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自室に向かう途中、人間の若者が
「あ、トール殿。サイドウェイズ殿からの贈り物用に鉢と支柱も用意しておきましたよ。窓に立て掛けてやれば今話題のグリーンカーテンというものにも出来ますが?」
と尋ねてきた。やってみますよありがとうございます、と返せば元気の良い返事が返り、軽やかに目前を駆けてゆく。
進行方向に向き直った途端また違う声が掛かった。
「トールさん、そっちの手の花どうしようか悩むでしょ? 良ければあたしが花瓶に差しておこうか? ついでにアサガオも部屋に置いとくし」
「おや、ありがたい申し入れです。恐縮ですがお頼みしますよ…実は握り潰しそうで怖かったのです」
「あいよ!」
にっかり笑ったその女性も勢いのいい返事で花を受け取り駆けて行く。
どうやら花を置きに部屋へ帰る必要はなくなったようだ。
目的地を仕事場(彼女の仕事は主に人間でいうデスクワークである)へ。到着して扉の前に立つと誰かの気配を感じた。
「どなたですか」
「ブラックアウトだ。勝手に入ってすまない」
「全くです。警戒してしまったじゃないですか」
ブラックアウト…メガトロン様から仰せつかった任務でここ数ヶ月アジアへ行っていた者だ。いつの間に帰ってきてたのか。
しかもトールの座席に座ってスコルポノックを膝で可愛がっている辺りに腹が立つ。
「ドレッズ共も誑かしたと聞いた」
「…ブラックアウト」
「冗談だ。ところでトールはメガトロン様より何か下賜されてないか?」
「メガトロン様から? いえ、何も。何か仰っていましたか?」
「…別に。そう、トールにこれを」
ガチャ、と大きな手を下に向け、トールを促す。
不思議な会話に内心首を傾げながら受け取ると、やはり花だ。
「あら、どうも。ブラックアウトまで?」
「別にそのような、贈り物などというものではない!」
声を荒げる度にフワフワ動くブラックアウトの背中のプロペラが無性に気になりつつ、話の流れ的にブラックアウトがくれた花はメガトロン様からだろうかと推測した。
鼻息荒くトールに詰め寄っていたブラックアウトは自分を取り戻すと慌てて身を引き必要のない咳払いで恥ずかしさを誤魔化す。
「兎に角受け取れ!」
「はいはい」
ふぁさと手のひらに落とされた花は美しい薄紫色だ。
「よし、任務完了」
「任務、ですか?」
「気にするな。………だいたいトール。お前はメガトロン様の傍に居過ぎじゃないか? 確かにあの強く偉大なお方を敬う気持ちは私にもよく分かる。トールの忠誠心はあのスタースクリームよりも遥かにあり、この私に届く程だろう。あの方の為に良く働いている事も知っている。…うむ、記録を見ても真よい働きだ。だが所詮は私に手が届くか届かないか程度…いや、私に敵う者など居ない! 私こそメガトロン様の忠実なるしもべ! そして頼りにされているのもこの私…先日なんて『他の誰にも出来ん仕事だ』と難関な任務を任されたのだ。この私を以てしても一月掛かったあの任務…!」
「はあ」
トールは知っている。メガトロンが身の回りにやたら現れしつこい部下を追い払う為に時間の掛かるものをわざとらしい口調で任せた事を。
「つまりだな! ………バリケードか」
まさかこの話はとても時間がかかるんじゃないか。
そう不安になった時ブラックアウトに通信が入ったらしい。
『ブラックアウトか。メガトロン様がお呼びだぜ』
「メガトロン様だと!? それを早く言え! では失礼するぞトール」
がしゃーん。
音を立てて盛大に窓ガラスを破壊し外でヘリコプターに変形したブラックアウトは尊敬するボスの名を叫びながら飛び去った。
膝に乗って熟睡していたスコルポノックは振り落とされてあわやというところでブラックアウトの収納庫へ滑り込んでいた。申し訳なさそうに振り返ってくれるというオプション付きで。
「何だ何だぁ!?」
声を上げて人間がトールの仕事場に飛び込み、そして大破している窓ガラス及び壁をポカンと見つめた。
「あー…ブラックアウトですよ」
トールは友を庇わず非難から逃れる道を即座に選択した。
問題はない。トランスフォーマーはその巨体故、頻繁に基地を破壊してしまうので呆れられるだけで済むだろう。
後書き
忠犬同士で同志で仲良し。
ブラックアウトの花はシオンです。込められた意味は「遠方にある人を思う」「思い出」「君を忘れない」「追憶」とかなのです。
密かにブラックアウトはデレていたのです。
この花を見て私を思ってくれよー、みたいな感じに。
というか任務を任せられる理由が情けなくてすいませんorz
彼にはこんな扱いも似合うのです!
120923
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