それでもいいよ、幸せだから



・シズちゃんがいつも以上に別人です
・バレンタイン話の静雄さんはいません





今までこういったものに縁がなかったのが悪いんだ。


だから俺は朝から散々な目に遭う羽目になってしまったんだ。



だから、まぁ………結局のところ俺が悪いんだよな。畜生。












なんだか息苦しいと思って飛び起きてみればこれだ。


「シーズちゃん。今日が何の日か分かるかな?分かるよね?分からないなんて口が裂けても言わせないからね?」

「……………」


何だ。どうした。何が起きた。何故笑顔の臨也が寝起きの俺にまたがってるんだ。ていうか何でこいつはこんな朝早くに俺の家にいるんだ。昨日は泊まってねぇだろ。
枕元の時計を見ると針は5時ちょっと過ぎを指している。……まさかとは思うが、始発に乗ってきたんじゃねぇよな。


「あ、そうそう。俺まだ何も食べてないんだよね。シズちゃん何か作ってよ」


何だこいつは。まだ俺が何も把握していないうちに好き勝手言いやがって。…今日?何か特別な日だったけか。携帯のディスプレイを見てガシガシと頭を掻く。3月15日だろ?



…………3月15日?


……………ん?




「……………あ、」

「どうしたの?シズちゃん」


臨也がいつも以上に胡散臭い笑顔を浮かべている。…いや、違う。経験上この笑顔は怒っている時の笑顔だ。しまった……!最近あまりにも忙しくてホワイトデーのことをすっかり忘れていた……っ!この笑顔はもしかしてもしかすると俺が忘れていたことを知っている上での笑顔だな。やべぇぞ……ただでさえバレンタインの時は結局ろくな物を渡せなかったんだ。ホワイトデーはなんとか挽回しようとしていたのに、まさかこんな……。


「俺、シズちゃんがバレンタインの時に言ってくれた『ホワイトデーは手前の言うことなんでも聞いてやる』っていう言葉信じてるからね。忘れてたなんて言わせないからね。でも俺のだぁーい好きなシズちゃんのことだから忘れるなんて馬鹿な真似、するわけないよね?」



「ねぇ、シズちゃん……?」




畜生、俺の馬鹿野郎。












「あ、俺あれがいい!シズちゃん取って!」

「あぁ?…だから俺、クレーンゲームやったこと「え?何か言った?」

「………何でもない、です」


腕にしがみついてるこいつは心底楽しそうに俺の顔を覗き込んでくる。ぱっと見は可愛い笑顔なのだ。惚れた欲目を差し引いたとしても可愛い笑顔なのだ。



俺の脇腹にナイフを突き立てていなければ、な。



「俺あのストラップがいいなぁ」

「……………」


結局、俺は慣れないクレーンゲームで原価以上の金を使って取る羽目になった。いや、むしろ取れてよかった。取れなかったらイライラしてゲーム機を壊していたかもしれない。そうなってしまえば弁償金は馬鹿にならないだろうからな。……あとまぁ、臨也が嬉しそうに笑ってるならいいか。
ちらり、と隣を見ると嬉しそうにストラップを眺める臨也がいた。ご丁寧に俺との腕は組んだままだ。


「まさか取れるとは思わなかったよ。ありがとう」

「……あぁ」

「次はプリクラ撮ろうよ!で、その後どこか美味しいお店でご飯食べようよ」

「………あぁ、そうだな」


果たして、俺の財布の中身はどうなるのだろうか。あまり想像したくないな。

臨也が適当なプリクラ機を見つけて金を入れる。勿論、俺の金だ。俺はというとやけに明るい照明やテンションの高ぇナビゲーターの声に内心びくびくしていた。まさかこの歳になってプリクラを撮るなんて思いもしなかったからな。


「設定は適当でいいや」


そう言って臨也が画面を触っているが、俺には何をしているのかさっぱりだ。ただ、臨也がこっそりカップルモードというものを選択していたのにはうっかりときめいた。


「はーい。じゃぁ、シズちゃんは機械の指示に従ってポーズとってね」

「従わなきゃいけねぇのか?」

「当たり前じゃん。何のための指示だと思ってんの?」


正直、嘘くせぇ…。でもここで反抗すればもっと酷い目に遭うことを俺は知っている。それに、何でも言うことを聞くといったのは他でもない俺自身なのだ。今日くらいは臨也の言うことを快く聞いてやってもバチは当たらねぇぞ俺。



『じゃあ最初はぎゅーって抱き合って大好き☆のポーズ』



無理だ!!!!


このナビゲーター野郎め今何て言いやがったんだ!?だ、だだだ、大好きのポーズ…だと…!?出来るわけねぇだろうがっ!


「ほらほらシズちゃーん。ちゃんと指示には従おうね?」


両腕を差し出して抱きつかれるのを待っている臨也を見て言葉が詰まる。更にカウントダウンなんてのも始まってしまい、俺は大パニックだ。ちょっと待て……まじか。



『3』

あああ待て、ちょっと待ってくれ!

『2』

まだ心の準備が!

『1』

くっそ…!こうなりゃやけだ!


ぎゅっ


カシャッ


画面に確認の映像が映し出された。…あれがシールになるのか……いろんな意味で羞恥プレイだな…。早く終わってくれ…!


『次はらぶらぶなチュウをしちゃおーう☆』



出来るかっっ!!!











「次は何か食べに連れて行ってくれるんだよね?楽しみだなぁ!」

「………」


臨也の手にはさっきのプリクラがしっかりと握られている。いや、まぁ、臨也は可愛かったけどよ…そういうことしてる時の自分の姿っていうのは見れたもんじゃねぇよな…。


「はい。これはシズちゃんの分!」


差し出されたのは半分に分けられたプリクラシートと、さっき俺が取ってやったストラップ。…え?ストラップ?


「あ?これ、俺がとってやったやつじゃねぇか。いらねぇのか?」

「違うよ。これはペアストラップだからこっちはシズちゃんの分。ちゃんと携帯につけといてよね」


俺とお揃いだから!と、自分の携帯を見せて笑う臨也は今日一番可愛かった。くそっ…!今は耐えてくれ俺の理性!にしても、機嫌が直ったようで本当によかった。俺が約束を忘れてた上に楽しくないなんてことになってしまえば、それこそ申し訳が立たねぇからな。


「あー…あのよ、臨也」

「ん?何?」

「飯はよ、俺の家で食わねぇか?」

「え?」

「手前がくれたバレンタインのチョコ美味かったから、俺も何か食べるものを作ってやりてぇんだよ。駄目か?」

「あ……そっか。なんだ、そういうことね。…うん、いいよ!」


何かぶつぶつと呟いていたが、気にしなくてもいいだろう。
帰ったらとびっきり美味いものを作ってやろう。
それから、日付が変わるまで存分に言うことを聞いてやろう。
一日遅れとはいえ、今日だけは気持ち悪いぐらい優しくしてやるよ。




来年も手前と一緒にいれるなら、俺は何だってしてやれる。






(勿論俺がメインディッシュだよね?)

(!!!??)





********



うpしようかどうか1日中悩んだ末、勿体ない精神が勝ってしまいました…orz
まとめが浮かばなかったんです…これは凄いgdgd
誰かタイトルのセンスください……

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