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面白い事になりそうだ。
サウンドウェーブがステラの言葉を自由にさせたのはついさっきのことだ。
そして無言でメガトロンの部屋に通され、不自由な体に苦悩し自由な口で罵詈雑言を吐く。
暫くして主の帰還に反応し、体が脳に命令した。
既に慣れてしまったそれに崩れる程度のプライドなど持ち合わせていないステラは命令されるままに片膝を着いてメガトロンを迎えた。
無事に、帰ってきてしまった。
オートボットが千載一遇のチャンスを逃した事に、当然だという変わらないオートボットに対する安心と、滅多にない好機を生かせなかった失望に顔を歪ませ、垂れていた頭を上げた。
そしてその先に居る姿に息を飲んだ。
青と赤のボディは、記憶の中の彼とスキャンした対象位しか変わらない。
「オプティ…マス………?」
「…誰だ?」
それはどうやら二重の意味でのようだった。
オプティマスとは誰か。
………親しげに話し掛けてくるお前は誰か。
隣に居るかつての敵の名を勝手に呟くステラに一瞬眉を顰めたメガトロンはそれが忠実なる部下の仕業だと気付いて薄く笑った。
「ソレは俺のモノだオライオン。間違っても手を出すなよ?」
いつの間にか己の横に立ち、肩を抱いたメガトロンにはっと喉を震わせる。
「な、手を出すわけないだろう! 全く………すまない、私はオライオン・パックスという。良かったら君の名前を聞いていいかい?」
「オライオン…? 嘘。貴方は私達の、私のっ、」
支配された体が軋むほど力を込めると、隣で黙れとメガトロンが命ずる。
「悪いなオライオン、コレは今怪我の所為で混乱していてなぁ。ステラというんだ」
さて、お前の大切なオプティマスは、大切なお前の名を聞いただけで思い出してくれると思うか?
耳元で悪意が囁く。
大丈夫、オプティマスなら私の事を記憶してくれている。
ステラはそう考えながらも嫌な予感に襲われていた。
「ステラ、か」
「そうだ、ステラだ。どうした? 実は知り合いだったなどというサプライズでもあったか?」
「んー、いや。………フフ、冗談でも知り合いだなんて言ったら嫉妬深い君に殺されてしまいそうだな」
オプティマスなら決して言わないその台詞にステラは甲高い電子音を鳴らす。
一瞬オプティマスがステラを、あの頃と同じ目で見た気がした。
だがその事実を確認する前にメガトロナスとオライオンに呼ばれた男が疲れただろうとらしくない優しげな声で促す。
「部屋に案内しよう。ステラは此処で俺の帰りを待っておけよ?」
「うん、お願いするよ。…それじゃ、ステラさん」
待って。
「はい、さようなら」
待ってくれるわけ、ないのに。
ステラが忘れオプティマスを傷付け、ステラが思い出しオプティマスが忘れた。
周囲からの情報で、いつかの期間を忘れていて、その期間に彼を酷く傷付けた事は知っている。きっとオプティマスもこんな痛みを味わいそして耐えたのだろう。
今度は己が傷付く番だ。
もう彼と慈しみ合う事はないのだろうと悟り、ステラは崩れ落ちそうな思いだった。
扉が閉まる。
オプティマスとの思い出も一緒にメガトロンに持っていかれてしまった。
入れ替わるように立ち入って来たサウンドウェーブが正面からステラを見下す。
サウンドウェーブ越しにメガトロンのメッセージが流される。
「残念だなステラ。貴様程度の凡愚がプライムに見合う訳がないだろう。とうの昔に自覚していた筈だ」
「貴様の愛では、足りないようだ」
「もしくは」
「オプティマス・プライムはステラという者のことなど既にどうとも思っていなかったのかもしれないなぁ?」
「やめてっ! 黙ってよ!!!」
感情を露わにしたステラが正面からサウンドウェーブを睨み、そして直ぐさま力を失ったように目を逸らす。
サウンドウェーブにはステラの感情を悟るなどエアラクニッドを下すより容易いものだった。
悲痛な叫びが彼女の心を支配していることが手に取るようにわかる。
興奮したサウンドウェーブはステラに手を伸ばし、
「サウンドウェーブ、お前は後だ」
諦めた。瞬時に手を下ろしタイミング良く現れた主に深く礼をして扉の前へと移動する。
楽しみは、いつでも出来る。
オライオンと次はどうしようか考えつつ、主と玩具の会話に静かに録音機能を作動させた。
後書き
衝動的に続き。
ますます私はイかれたに違いありませんね。
121004
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