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「あの、ショックウェーブ様」
「………ん、何だトールか」
真面目に仕事をこなし、次に託すべき相手であるショックウェーブは普段部屋に篭っているというのに、探している時に限って珍しくぼんやりと外に居た。
「どうかなさったのですか?」
「メガトロン様から休暇を頂いてな。ドリラーも今地球に居ないからすることがない」
「あー、と…休暇、ですか」
「ああ」
「確かにいつも働いてばかりですので急に休みに何をすれば良いのか分からないですね」
普段仕事ばかりしているショックウェーブの休暇だ。また仕事の話を持ち込むのも申し訳ないと思ってトールは自分でその処理をすることに決めた。
「だから何もしていないのだ」
「そこら辺を手当たり次第ウロウロしていると自然と誰かと遭遇しますよ。たまには行き当たりばったりに他人と関わってもいいと思います」
「成る程。トールの休暇の使い方が分かったな」
「え、ちょっとあの?」
「分かっている。別に誰も適当だなんて考えてないさ」
「思っていると言っているも同然です…」
アドバイスをしたつもりがからかう口実を与えてしまった。しかしそこで話を続けられるようになったのは此処地球に来てからだ。
案外トランスフォーマーも環境で変わるものである。
「その過ごし方も有りだな」
「(サウンドウェーブ様はこうもいきませんね)引き篭もり気味ですし」
「え」
「あ、いや貴方もですが今のは違って…」
サウンドウェーブについて考えていたら返事の代わりについ心の声が漏れてしまった。慌てて弁解するも否定どころか肯定していたり他人のことを考えていたことといい、逆に酷いことに気が付いていない。
「ま、まあ一つだけ用事はあった。ほら」
「っと。 ショックウェーブ様までこんな…あ、ありがとうございます」
ポイと寄越されたのは紫の花。
「そこらで摘み取ったものだからな。皆のように深い意味は無い」
「これはスミレ、ですか? でもその大きな体でこんな花を摘むのも大変だったでしょう。ありがとうございます」
スミレ、花言葉は密かな愛。成る程、適当に摘み取ったのは納得だ。
どうもと穏やかに微笑んでもショックウェーブはふいと遠くへ視線をやってしまった。その単眼から感情を読み取れるほど彼とトールは深い繋がりがあるわけでもない。
だがいま、ショックウェーブともっと仲良くなっておきたかったとトールは感じていた。
「それでは失礼しま、」
「まあ待て。用事があったのは分かりきっている。例の件だろう」
「…しかし休暇なのに」
出て行く直前に言うとは。
トールは申し訳ない気持ちで一杯だった。それをショックウェーブが悟り、代わりの仕事を彼女に任せることにする。
「構わん。そこまで時間もかからないしな。代わりにメガトロン様に此方のチップを持って行ってくれたらありがたい」
「了解です」
では、とトールが建物の中に帰った後もショックウェーブは空を見つめて外に居る。
「意味は…あった」
それだけ呟いてショックウェーブも踵を返し部屋に戻ろうとする。もうすぐドリラーも帰るだろう。
後書き
静かな男、ショックウェーブ!
つい愛が溢れてしまいましたよ!!
トールさんが幸せなら隠したままにしておこうという考えですね。
121012
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