あざー | ナノ







――…何度、忘れた方が楽だと思ったのか、分からない


数えきれないくらい諦めかけて、数えきれないくらい、あなたをもう一度好きになった。



携帯に表示された時間を見て溜息をつく。


「…また、今日も連絡来なかったな……」


――私のこと忘れたわけじゃないって、分かってる。だけど…




「メールだけじゃ、足りないよ…」



あなたに会いたい。それだけ。



* * *


急なことだった


親の転勤で転校、なんて話はざらにあること。
仕方ないって分かってた。でも、彼と離れ離れになってしまうことだけは、どうしても納得いかなくて、心の中で「これでいいのか」と葛藤し続けた。


それでも時はやがて来る



結局なるがままに、私の転校が決まった。






「毎日連絡するから」

「いいよ、だって亮介忙しいでしょ?」

「サッカーも大事だけど、それと同じくらい…いや、それ以上に名前のことも大事なんだって!」

「…サッカーと比べられても……」

「素直じゃねーな」



クスクスと笑いあう私達。
これが、彼氏――島亮介と最後に会った記憶だ。



「こら島!!
お前がいないと練習にならないだろ!」

「やっべ、勇太さんだ。

見送り行けなくてごめん」

「いいってば。亮介相変わらず過保護だなぁ


瀬古先輩待ってるでしょ?
早く行ってあげて」

「ああ」



亮介が背中を向けて練習に戻っていく。
頼りになる、八千草サッカー部の中心。


その彼は一瞬足を止めると、こちらに向き直った。



「浮気、すんじゃねぇぞ?」



太陽のような笑顔。


そして今度は振り返ることなく、走って行った。





「…浮気なんてするはずないじゃん。
亮介にベタ惚れなんだから」




それからは、毎日のように電話かメールが来た。




午後11時、それが亮介から電話がかかってくる時間。

大概はサッカーのこと。今日は何があったとか、合気道のこととか。

特に何もなかった日でも、亮介と電話するだけで話が弾んだ。





遠距離恋愛が寂しいって何度感じただろう?

楽しいはずなのに、電話する度に、メールが届くたびに、"距離"を感じさせられる。



最近では、忙しいからかおはようとおやすみのメールしか来ない。

それだけじゃ足りないの。
おはようから、おやすみまで一緒にいたい。話したい。





好きだという気持ちは変わらない…でも、このままじゃ、亮介のことを好きでいられる自信がない。
もっとあなたの存在を私に刻み付けてほしい。忘れたくても忘れられない、愛が欲しい。



「自然消滅なんて、嫌だよ…――」



こんな私、我が儘で貪欲




メールよりもその声が欲しい

電話の声よりも、今会いたい



もう待てないの…



「亮介に…会わせて…。このままだと、私がダメになっちゃう……」



膝を抱え込んで、背中を丸める。


ぽたり、と零れ落ちた涙が絨毯に染みを作った。





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