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「こういう、二人で二人の物を買いに行くって新婚みたいだね」

「…そうか?」

「そうよ」

「じゃあ新婚ついでにコレ鞄に入れといてくれ」

「携帯? 相変わらず持ち歩くのが嫌いなのね」


よく分からないが、確かに悪くない。
そして携帯など必要ない。
部屋に鍵を掛けてフロントに預けると、受付にいる女がやけに笑顔で私達を見ている。
視線を辿ると、私の手を握ろうか握るまいか悩むように彷徨うカレンの手が目に入る。私から手を握ってやると、驚いたように私の顔をまじまじと見つめてからはにかんだ。
受付にいる女は笑顔で私達を送り出した。


「…ショックウェーブから繋いでくるなんて珍しいね」

「お前がこうして欲しそうだったからな」

「ありがとう。でもそこは、俺が握りたかったからだぜとか言って欲しかったなぁ」

「…お、」

「ごめんそのまま繰り返されても虚しいだけだから」


手を繋ぐと、自然と歩調もカレンに合わせる形になる。
隣に並んで彼女と同じペースで歩く。
コレは守らなければいけない存在だ、と改めて認識した。





デパートはいろんな人間のいろんな臭いが入り交じりとても不愉快だ。
自販機の隣にあったベンチに座って不満を零すと困ったようにカレンが笑う。唐突に立ち上がって私の目の前に移動すると、私を暖かい感覚が包み込む。


「じゃ、私の匂いだけに集中して」


その小さな背中に腕を回し、抱きしめ合う私達は他人にとってさぞうっとおしかっただろうなと考えた。
再び手を繋いで歩き出す。










後書き
淡々と甘い。

121116

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