Main
First:≫Main:MemoLinkClap;re


「おい」


振り返った時、カレンの視界には私は写っていなかっただろう。
きっと収まっていたのは私が顔すれすれまで寄せて渡したソレのみ。


「…きねんび?」

「…まあ」


今日は、二人の関係が一年続いた記念日だった。
渡したのは適当にしてくれと依頼した花束。
顔をくしゃくしゃにしてカレンが笑って立ち上がる。


「私からも」


私に渡された箱の中には一対の首飾り。


「ペアで付けようよ」


若いなと思いつつ、断る必要もないので甘んじて受け入れる。お互い付け合うのも意外と悪くない。
その後移動して海に突き出たコンクリート造りの棧に座って無言の時間が過ぎた。不意に立ち上がってカレンが笑う。


「本当に、ありがとう」


そう微笑んだとき、強い風が吹いた。風はカレンのスカートを大きく膨らませ、カレンは髪が乱れるのを感じて頭部に片手を回す。もう片方の手には花束を抱えていたので広がるスカートを抑えることは出来ない。

今、言葉が詰まらなかったらきっと私は…。
考えないフリをして、カレンに下着が見えたぞと冗談を言うことで、気が付かないフリをした。





人間姿での仮住まいはすっかり彼女の色に染まっている。
アパートにカレンを送り、私一人になると何故かスパークに穴が開いたような気分になる。これが寂しさというものなのだろうか。
そういえばカレンに携帯電話を預けたままだった。また明日、カレンが家を出る前に私が行って受け取ればいいだろう。
嬉しいような嬉しくないような複雑な気持ちで風呂に入り、衣服を洗濯機に投げ込むと嫌な気がした。
気の所為だろう。そう言い聞かせ椅子に腰掛けて情報収集の為にとテレビを点ける。










121116

prev next


Bookmarknamechange

 
Since.2011/07/29
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -