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「ナイトレイ?」
先程まで背後に感じていた気配が途絶えた事に気付き、ショックウェーブは不審そうな声を出して振り返った。
一瞬広がる視界にナイトレイが居ないのはその体格差故に当然。しかし単眼を下げていつもの位置を認識してもまだナイトレイは居ない。
流れに逆らう事無く、ショックウェーブは床を見、そして顔を真っ白にして蹲る女性を視界に入れる。
「ショックウェーブ…だ、大丈夫…だから………」
無理に微笑んだナイトレイに全てを言わせる前にショックウェーブの手がナイトレイを抱き上げた。
がっちりと自分を支える二本の腕や間近に感じる彼のスパークそして赤く光るカメラアイ。いつもは冷静に周囲を見渡している単眼が真っ直ぐナイトレイだけを心配そうに見つめている。
目を見開いてから自分が横抱きされている事に気が付き悪かった顔色を微かに赤らめて降ろしてと慌てて抗議する。
駄目だ、とショックウェーブが首を横に振った。
「機能に支障をきたしているな。自覚症状はあっただろう、何故私に相談しない」
「すまない…自己修復機能でなんとかなる範囲だと思ったんだ」
「次からは報告しろ。…取り敢えず、リペアルームに連れて行く」
リペアルームと聞いてナイトレイは焦りの表情を浮かべた。リペアルームには今、二人の悪魔がいる。そんなところに行けば今の身動きの取れない状況では、女だろうと容赦なく(片方は女だからこそ興味深いと言いながら)バラされてしまう。
顔色を更に悪くしたナイトレイに気付いて、ショックウェーブが
安心しろ、と囁く。
「あのヤブ医者共はそれぞれの主人の所にいる。私がリペアしてやる」
「ほ、本当?」
「ああ本当だ。マジ、だ」
「マジ…って」
「オートボットの喧しい双子が使っていた。違和感でもあるか?」
「違和感しかないよ。鳥肌立つから出来ればやめて欲しいな」
「立つ肌も無いというのに」
軽口を叩きながら歩けばリペアルームもあっという間にセキュリティを突破してキーにアクセスした。サウンドウェーブやフレンジーには及ばぬとはいえこの程度なら簡単だ。
無防備とも思えるセキュリティに内心首を傾げながら足を踏み出して扉が開く。
しかしその先に恐怖はあった。
「やあ二人とも。中々面白い会話をしていたようだね?」
「ショックウェーブ、無論ワタシではないよねェ? ヤブ医者とは」
「ああ勿論だともドクター。一体誰がそんな非道い事を言ったんだろうな」
オートボットの医師がその手に装着された丸ノコを回転させ、その肩に乗ったディセプティコンの医師が両手で黄緑色に光る液体の入った瓶を掲げていた。
今までの会話をどうやって知ったのかは不明である。
どうにか死亡フラグを回避してナイトレイを降ろすと舌打ちが聞こえた。
「なになに、体調不良だとな? 仕方ない開腹手術をするしかなかろうよ。ワタシ直々に」
ナイトレイが座り、ラチェットが座り、向かい合う。そのラチェットの後ろに控える形でショックウェーブは立っている。
頑張れとショックウェーブの無言の応援を感じ取りながらナイトレイが症状を説明すると、目を輝かせたドクターがラチェットの腕伝いにナイトレイの身体へ飛び移った。
カサカサと這い回られる感触に悲鳴を上げ叩き潰したくなる衝動を堪えてラチェットに救いを求めんと向く。
「「…え?」」
ナイトレイのボディをスキャンしていたラチェットと、ナイトレイのボディのあちこちをコンコンと叩き回していたドクターが同時に声を裏返す。
「何か不都合があったか!?」
二人の異常な反応に動揺したショックウェーブがナイトレイに駆け寄るとドクターはゆっくりとナイトレイの身体から降りて二人に向き直る。
「その…キミ達は所謂、恋人同士だったかね?」
突然、謎の質問がされた。
「ああ」
「そうですね」
疑問に思いながらも肯定すると、ドクターは忙しなく前足を擦り合わせたり無意味に床を引っ掻いたりと無意味な行動を繰り広げた。
「成る程…所でキミ達、どこまで行っているのかな?」
「質問の意図が分からない」
バッサリとショックウェーブが切り捨てる。
「その…二人の距離を縮めるような………お、雄しべと雌しべ的な………」
「要約すればもう交尾済ませているかどうかということだ」
「ちょ、突然何を言うラチェット!」
「当然だろう」
「ショックウェーブッ!」
モジモジしたドクターは会話を完全にラチェットに任せる事にしたようだ。
顔の色を白から赤に変えてナイトレイが食ってかかるが聞き流す。
「では、最近ボディに犬でも住まわしていない」
「当たり前だラチェット。…さあ結論を言ってくれないか!?」
冷静な二人に自身も落ち着きを取り戻しナイトレイが遂に核心を尋ねた。
にっこり笑ってラチェットが立ち上がりオプティマスとメガトロンへの通信を入れる。
「おめでとう。ナイトレイ、そしてショックウェーブ」
「…何?」
『どうしたラチェット、先程の件ならまた後日にしようと連絡した筈だが…』
『何用だ軍医。俺は今愚か者に制裁を加えるのに忙しい、手短に言え』
「ナイトレイのボディから微かに生体反応が見受けられる。勿論、彼女以外のだ。手短に言うなら、妊娠しているようだ」
「は、」
『な、』
「えっ」
『ショックウェーブ。後で私のところに来い』
後書き
司令官怖い。
だってナイトレイさんの父親ポジションでしたから。
ポイントは性的な事を恥ずかしがるドクターです☆
リクエストありがとうございました零牙様!!
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