Main
First:≫Main:MemoLinkClap;re

「もし、そこの猫の背中のようなお方。そちらへ進んでも野川と山しかありませんよ。みたところ奥州に向かっているのでしょう、ならばこちらを道なりに進むといいですよ。半刻もせずに村に出ます。そこでまた地図を確認することをお勧めします」





「あら…奇遇ですね、覚えていますか? ……ああそれは嬉しい。その時は迷っているか否かの確認も取らず、失礼致しました……ところでどうやら怪我をされているようですが大丈夫ですか? どうか私に見せて頂けませんか、気になって気になって仕方ないのです。薬ならさっき薬草の群生を見つけたのでそこで調合致しましょう。ついでに覚えてもいいかもしれませんね。そうそう、私は根無し草の薬師なのです」





「…これは、なんとまあ。偶然にしても出来過ぎでしょうに。まさか三度目の遭遇になるとは。また機会があるかもしれませんし名前を伺ってもいいですか? 私は#名前#と申します。心の片隅にでも置いて頂けると嬉しいですね。前回の怪我は快癒なさいましたか? それは重畳。……あ、これはこの町名物、数量限定生産団子です。あと残り四つというところで、つい四つとも買ってしまったのですけど一人じゃ食べきれないんですよ。後藤様、もしお嫌いでなかったら如何ですか?」





「…最早これは何かしらの縁があるのでしょうね」










後藤又兵衛が#名前#という女に会うのはこれで四度目だ。遭遇する場所が限定されているならタイミングが偶々合うだけ、と言えないこともないのだが、どうも偶然だとかそういう類いのものではないらしい。
会うのはいつもの装備を外して浪人風の姿で外に出ている時ばかり。


「あんた、さぁ。もしかしてこの又兵衛様を恨んでつけてきたりしてるわけ? ねぇ」

「いえ、つけてきているならこうも毎回正面から遭遇はしませんって。殺意でもあるなら薬草をわざわざ目の前で摘んだり毒も入れずに団子をお渡ししません」


どうも不自然だと思ったものの害も無かったので放っておいたが、どうやら目の前で『毒を混ぜてはいない』と主張するためだけに来た道を戻って共に薬草を摘み、調合したようだ。密かに閻魔帳に載せるべきか気にしていた又兵衛としてはそれは早く言って欲しかった。あれから胸の内でよく分からないもやっと感と闘っていたのだ。


「あの団子、うま………ま、まぁ食べれなくもなかった」

「はは、私も食べましたがまた食べに行きたくなる味でしたね! どうやらあの店はタレではなく団子自体に秘密があるらしいのです」


団子談義を始められても…と考えると、それが表情に出ていたようで#カナ#に苦笑される。


「後藤様はあまり食事を好まれないのですか?」


又兵衛の体格をちらりと見回し、#名前#が首を傾げた。聞かれた内容からは『貧相な身体』という含みがあるように聞こえて又兵衛はムッとした表情を浮かべる。


「……別にそんなことねぇよぉ。きみ、まさかさぁ、この又兵衛様がぁ貧弱な身体つきだって言いたんでしょ、ねぇったら、ねぇ…?」


やはりこいつの名を閻魔帳に書くべきだ。懐に手を差し込み目的の物を掴んだ時、#名前#が慌てて両手を横に振る。


「ち、違います。この先に良い食事処があるのです。共に行って頂けませんか、と誘おうと…」


又兵衛が目を見開く。左手も掴んだ閻魔帳から離れる。
#名前#は、大胆な誘い方をして仕舞いましたと苦笑して細く器用そうな指を伸ばして頬を掻く。


「…えぇ? おれ様と、キミで? 今?」

「はい、後藤様と、私で、今からです。女一人では入りにくいので……ああでも、無理にとは言いません」


お忙しいのに邪魔しました。
まだ又兵衛は返事をしていないというのにペコリと頭を下げた#名前#。その旋毛を見つめ、はああと大きな溜め息を吐く。懐から出した左手を軽く握り締めすっくと背をまっすぐに伸ばす。そして上がる直前の頭部へと軽く振り下ろし、への口をして明後日の方向を向く。


「仕方ないからさぁ、いってやりますよぉ」


背をピンと伸ばしたのは熱くなった頬を相手から遠ざけて見えないようにするため。
しかししっかりとした姿勢になれば又兵衛は中々に身長もある、つまり自分より背の低い#名前#からなら十分に傘の下の顔が見えるのだ。
#名前#の見上げたその頬は朱色に染まっていた。


「(顔色が悪い方なのでちょっぴり不気味ですね)」


又兵衛に相手の考えていたことを読み取る力が合ったら閻魔帳上位十位以内に彼女の名前が刻まれたであろう。
口に出さなかったのは賢明な判断だった。










後書き
デレ始めの又兵衛様までです。
この人喋り方ぎ難しくてまだ勉強途中なのですがもう好き過ぎて書いて仕舞いました。
又兵衛様好き…可愛い…ドラマストーリーも戦国創世ストーリーも好き…。

140209

prev next


Bookmarknamechange

 
Since.2011/07/29
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -