Explanation





「クリームあんパン!」

「カスタードクリームパン!」


まず始めに言わせてもらうが、僕は甘い/ものが嫌いなわけではない。


「ロングシュガーパン!」

「チョコチップパン!」


でも流石にセルティの愛情が篭りに篭った愛妻弁当をおなかいっぱい食べた後で聞くこの会話。


「アップルシナモンデニッシュ!」

「マーブルチョコパン!」


話をしている当の本人達は気持ち悪くはならないのだろうか。

え、僕はどうなのかって?

あはははは…………食べてもいないのに胸焼けを起こしそうだよ。


「メープルシュガーブレッド!」

「苺メロンパン!」

「おい、ちょっと待て」


はあ、と溜め息を吐いて今まで僕の隣で黙って2人の言い争いを聞いていた門田君がやれやれと口を開いた。よかった!ここで僕が下手に口出しをしていたら静雄と臨也のダブルパンチ(言葉の綾ではないよ、まんまの意味だよ)を喰らう可能性が高い。断然、門田君が2人をなだめてくれた方が安全だ。


「臨也が言った苺メロンパンって、それ苺なのか?それともメロンなのか?」

「嘘でしょ門田君!?何でそこを突っ込むの!?」


至極真面目な顔で何言うのかと思えばそこなんだ!普段の冷静な君を見ている分ちょっとびっくりしたよ!
…あぁほら、静雄も臨也も君のギャップについていけなくて、ぽかーんっていう擬音が聞こえてきそうな間抜けな顔をしているじゃないか!


「まあ、言われてみりゃそうだな。つか、そんなの見たことねぇ」

「えー!シズちゃんもドタチンも知らないの?メロンパンは別にメロン果汁が入っているからメロンパンって呼ばれているんじゃないんだよ。色々な説があるんだけど、表面のビスケット生地の溝がメロンの模様に似ているからっていうのが一番主流かな。まあ、最近はメロン果汁が入っているものも売られているから、強く否定はできないんだけどね」

「ずいぶん詳しいね。それも趣味で知り得た情報かい?」

「まさか。菓子パン好きなら大抵の人は知ってるよ。あ、シズちゃんそのデニッシュちょっとちょうだい」

「手前の嫌いなシナモン入ってんぞ」

「おえ、じゃあいらない」


言うだけ言って臨也は自分のコンビニの袋を漁り始めた。…まったく、仲がいいのか悪いのか分からない。冒頭で2人が甘ったるい菓子パンの名前を出し合っていたのも、自分の好きな菓子パンと相手の好きな菓子パンが一つもかぶらないからという心底どうでもいい理由から始まったものだ。同じ菓子パンというジャンルのパンが好きなのにもかかわらず、ここまで綺麗にかぶらないのはもう面白いとしか言いようがない。

僕からしたら同じ菓子パンなんだからこだわる必要なんてないと思うんだけどね。


「お前ら何て言うか、見てて飽きねぇわ。むしろ飽きる気がしねぇ」

「それ、褒めてんのか?」


静雄がシナモンの匂いがする甘そうなデニッシュを食べながら門田に訝しげな視線を送っている。うわ、匂いだけで胸焼けしそう。……いや、してる。


「だってよ、普段あれだけ喧嘩してるくせに昼休みの時はこうやって穏やかに過ごせてるじゃねぇか。ONとOFFの切り換えって言うのはちょっと違うかもしんねぇけど、なんか、そういうのも悪くねぇじゃねぇか」


臨也が袋からピンク色のメロンパンを取り出してかじりついた。もぐもぐと口いっぱいに頬張ったそれを咀嚼して静雄を見る。


「ドタチンさんがこう言ってますけど、シズちゃんさんはどうです?」


はい、とかじりかけのメロンパンを差し出してにやりと笑う臨也。
わざわざ静雄の嫌いな笑顔で差し出さなくてもいいじゃないか。ほら、静雄の眉間にだんだん皺が寄って


「……………知るか」


がぶり、と実にワイルドに臨也の持つメロンパンにかじりついた静雄に僕らはしばし固まった。臨也なんか、本当にかじりつくなんて思わなかったっていう顔してるし。

……えぇっと、とりあえず今のは


「シズデレ…って痛い痛い痛いです静雄君!お願いだから頭をわし掴みにするのだけはやめてください!どこぞの林檎の如く弾けるからってうわあぁぁああぁあぁあ!!」



つまり、彼らの関係は言葉では言い表せないんです。By.岸谷新羅





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シズちゃんが甘党だと公式で発表されたので便乗しました。
苺メロンパンは美味しいですよ!

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