(知らず知らずの恋)
同じクラスの島は格好良い。見た目は少しチャラいかもしれないけど、その容姿は確かに申し分ないし、性格は明るくて良いし、サッカー部だし(しかも超上手い)、世代別代表に選ばれてるし。ほんと私とは正反対。私なんかはしがない女子高生であって、別段頭が良い訳でもなければ、可愛い訳でもない。 島とは一年のときに同じクラスになっただけで全然仲良い訳でもない。なのに、
「名字!部活ー」
なのに何故私はサッカー部のマネージャーなんかやってるんでしょうか。いや、入部届なんか出してないし、やるとか言ってないし!なのに毎日毎日島はホームルームが終わると私を迎えに来る。これは私に対する新手の虐めなの!?ねえ!あぁ、今も島ファンの女子に睨まれてるよー怖いよー。 来るなって主張してるはずなのにさらりとそれをスルーして近付いてくる島よ、空気が読めないのか。寧ろ読む気がないのか。
………こいつのことだから読む気ないよね、絶対。
「部活遅れんぞ」
「いや、うん、はい」
腕をグイグイ引っ張っていく島を振り切れることなど、男と女の差は歴然。到底出来やしない。 最近はもう抵抗しても無駄なことを学んだので引っ張られながら、グラウンドへ向かった。
マネージャーの仕事をしながら、プレー中の島を盗み見る。うーん、格好良い。格好良いから困る。 それにしても何で私をマネージャーにしたんだろう。マネージャーやりたい子はたくさんいるはず。一年のときに島にサッカーが好きかと聞かれ、好きな方って答えたのが悪かったのか。 島にマネージャーを頼まれたとき、友達が「島、名前のこと好きなんじゃない?」とか言ってたけど。島が私を好きとか、いや、ないない。そんな。明るい島とどっちかっていうと大人しめグループの私だもの。そんなの、
「名字、」
「え?あ、休憩?ごめん!ぼーっとし」
「俺、割と本気で名字のこと好きなんだけど」
はい?誰が?誰を?好き?っていうかいきなり…そんな。
「気付いてもらえてなかったとかショック」
「えっと、ごめん」
少し悲しげに揺れる島の瞳を見たら、咄嗟に謝罪の言葉が口から突いて出た。 でもすぐに島らしい笑顔に戻った島は私を指差し、捨て台詞を吐いてグラウンドに向かっていった。
「絶対俺に惚れさせてやんよ!」
その一言にドクンと胸が高鳴った私は案外もう島が好きなのかもしれない。
八千草のマネージャーになりたい。 (111210)
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