(チョコに融かした恋心)
※未来
今年のバレンタインは最悪だ。ツイてない。右京と喧嘩するわチョコレートは失敗して焦がすわ鷹匠さんに絡まれるわ。最悪だ。特に右京と喧嘩したのが一番痛い。
喧嘩の発端は些細なこと。本当にどうしようもないことで私があそこでムキにならなければ良かった。 なんて今更後悔してももう遅い。あの時は完璧に右京の方が悪いって決め付けて私ってば最悪だ。本当私の馬鹿。
「…謝ろう」
もう一度チョコを作り直す為に抱えてた膝を戻してキッチンに立つ。今からじゃ、簡単なものしか作れない。けど、ほら気持ちが大事だって言うし。 って、そんなこと言ってる場合じゃない。シャカシャカと手を動かした。
やっば!思った以上に時間が掛かってしまった。急いでラッピングを施し、家を出て右京の住む一軒家まで走る。すぐ近くのはずなのに人の波を掻き分けて走ると凄く遠く感じる。
早く、早く、早く!
早く会いたい。右京に会ってごめんねって私が悪かったよって謝りたい。
横を過ぎ去る街のネオンも信号も全てが私の邪魔をしているような気さえした。
肩で息をしながら、世良家のインターフォンを押した。 ガチャリと音がして、ギィとドアが開く。
「はい、どちらさ「右京っ!」
右京の姿を見た瞬間に愛しさが溢れてその身体に飛び付いた。突然の衝撃にも倒れずにちゃんと受け止めてくれるのはさすが右京だ。
「名前…?」
少し驚いたような顔をしている。(右京にしては珍しい。)それも構わず、ガバッと顔を上げてまくし立てた。
「右京!ごめんね!あたしが悪かった!これ、バレンタイン!」
先程作った包みを鞄から取り出して、右京に向かってぐいっと突き出した。
「遅いよ」
そうすれば右京は少し笑って抱きしめ、優しく私に口づけた。 私達のバレンタインはまだ始まったばかり。
happy Valentine!:) word:a course 右京さん一筋なヒロインちゃん。鷹匠さんはちょっと苦手ちゃんの設定。 (120214)
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