たかがジンクスされどジンクス



・シズちゃんが少しアホっぽいです
・トムさん視点





平和島静雄という男は実に純粋だ。


中学の頃に後輩としてあいつに知り合った時、そりゃあもうモテていた。現役超人気俳優の弟は勿論のこと、本人は全く気付いていなかったが、静雄も負けずとも劣らずのモテっぷりだった。なんてったって、あの長身に程よく筋肉のついたスレンダースタイルだろ?加えて顔はイケメンときた。所謂、典型的なモテ男だ。あの怪力も当時は目立つことはなかったし、素直な人間にはキレることのない大人しくて優しい良い奴だ。モテない方がおかしい。

さて、何故この話から静雄が純粋だという話になるのかというと、きっかけは数十分前に遡る。














「トムさん、何頼みますか」

「あー、俺は後で頼むから先に注文しろよ」

「ウッス」


昼飯をとるべく、いつも通り静雄とドムドムにやってきた。機械のような笑顔の店員にシェイクやらハンバーグやらを注文している横で、でかでかとアピールしている期間限定の商品を品定めしていると、静雄の財布から何かが落ちた。


「おい静雄、小銭落としたぞ」

「え?あぁ、すいませ…っ!?」


拾ってやろうと屈んで見れば、落ちたのは小銭ではなく指輪だった。しかも、よく見ると赤い糸が蝶々結びされている。…何で静雄の財布から指輪が墜ちてくるんだ?

そう疑問に思ったのもつかの間で、すぐに慌てた静雄が指輪を俺の手から奪い返した。


「な、なんだ、お前もそういう指輪とかに興味あるんだな!似合いそうだもんな」

「……………」


黙って指輪を財布に戻す静雄に一瞬地雷を踏んだかと思ったが、そんな俺の心配とは裏腹に真っ青な顔をした静雄が俺の肩を掴んでこう言った。


「トムさん!どうしましょう!?」

「何が!!?」


一体何がどうした!?と言いたくなるような形相で掴まれた肩から微かに骨が軋む音が聞こえる。ヤバい、キレて殺される云々とは別の意味でヤバい。何だ、さっきの指輪に何があったんだ!?


「指輪に傷でも作っちまったのか?」

「…傷じゃねぇッスけど…トムさんなら修復の仕方とか分かりますよね?俺、トムさんに聞いてからずっとこのおまじないやってるんスけど、凄ぇ効くんで大事にしてたんです」

「……おまじない…?」


あぁ、なんか今懐かしい記憶が頭の中を駆け巡っていったような気がする。そういえばそんな話を中学の時に教えたような…。たしか、赤い糸で蝶々結びをした指輪を財布に入れて誰にも見られずに持ち歩くと好きな奴に会えるとかなんとか…。…ちょっと待て、じゃあこいつはあれからずっとこれを持ち歩いてたってことか!?しかも効いたって、ただのジンクスなのに…えぇぇぇえ!?


「…そうだな、とりあえず、今のは不可抗力っつーことでノーカンだ。すぐにしまっとけば大丈夫だから早くしまえ」

「まじッスか!流石トムさんッス!」


嬉しそうにいそいそと指輪を財布にしまい、唖然としていた店員から商品を受けとる静雄。


「じゃあ俺、あっちで先に席とっときますね」

「お、おう!頼むわ」


すっかりいつもの会話に戻ってしまったことに拍子抜けしつつ、静雄の好きな奴って誰なんだろうと聞くに聞けないようなことを一日中考える羽目になった。








「あ、シズちゃんじゃん。やっほー」

「毎日毎日…池袋には来るなって言ってんだろうが臨也君よぉぉぉお!!!!」




(まさかな)







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ピュアなシズちゃんって可愛いですよね

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