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彼は窓辺で静かに空を見上げていた。
不思議と凪いだスパークは常なら破壊を好むメガトロンにとって不快なものだが今日はそうでもない。


「メガトロン様。此方にいらっしゃいましたか」


この優秀な部下にチップを託したとの知らせが届いたとき、とても奇妙な気分になった。
振り向いてトールの正面に立ち、穏やかな心持ちのまま右手で覆っていたちっぽけな有機物を差し出す。


「トール…俺が最後になったが…受け取れ」


それは見事に真っ赤な薔薇だった。
唐突だったから焦ったがブラックアウトに命じて最高の花束を用意させたものだ。


「メガトロン様、」


突然の出来事に動揺し、唖然とトールはメガトロンを見上げる。


「花言葉は愛。まあ今更こんなもの渡さんでも分かっていると思うがなぁ?」

「そ、れは…単なる部下としてでしょうか…」


震える声で尋ねればメガトロンは顔を顰める。


「愚か者めが…特別に決まっておろう! 貴様以外の誰にもやらんぞ」

「へ、」

「勿論トールも俺の事が好きだろう」


もはや疑問形でもない。
自信満々なメガトロンを呆然と見上げその言葉の意味を漸く理解したトールはブレインサーキットが高速回転し始め熱を持つ。
ふしゅうと音を立てて赤くなったトールの顔を愛おしげにメガトロンの鋭い指先がなぞる。


「メガトロン様の…お心のままに…」


漸くトールはそんな一言を返した。
だが彼女の想像とは裏腹に目前の破壊大帝は不満げに排気し二人の距離を詰めて来る。


「そんな答えは許さん」

「え…あ、」


そうだ、アレを渡さなきゃ。
混乱したまま咄嗟に近付くメガトロンの顔の前にアレを差し出した。


「何だ…人間の栄養源か?」


強引に迫ろうとしたところを邪魔された彼は不機嫌であるが、差し出したその赤い実を素直に受け取る。
そして即座に何なのか検索を掛ける。


「そ、それが私の気持ちですっ!」


イチゴ。
花言葉は、尊敬と愛。
花ではなく実であるが。


「…クク………粋なものを選んだな」

「主君として尊敬も致しておりますがその、あの…そういう感じの意味でもお慕いして、ます」


可愛い告白に我慢の糸が切れたメガトロンはトールを抱き締め、その大きな身体は完全にトールを覆い隠す。
おずおずとトールが背に手を回すとメガトロンは


「誘っておるのか…?」


と低い色気のある言葉をトールの耳元で囁く。
ついと顎を掴み顔を寄せていき、あと少し。


「…っもう我慢出来ん!」

「ちょ、アンタなに叫んでるんですか!!」


あと少しというところで、完全に二人きりだと思われた世界を泣き声混じりな低音が破壊した。
メガトロンが鋭い目でその声のした先を向くと同時に、誰かに見られていたという羞恥心にトールが失礼しますと叫んで腕の中を抜け、トランスフォームしながら走り去る…さりげなく、ショックウェーブに託されたチップを彼の手にねじ込んで。
逃がしてしまったメガトロンの赤い目がギラギラと殺意に染まった。


「オプティマスゥ貴様ぁぁ!」

「私の目が青い内はトールと破廉恥なことはさせんぞ! 覚悟しろメガトロン!」


そして乱入者オプティマスの青い目も怒りに発光していた。
数少ない懐いてくれるディセプティコンをいつの間にか娘のように想っていたようだ。
ニヤニヤ見守る予定だったレノックスが危うげな足取りで数歩歩き、膝を付く。
背後に立つオートボット達は気まずそうだったり楽しそうにそれを眺めた。


「オプティマス…ああ…部屋が…」

「あー、レノックス……アレだ。オプティマスは今、お前にとってアナベルが嫁に行くのと同じくらいのショックを受けているんだ」


アイアンハイドが大きな図体を小さな人間に合わせて丸め、レノックスを宥めている。


「やっちまえ司令官!」

「あ、右だぜメガトロン!」


双子は笑いながら面白半分にオプティマスとメガトロンを囃し立てる。


「ふむ」


ラチェットにはディセプティコンがドタドタ駆けて来る音が聞こえた。そしてぎゃあぎゃあ言い争う声も。


「おのれ折角のメガトロン様の告白をよくもオプティ、」

「どけぃプロペラめ! トールという可愛い孫を渡すかぁぁぁ!」

「がふっ!?」

「誰が貴様の孫だ老いぼれたスクラップよ!」

「なんだとお主もたいして変わらぬわ! ええいオプティマス、合体じゃ!」

「おいマスター手伝え!」

「う、うむ…」

「ちょ、フォールン様俺はあんな戦闘に巻き込まれたく、」

「いくら奴でもあの空間は耐えれねぇよな」

「ディセプティコン、とりあえず今はメガトロン様を援護せよ」

「…今は、とはいつか略奪するつもりなのかな?」

「知るかよンなこと!」

「しそうだよなァ!」

「あいつがプロペラってことはわたしもプロペラ…!?」

「黙っててねプロペラ其の二」

「俺が最初だったのに…」


ディセプティコンもオートボットも入り乱れていく部屋からガシャーンだのどかーんだの聞こえてくるがトールは振り返らなかった。


「オプティマス…明日、覚えていて下さいね」


だが、怒りを抱えていたのはメガトロンだけじゃなかったようで、娘の反抗期が来たとオプティマスは泣く事になるのは確かだろう。










後書き
二万打お花畑企画、これにて閉幕です。
皆様本当にありがとうございます。皆様が来て下さっているお陰で無事二万打企画を終える事が出来ました。
そしてエオス様の素敵なリクエストのお陰でこのような企画が開催出来ました。
普段暗いかバカなものばかり書いてるのでこういったイチャイチャを書こうとするとつい調子に乗ってしまいます…。
ここまで読んで下さりありがとうございました!
これからもこのサイトをよろしくお願いします!!

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