いつもはどんなに軽いものでも緊張する燐だが、雪男の唇に触れた瞬間ふわっとより一層強くなる雪男の匂いにひどく心が落ち着いた。


「ヒッ……つめた、ァ…っ!」


ゆるりと持ち上がっていた燐の主張するそれにローションがとろりと落とされる。雪男は自分が一度手に取ったことによって冷たさが緩和されたかと思っていたのだが、燐のモノに垂らされたそれは空気に触れて冷たくなっていた。


「!!あ、ごめん…!冷たかった?」

「ん…だい、じょー…ぶ……ふぅ…ッ」

「無理しないでね……気持ち悪いだろうけど、慣らさないとつらいのは兄さんだから」

「へーきだっ、て……ンん…!」


冷たくてヌルヌルするそれを馴染ませるべく雪男は慎重に丁寧に、けれどもどこかぎこちない手つきで燐のモノを扱いた。意識すればするほど雪男の手の感触がリアルに伝わってきて、たまらないぐらいの強い快楽が燐を襲う。人に触られることによって与えられる刺激は想像以上で、このままあと数回扱かれたら瞬く間にイってしまうだろう。…でも、まだ雪男には何もしてやれていない。それではいけないと考えた燐は何かに縋り付いてやり過ごそうと手探りで耳元のシーツを掴んだ。


「ッ!?い゛っ、たぁ……!」

「ご、ごめん…、軽くしたつもりだったんだけど…」

「なん、で、そんなとこ…ぁ、か、噛むんだよ、ぉっ」

「気を紛らわせる方法ってのに書いてあったから試してみようかと……でも下手に難しいことしない方がいいよね…僕ら初めてなんだから」


噛まれた。認識するよりも早くじんじんとした甘い痛みが燐の左乳首を襲う。真面目な雪男のことだからきっと燐に気持ち良くなってもらうため必死に勉強してくれたのだろう。
それはいい。それは大いに結構なことなのだが…。


「あ、ァッ…ふぅ、…それ、や、…ぁあッ!」

「もしかして、気持ち良くない…?」

「ちが、う…ッ!そ、じゃなくって…ン、ん…!」

「噛むのはやめたんだけど…ん、ちゅ」

「…ふ、ぅ……アッ、ぁ…んンンっ!」

「兄さん…大丈夫?」


噛んだところを癒すかのように雪男は燐の左乳首をじゅるじゅると舐め始めた。燐に気を遣いつつも徐々に尖り始めている先端の割れ目をツンツンと突くように弄ってみたり、飾りの周りを執拗に舐めてみたりなどそれこそ様々な方法で。しかも今度は右の乳首を雪男の手によってクニクニと転がしてみたりつままれたりと新たな刺激も加わってきた。思ってもいなかった箇所を攻められた燐は驚きと未知の感覚に戸惑っていたが、並行してぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて弄られている自分のモノからの聴覚的な刺激と直接的で不思議な快楽にされるがままになっていた。


「あ゛ぁ゛ッ…!やだ、そこ…ぉ!」

「へ?ろこ?」

「ぁっ!しゃべん、なァ…っ」

「あ、ほっひ?……ん、じゅっ」

「く、ぅ…ッ!」


雪男がしゃぶった胸が唾液でひやりと冷たく感じたが、けれども突起はツンと尖ったままだった。それが恥ずかしくて燐は顔をゆるゆるとかぶりを振る。
一方雪男は段々と断続的になってきた燐の呼吸に内心ほっとしていた。理論的なことは頭に叩き込んだものの、もしも実戦で失敗したらどうしようとずっと心配していたのだ。見たところ燐は気付いていないかもしれないが、燐のモノの先からはだらだらと先走りが垂れている。ローションと相俟って滑りが更によくなったそれは雪男の手をテラテラと濡らした。始めた時よりは少し冷静になった雪男も自分に置き換えて、裏筋を指の腹でツツとなぞるように触ってみたり、尿道孔に軽く爪を立ててみたりと、燐のイイトコロを攻め立てる。
おそらく燐はそろそろ限界なのだろう。一度出してやった方が後々楽だとも書いてあったことだし、ここは素直な刺激を与えればいいのかな…。


「ゆきお…ッ、なぁ、ちょっと」

「?」

「俺もお前に、その…色々シてやりてぇ…」

「………えっ」


燐の申し出に意表を突かれた雪男は自分の下腹部がずくんと一気に熱が集まったのを感じた。燐からしてみれば雪男にしてもらってばかりでは悪いという申し訳なさからの申し出だったのだが、逆にそれは雪男にとって堪えていたものが溢れ出してしまう申し出で。
…本当はゆっくりと時間をかけて慣らさないといけないんだけど。
雪男は自分を落ち着かせようとぐっと眉間に皺を寄せた。耳が熱い。


