待ち合わせはコンビニで





・コンビニ店員静雄×お客臨也





くぅうっと目一杯に伸びをして息を吐く。良かった、何とか終わった。デスクに置いてある時計を見れば既に時間は真夜中の2時を指しており、どうりで眠いわけだと一人ごちる。
長時間かけ続けていた眼鏡を外せば目の疲れがよりハッキリと表れ、そういえば目薬はどこへやったかと考える。


「……そうだ、切らしてたんだ」


丁度愛用していた目薬を切らしていたことを思い出して項垂れる。こんな時間に薬局が開いていないのは分かりきっている分、物凄く悔しい。渋々眼鏡をかけなおしてふと窓の外を見ると、最近出来たばかりのコンビニが目にはいった。愛用している目薬がコンビニに置いてあるとは考えにくい。が、この際背に腹は変えられない。
俺は手近なジャケットを羽織って部屋を出た。









「いらっしゃいませー」


時間も時間なだけあって少し眠そうな店員の声が聞こえる。とりあえず目当ての目薬を手に取ってかごに入れる。使ったことのないメーカーのものだが、これしかなかったのだからしょうがない。それから眠気覚ましのタブレットもかごに入れ、ぶらぶらとあてもなくアイスのコーナーへ足を運ぶ。案外こんな時間にも客はいるようで、数人が立ち読みをしたり酒のコーナーをうろうろしている。


「ふぁ」


間の抜けた声が聞こえて思わず声のした方向に首を向ける。そこには、しまったという顔をした背の高い金髪の店員がこちらを見ていた。
まぁ、しょうがないよね。こんな時間にぼぅっと立っているのは辛いよね。頭では分かっているのだが、あまりにも店員の焦った顔が面白かったので小さく噴出してしまった。


「っ!」


かぁっと顔を赤くしたのは笑われたことに対する羞恥心か、はたまた怒りか。どちらかというと前者の方が俺としては穏やかでありがたいのだけれど。後者は後者で悪くないかもしれない。
適当にアイスを選んでレジに向かうと、店員は思いっきり目を逸らしながら小さく「いらっしゃいませ」と呟いた。


「さっきは笑っちゃってごめんね」

「……別に、気にしてないッスから」

「あはは!そう言う割には顔赤いよ?」

「…っ!……2110円、です」

「はいはーい」


がさがさと乱暴に袋に商品を詰めている姿を見て、これは接客としていただけないなぁと思いつつ、つり銭の無いように料金を支払う。それを受け取った彼はゆっくりとレジに金額を打ち込んでレシートを渡してきた。なるほど、彼は不器用なのか。


「えーっと、平和島静雄くん?」


名札に書いてある名前を呼ぶと、不機嫌そうにようやく目線を合わせてくれた。


「………何スか」

「これ、君にあげるから眠っちゃ駄目だよ?」


ぽいっと袋から取り出した眠気覚ましのタブレットを投げると、慌てた様子でそれを受け取る彼にまた笑いがこぼれる。


「俺さ、この近所に住んでるんだ。だからまた来るね」

「…………」

「そんな迷惑そうな顔しないでよ。君は店員で、俺はお客様なんだからさ。じゃ、お仕事頑張ってねー」


結局彼は俺が出て行くまで何も言わなかった。きっと今頃俺の後ろでは眉間に思いっきり皺を寄せた彼の顔があるんだろうなぁ。そして今の俺は新しい玩具を見つけた子供のような顔をしているのだろう。右手に下げた袋を一瞥して、もう一度彼の顔を思い出す。


明日も同じ時間に行けば彼に会えるのだろうか。

そう考えると足取りが軽くなって、俺は上機嫌でマンションへと帰宅した。







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昔書いていたものをサルベージ
もうちょっと手を加えればよかったかなと思いつつ、その場つなぎの更新
いつか書き直します
金額はもちろん適当です


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