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以前食事処へ行ってから出会うこと最早両手では足りない程の回数。あの日、又兵衛の偏食、少食具合を心配したのか会う度に#名前#は食事へと誘ってくる。又兵衛自身、特に用事もなく#名前#と行く料亭は何処も外れが無いので断れず毎回行ってしまう。
この日もまた#名前#と又兵衛は遭遇した。


「あ、こんにちは後藤様。ちょっと今、手が離せないので今回は……、うわっ」


晴れやかな笑顔を浮かべて何時もより随分と視線の低い#名前#が軽く頭を下げる。草鞋が切れてしまったのをどうにかしようとしゃがみ込んでいるのだ。
そこに又兵衛は無言で右手を掲げ彼女の頭を上からぐっと抑え付ける形で沈めた。


「…#名前#さんさぁ、もっと女の子みたいに可愛いらしーいぃ声は出ないんですかぁ? つまんねぇ」


ぐっ。ぐぐっ。何度か地面の方へと揺らす。


「えっちょっまっ、わわっ!」


頭を強制的に下げられたため、堪え切れずぐらりと前に揺らぐ#名前#。咄嗟に出された両手が地面に着く前に#名前#の腰に何かが巻き付き、そして全身を浮遊感が襲った。


「おれ様にばっかり食え食え言ってましたけどぉ、十分#名前#さんも軽ぃじゃねーか」


それは又兵衛の腕だった。細く見える割には意外と力があるらしく悠々と小脇に抱えて歩き出す。不安定に揺れる体に遠慮する暇も文句を付ける隙もなく、落ちるまいと#名前#を抱える腕にしがみ付く。



「…持ちにくい」


案の定、十歩も歩かぬうちにしがみついてくる#名前#へ文句を付けてくる。


「で、では下ろして下さいって!」

「うるせぇから黙っとけよ木偶がさぁ」


ぐいっと再び体を持ち上げられる感覚が来た。腹に食い込んでいた腕が背中を支える形になり、膝裏にももう一つの手が差し込まれる。
所謂横抱きだ。


「えっちょっ」

「何か文句でもありますぅ?」

「…初めて食事に誘った時はあんなに照れていたというのにこの抱き方は恥ずかしがらないんですね」

「はぁっ!? ははは恥ずかしがったことなんざねぇよ!」


本当に、横抱きをしていること自体は恥ずかしくないようだ。この様子だと下ろしてくれと言い続けるとあっという間に不機嫌になるだろう。
はあ、と溜息を吐き少しでも安定感を求めようと又兵衛の首元に腕を回す。びくり、と彼の細い首が震える。


「後藤様…ありがとうございます」

「…ま、精々又兵衛様に恩を感じることですよ。こんな木偶にオレ様が触るなんざめったにないんだからなぁ?」










後書き
短めに。
穏やかめな又兵衛様でした。

140218

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