「ひっ!!?」

「あ、悪ィ尻尾が…」


雪男の想いなんて知ったことかとでも言うかのように、燐の尻尾が雪男の首筋をするりと撫でた。というより、燐の意思とは関係なく動く尻尾がたまたま雪男の首筋を掠めたのだ。


「ねぇ、兄さん…」

「?」

「凄く言いにくいんだけど……もう後ろ、触ってもいい?」

「うし、ろ……、…ッ!!」


男同士の性行為について詳しい知識のない燐でも雪男の言っていることぐらいわかる。そこまで無知というわけでもない。実際、理解した途端燐の後孔は無意識にひくついた。覚悟してはいたものの改めて考えるとやっぱり少し怖くて。
…ちゃんと入るのだろうか…ここに、雪男のモノが。
燐が霞みかけている思考の中で雪男の言葉を繰り返している間、雪男は新たにローションを手に取って心を落ち着かせるべく深呼吸をしていた。怖がらせないように、痛くないように、僕が落ち着いていれば大丈夫だ。


「兄さんちょっと足上げるよ」

「ちょっ…!!?」


雪男は燐の膝裏を抱えて自分の肩に乗せた。いくら部屋が暗いとはいえ流石に目も慣れた今では恥ずかしいところが互いに丸見え状態だ。抵抗したいが雪男は燐の後孔を慣らすべく意識がそちらに向いてしまっているため、下手に動いて痛い目を見るのは燐の方。
どうすればいい、どうすればこのどうしようもない恥ずかしさを乗り切れるんだ…!
パニックに陥った燐は思わず足に力を入れてしまい、雪男の首を図らずも自分の方へと引き寄せてしまった。


「ぶっ!!?」

「〜〜っ!!な、なにっ……あ、おれの足!!?」


これには雪男も驚きが隠せないようで燐に首をホールドされたまま固まってしまっている。バランスを崩した弾みで手の中のローションが燐の腹やシーツにぶちまけられ、その冷たさに燐はゾクリと震えた。


「ゆ、雪男ごめん!!大丈夫か!?」

「………兄さん」

「な、なんだよ…」

「僕こそごめん。あんまり余裕ない、かも…っ」

「へ、……ッ!!?ちょ、ゆき…あ゛っ、うあ゛…!!いった、い…っ」

「…っ、さすがにキツい、ね…」


燐に宣告することもなく、雪男は自分の中指を燐の後孔へぐりぐりと半ば強引に押し挿れた。突然の異物感に燐の頬には溜まっていた涙がついに流れ落ちた。ローションに燐の先走りが手伝って雪男が思ったよりは埋まった方だったが、それでも第二関節までだ。燐のナカが雪男の指をギチギチと締め付ける。


「ン、ん…ッぁああ゛…ッ!!」

「力抜いて、兄さん…ちゅっ」

「ンむ、ちゅっ…ふ、…むちゃ、ゆーなっ……ヒ、ィッ、んっん…!」


安心させるように雪男は燐の目尻や頬、鼻の頭や瞼に何度もキスの雨を降らせる。燐もすんすんと鼻を鳴らしながらもそれを受け入れ、雪男は肩に入っていた力が抜けたわずかな隙を見逃さずに第一関節を使って燐のナカをぐちぐちと拡げていく。


「い゛、ンぅ…アアッ!な、に…ンン!ゆび、ふえた…うぁっ…」

「最低でも三本入らないと僕のは挿れられないからね…これ、今動かしてるのが人差し指だけど…わかる?」

「ぁああっ…!はッ、やぁ……ぁん…!」


本当なら今すぐにでも燐のナカに挿れて揺さぶり啼かせたいというのが本音なのだが、現実はそう上手くはいかない。入ってきた異物を押し出そうとしていた燐のナカは雪男の指に馴染んできたのか、うねうねと絡みついて離さないとでも言っているかのようだ。
……このナカに挿れたらきっと物凄く気持ちいいんだろうな。
雪男は逸る気持ちを抑えながらもじゅぷじゅぷと指を動かした。空気が入って気泡の混ざったものが燐の後孔から伝い落ちてきて雪男は生唾を飲み込む。


「へっ…!?や、やぁ、…ッも、はいらなっ…ン、ン!」

「…っ、キツいけど、この薬指が馴染んだら終わりだから…もうちょっとだけ、ね」

「ふっ、ぅ……ゆっ、きぃ…!…ひっく…ン、ァッ…」


燐はもう痛がってはいないようだが、それでも苦しさと気持ち悪さがまだ残っているみたいでシーツを握る手はプルプルと震えてしまっている。前立腺というところを刺激できれば一番良いらしいのだが、思うようになかなか上手く見つかってくれない。苦しい思いをさせてすまないとは思うが、自分だってもう限界なのだ。雪男は痛みで萎えかけていた燐のモノを扱きながら緩急をつけて燐のナカを慣らすことに専念した。
ようやくなんとか三本の指がバラバラに動くようになった頃、燐は涙と唾液でぐちゃぐちゃになっていた。


