あざー | ナノ




手を繋ぐ。キスをする。愛を互いに呟く。ほら、周りだって羨ましそうにこっちを見てる。きっと恋人同士って思われてるんだよね…間違ってはいないと思うけれど。

「名前、今度は何処に行こうか?」
「どこでもいいよ、マツバと一緒なら。」
「そう。じゃあ何か欲しいものは?」
「マツバの心。あたしだけを見て欲しい。」

ただ思ったことを隠さず真っ直ぐに伝えてやれば、彼はまたいつもの人のいい笑顔を作る。綺麗な笑顔だよほんと、憎らしいくらいに。ジムリーダーで顔も良くて雰囲気はなんだか妖艶なんて、これはモテるのも納得できる。

「いつも見てるよ。僕はいつも君のことを考えてる。だからこうして一緒に居るんじゃないか。」

あたしがどういう気持ちで言ってるのか分かってない?そんな空っぽな甘いだけの台詞が聞きたい訳じゃない。こんな軽い男に惹かれる女って一体何を求めてるの?彼が今まで酔わせてきた全ての女性に教えてやりたい。離れるべきだ、って。それは自分にも言えること。寧ろあたしが一番理解しなきゃいけないこと。

「簡単にそんなことを言わないで。」
「だって本当のことだし。好きだよ名前?愛してる。」

肩を引き寄せられ、顔と顔の距離が縮む。惑わされるな。ただの言葉、音じゃない。分かってるのに。なのに、何もかも見透かしてしまうような視線、落ち着く体温。彼の全てに執着してしまう。どうしてあたしが一番じゃないの?好きだなんてあたし以外には言わないで。

「………マツバ。」
「ん?」
「お願いだから、絶対、絶対に何処へも行かないでね。」
「あぁ、もちろん。」

そう言い合って静かに唇を重ねる。例えあたしは特別じゃないと分かっていても、お決まりになってしまったこのやりとりにひどく安心する。おかしい、危ない、狂気だと分かっていても離れられない。どうか一緒に居るときだけでも、特別なんだと思わせて。
















(辛さと孤独を感じる度に、あなたを想わずにはいられない。)炉稀さまより相互記念。ありがとうございました!


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