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まだこのまま、と思いつつ明るさに負けて目を開くとカレンが目の前で微笑んでいた。美しい、とその頬に手を伸ばしてゆっくり肌を撫でると恥ずかしそうに瞬く。


「おはよう、寝坊助さん」

「ああ、おはよう。…ところで昨日、私はベッドに入った覚えがないんだが」

「当たり前よ。ショックウェーブったら廊下に転がって気持ち良さそうにぐうぐう言っていたんだから。あの後私がどれだけ頑張ってベッドまで運んだか…」

「それは悪かった」


柔らかい掛け布団を退かして立ち上がり着替え出すが微塵も気にせずベッドからカバーを外している。どうやら洗濯機に放り込んでから干すつもりらしい。
以前私が「万年床で構わない」と思いやりで言ったら怒り出した挙句泣かれて困ってしまった時もあったなと考えつつ普段着になった頃戻ってきたカレンは扉を指差す。


「先に行ってて」


どうやらこの女、朝ご飯まで用意していたようだ。
畳に広がる私の衣服を拾うカレンを残して、欠伸をしながらそちらに向かうと腹を刺激する香りがする。気が利く、私の好きな和食か。


「たまには、な」


一人で呟きながらスプーンではなく箸を二膳取り出し、茶碗に米をよそい終わった頃にカレンは姿を現した。


「あ、珍しい」

「狙ったようなタイミングの登場だ」


鼻で笑われた。


「まさか貴方が手伝うとは予想出来なかったわ」


失礼な一言に憤慨しながら席に着く。
食事中は無言が私達の基本だった。黙々と箸を進めると、口に広がる食感に軽く目を見開いてカレンを見つめる。


「なにか?」

「…いや。料理が上手くなったものだ、と」


初めて彼女の料理を食べたときは苦しくて碌なアドバイスも出来なかった気がする。そう言ってやるとそうだったかしらと惚けられてしまった。
机の上を整頓するカレンを眺めていると不意に、今更な疑問が浮かんだ。
彼女は違う土地でアパートに住んでいる筈。


「お前、そういえば何故この家に居る」

「何それ酷い、私のことは遊びだったのねっ!」


わあっと顔を抑えて蹲るカレンの目には勿論涙何て浮かばず、口元に弧を描いている。
乗ってやろうと口を開く頃にはケロリとした表情で、私の右手を掴んで言った。


「海に行こうよ」


さて、今日の予定は決まったようだ。
愛しい女の輝かしい笑顔を前に私は異論など唱える事が出来る筈もない。










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