「もういいかな…」

「は、ぁ……ンッ!」


ぐちゅり、と指を抜いて雪男はローションの隣に用意しておいたゴムに手を伸ばす。燐は朦朧とした意識の中でその光景をぼうっと見ていた。


「ゆ、き…」

「今ゴムをつけるからちょっと待ってね」

「…ん、それ、俺がやってやる」

「………は?」

「やってもらってばっかじゃ嫌だ。…俺だって、お前を気持ち良くしてやりたい」

「何やって…!?や、ちょっと待って!!」


燐は抵抗する雪男の手からゴムを奪い、制止する声を聞かず強引にズボンとパンツを下した。……なんか、俺のと明らかにサイズ違くね…?
雪男は尚も抵抗を仕掛けてきたのだが、燐は箱に書かれている装着方法を見ながらゴムをつけるべく雪男のモノに手を添えた。途端、雪男のソレはまるで何かが弾けるかのようにドクンと大きく脈打つ。

「うッ、ぁ……っ!」

「…ッ!?な、に…?」


続いて熱いどろっとした何かが燐の顔に勢いよくふりかかる。手にも付いたそれを舐めてみると青臭く苦みの強い味がした。味は知らずともこのムッとした独特の匂いは知っている。
雪男を見やれば如何にも信じられないといった顔で燐を見下ろしている。手の甲で口元を覆ってはいるが、月明かりでもわかってしまうぐらい顔から火が出そうなほど赤く染まっている。


「ゆき、」

「ご、ごめん兄さん!すぐ拭くからこっち来て!」

「いや、これぐらい大丈夫だけど…」

「あぁもうサイアクだ…っ!!」


今度はまさかここで自分がこんな恥ずかしい失敗をするとは思っていなかった雪男がパニックに陥った。Tシャツを脱いで燐の顔に放たれた精液をごしごしと拭っていく。布越しでもわかるぐらいに震える雪男の手を燐はぎゅっと握り返し、目で言い聞かせるようにぐっと雪男を見据えた。


「んなことねぇよ。…ほら、俺も同じように触ってやるから次は…な?」

「………ごめん、」

「謝んなって。……つか、お前元気だな…もうこんなんなってる…」
「っ、ぅッ…!あの、あんま強く握らないで欲しいんだけど…」


燐は四つん這いで雪男の下腹部に顔を埋めるような形で一生懸命雪男のモノを扱く。自分でスる時と違って加減が分からない分力を入れすぎてしまったようだ。


「お、おれだって…その……限界というか、ずっと我慢してんだからな…っ」


知らず知らずのうちに上がっていた燐の腰は揺れていて、もじもじと燻りに悶えているようだ。眉根は切なそうに下がってしまっている。それでも雪男と自分を重ねているためか、燐のモノは萎えることなく先走りをだらだらと垂らし続けていた。太腿を伝い落ちたソレがシーツに小さくシミを作っている。
雪男はそれだけでもう達してしまいそうな興奮を覚えた。


「わ、雪男のデカくなった…」

「兄さん、もう……次は僕がゴムつけるからちょっと寝転んでて」

「…わかった」


燐が寝転んだことによってベッドのスプリングがぎしりと軋む。その様子を横目に見ながら雪男はこわごわとゴムを装着した。燐の視線も空中を忙しなく行ったり来たりしている。


「ッァ、ア…いきなりゆびいれんな、ぁっ…!」

「…ん、よかったまだ解れてる。……挿れるよ」

「………おう、…めしあがれ」

「くすっ、何それ」


指が抜かれ続けざまに宛がわれた雪男の熱に驚く。雪男のモノは火傷してしまいそうなほど熱を孕んでいて燐は腹に力を入れてしまった。再び雪男の肩にかけられた足にも力が入り、爪先がきゅっと丸め込まれている。


「あ゛あ゛ぁあ゛ッ、…ァ゛、う、くぅ゛……ッ!」

「キ、ッつ……ぃ!もっと息はいてっ…」


それでも雪男の熱はみちりと肉を割って擦り込むようにゆっくりと燐のナカに押し入ってくる。指とは比にならないほどの質量と痛みに声が出ない。はくはくと息を取り込むのにも必死な燐の頭を安心させるようにぽんぽんと撫でた。
少しでも気を抜けば全部もっていかれそうになほど締りの強い燐の後孔は、雪男の一番太い幹の部分をぎゅうぎゅうに締め付けながらも懸命に咥えこむ。燐に深く呼吸することを促しながらも自分のモノを奥へ進めていく。熱いぐらいに暖かくて溶かされそうだ。


