君の匂いにメルトダウン





「シズちゃんの匂いがする」


後ろからくんくんと犬みてぇに人の首筋に顔を埋める臨也の頭をくしゃりと撫でる。サラサラと指をすり抜ける綺麗な黒髪を弄って遊んでいると、顔を埋めたまま「ねぇ、」と喋られて首がむず痒かった。


「シャンプー変えた?」

「あー…変えた、かも」

「…何それ。どっちなの」


構ってよと言わんばかりに後ろからぎゅっと抱き締められ、首元にあった臨也の髪からふわりと良い匂いがした。


「手前こそシャンプー変えたのか?」


これだけサラサラなんだ、きっと有名美容師御用達とか何とかいう高いシャンプー使ってんだろうな。コイツそういうのにこだわりそうだし。
もぞっと臨也が顔を上げた。


「もしかして今まで気付かなかったわけ?…はぁ……鈍感」


わざとらしい溜め息を吐いて俺の正面へのそのそと移動してきた臨也を股の間に向い合わせで座らせる。少しむくれ顔の臨也がもう一度溜め息を吐いて俺の髪に指を通した。


「…せっかくシズちゃんとお揃いにしたのになぁ」

「…あ?何をだ?」

「シャンプーだよシャンプー。…ホントに鈍感なんだから」


ついにはぶすっと拗ねてしまった臨也の髪にキスを落とす。ふわりと香ったフローラル系の香りは言われてみれば確かに俺が前に使っていたもので、そのことに何とも言い表し難いこそばゆい気持ちになる。
こちらを向かせるべく「拗ねんなよ」と言えば「拗ねてない」と顔を背けられてしまった。


「おい、臨也」

「………」


相変わらずぶすりとしている臨也に今度は俺が溜め息を吐いた。


「ったく…面倒臭ぇ」


そう言って立ち上がれば臨也の目に動揺が浮かぶ。素直になればいいものの、コイツはそういった類いの感情表現が苦手だ。悪く言えばプライドが高い。故にこのように不安気に俺をチラチラと見ることしか出来ない。
……まぁ、それはそれでからかい甲斐があるというものなんだが。


「ちょっと待ってろ」


俺は洗面所へ行ってつい最近買ったばかりのシャンプーを手にとった。買い溜めはあまりしない主義なのだが、今回ばかりは正直過去の自分を少し褒めてやりたい気分だ。


「ほらよ。それやるから機嫌直せ」

「…シャンプー?いいの?」

「たまたま買い溜めしてたやつだからよ、気にすんな」


じぃっとシャンプーを見つめる臨也に「いらねぇのか?」と手を引っ込めれば今度こそ焦った顔を露にする臨也が面白く、内心頬が緩む。


「い、いる!使う!」

「素直にそう言えば少しは可愛いげがあるのによ」

「…うるさいなぁ。……ちょっと、いつまで立ってる気?早く座りなよ」

「え?あ、あぁ…」


耳を赤くした臨也がばんばんと床を叩くので勢いに押されてその場に座る。と同時に臨也が正面から思いきり抱きついてきて危うくぐらりと後ろに倒れそうになった。


「っ、おい!危ねぇだろうが!」


ぎゅううと回された腕に力が入り密着度が高くなるにつれ臨也の体温とか匂いとかやけに早い心臓の音とかがダイレクトに伝わってきて、なんだか俺までもが気恥ずかしい気分がうつりそうになる。


「………シズちゃん、」

「…んだよ」

「……ありがとう、ね」

「……おう」


耳まで赤くした臨也の髪を撫でて、俺は臨也を抱きしめたまま後ろに倒れこんだ。





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室内でイチャイチャしているのとか凄く好きです

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