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「お、サウンドウェーブは居なくなったか」

「…クロウバー、サウンドウェーブ様ですよ」

「そんな細けェこたァ気にすんなよ!」

「ああもうハチェットまで。何か言ってくださいよクランクケース」

「…問題あったか?」

「………」


サウンドウェーブと分かれた直後、ひょこっと曲がり角から顔を覗かせたのはクロウバーとハチェット、クランクケースから成るドレッズだった。
あえて紹介しようとするならクロウバーは見た目はチャラついているが実はなかなか真面目で賢く、ハチェットは野性的であるが子犬のよう。そしてクランクケースは天然といったところか。


「全くモテる女は大変だねぇ。あっちこっちからアピールされてんだろ?」

「何を言っているのですかハチェット。モテる女とはアリスでしょう?   あの人間のオス…男達からのアプローチは凄いものでしたよ」

「…人間からだろそりゃ」


呆れたという顔のクロウバーに、トールはむっと口を尖らせる。トールから言わせて貰えば、本当にアリスのモテ具合は凄いのだ。
あのメッセンジャーを名乗る人間の、学校中の男を虜にしたのはまだ記憶に新しい。


「なあトール、そりゃ何だァ?」

「ん?   コレはサウンドウェーブ様から頂いた花です」

「おお、考える事は皆同じなんだな」

「ッチ。予想通りだがよ、なんとなく悔しいモンだ」

「そう嫉妬するなよクロウバー」

「あ?   クランクケースさん誰が嫉妬してるって?」

「そりゃモチロンお前だろォクロウバー!」

「ハチェット…また分解されてぇのか」

「素直になればいいだろクロウバー」

「だーかーらー!」


くるくる回る会話に入れないトールは居心地悪そうに身じろぎする。
トールが可哀想だぞ、会話を荒立てたともいえる立場のクランクケースが言うとクロウバーが複雑な顔をして、ハチェットは能天気な表情で話を一旦終わらせた。


「全く困った奴らだ。悪いなトール」

「いえ、構いませんが…」

「なあなあクランクケース、さっさと渡しちまおうぜェ?」

「そしてとっとと帰ンぞ!」

「そうだな」


ほぼ全身が黒の塗装の集団に囲まれているトールはまるでいじめを受けているかのように見える。足元でチラチラ見上げてくる通りすがりの人間たちに、嫌がらせしてるわけじゃねぇぞとクロウバーが睨みつけた。
トール、と名を呼ばれ顔を上げると目の前に小さな、今日何度目かの花が差し出された。


「オレたちドレッズからのプレゼントだ」

「…ふふ。花が似合いませんね」

「自覚はあるさ。えーと、何だったか…ソレの名前」

「スズランだぜクランクケース!   ボケたかァ?」


乱暴に肩を叩くハチェットをクランクケースはまるで気にしていない。これがチームというものか、とトールは羨ましく思った。


「意味はなぁ、」


ニヤニヤしながら口を開くハチェットより素早くクロウバーが告げる。


「意味はねぇよ」


おら行くぞ、と二人の足を蹴り急かす姿に、何か意味を籠めてくれたのだろうと悟りトールは微笑んだ。
ビークルになった三人に慌てて礼を言う。

「え、あ、ありがとうございました!」

「気にすんなァ!」

「気まぐれだ」

「言い出しっぺはクロウバーだからなあ」

「黙れ!!」


そしてそのまま逃げるクランクケースをクロウバーが、そのクロウバーをふざけてハチェットが追いトールの前から嵐は去っていった。
一人トールは検索する。


「スズラン。花言葉は…」


幸福が訪れる。


「やっぱり考えて下さったのですね」










後書き
さ、三人だから三倍なのですよきっと!
他に比べて長いですね。
ドレッズは初書きでした。
クロウバーの扱い易さ(笑)

120922

設定↓
クランクケース:のんびり。天然。さらりと爆弾発言。
クロウバー:賢い。口悪い。照れ屋。キレやすい。チャラい。意外と真面目。
ハチェット:野性的。バカ。子犬のよう。好奇心旺盛。


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