「はっ、はっ、ァ……や、まだぜんぶ、はいって…ひぅッ、…ないの、か…」

「あとちょっと…我慢してねっ…は、ぁ…」

「ぅ、ん……ァッ!!?ヤ、や、だぁっ…そ、こ…ヒッ、な…ァアアッ!!」

「うぁっ…!急に締め付け…ッ!」


上手い具合に前立腺を擦り上げたのか、今までとは全く違う反応を見せた燐に雪男の口角が自然と上がる。萎えつつある燐の竿を荒々しく扱きながら前立腺を重点的に穿つ。その同時攻めがよっぽど気持ちいいのだろう。初めて体感する前立腺からの快感に燐は堪らず欲望を吐きだした。びゅくびゅくと数度にわかれて吐き出されたそれは燐の腹を汚す。燐のナカは達したばかりの衝撃でビクビクと痙攣していて、それが雪男のモノをも刺激する。


「や、ァあっ…あ、ンン…!はや、い、ひっ…ん、もっと、ゆ、っくり…!」

「うん…は、ぁ……、僕も…」


限界の近い雪男のピストンが一段と早くなり、シーツから離した燐の手は空を切る。ごりごりと前立腺や内壁を擦りながらも雪男はその手を掴みキスを落とした。燐は満足そうに目を細める。雪男の額から伝った汗が燐の腹に落ちた。一度は欲望を吐き出した燐も頭をもたげ始めている。


「次は、一緒に…」

「んァアッ!や、ぁっ、ああ!ゆき、ァッ…ちゅー、し、て…っ」

「うん…ちゅっ、あんま、煽らない、でっ…」

「ちゅっ…ンッ、…はぁ、はっ…ん、ふッぅ…!!」

「……くッ、も…出すよ」

「ぅ…んッ、あ、あ…あぁっ!おれ、も、ぉ…イッ…くぅっ…!!」

「ん、一緒にイこ、う……ッ!」

「ッ―――ッアぁあ!!ふ、――――ッひぅ…ッ!!」

「……ッ!!」


燐が達するのと同時に雪男も己の欲望を吐きだした。搾り取られるような錯覚を覚えさせるぐらい燐の肉壁は雪男を離そうとはしない。燐も直接ナカに出されたわけではないが、焼かれるように熱い雪男の精液をゴム越しに注がれる感覚にびくりと震えた。


「……はっ、はっ、……ぁ、…ん…」

「…ふぅ…兄さん、大丈夫?」

「ん…抜くのちょっと待ってな…今抜かれると、つらい…」

「わかった…ちゅっ」


お互い二度目の吐精ということもあってぐったりと疲れている。特に燐は散々喘いだせいで声が掠れてしまっている。雪男が涙の跡を舐めるべく顔を寄せると、燐はそれを避けるかのようにかぶりを振った。


「ァア…ッ!うごくの、も…ァ、きん、し…っ!」

「あ…ご、ごめん!」


わずかな刺激でも今の燐にはつらいようで。雪男を睨んだものの疲れで弱々しいものになってしまっている。その目に煽られそうになる雪男だったが、流石に初めてで無体を働くようなまねはしたくない。これからもずっと一緒にいられるのだから、大事にゆっくりと時間をかけて進めばいいのだ。そう自分に言い聞かせて静かに息を吐いた。


「兄さんが落ち着いたらお風呂に入ろうか。身体洗ってあげる」

「ん、さんきゅ……なぁ、雪男」

「なに?」

「…その……しょっちゅう、ってのはムリ、だけど…」

「?」

「……また、やろう…な…?」

「……あっ…うん!」


燐に負担のかかる行為を嫌がられて次は無いかもしれないという思いも少なからずあった。あったが故になかなか事に及ばなかったのが雪男の決意を揺るがす原因だったのだが、心配はないようだ。


「次はもっとよくなってもらえるように頑張るよ」

「げっ…これ以上があんのかよ…」

「何か言った?」

「なんも言ってねーよ」

「言ってよ、気になるじゃない」

「やだね、教えてやんねー」

「……まだ僕のモノが兄さんのナカに入っていることをお忘れなく」

「…ッ!!てっめ、きたねーぞっ!」

「…ぷはっ」

「…あははっ!」


すっかりいつもの調子に戻った二人は互いの顔を見て噴き出した。さっきまでの情事を思い出させるような雰囲気はなくなっている。


「雪男変なかおー」

「兄さんは可愛い顔してる」

「なんだそれ、クサいにもほどがあるぞ」

「…ちゅっ、兄さん…好きだ」

「…俺も、…ちゅっ…すんげー好き」


それでもずっと望んでいた隙間がようやく満たされたような、ふつふつと体の底からわき上がるような喜びを行き来させるかのようにキスをする。言葉よりも直に心を震わせる愛を囁かれているかのような、そんな心地良い時間を知っているのは雪男と燐とそして二人を照らしていた月だけだった。






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