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「い、たい。いたいいたいいたいやめてさわらないでくるな、痛い」


ギギ、と金属同士の擦れ合う音とそれに伴って時折小さく甲高い悲鳴が部屋に反響する。


「あ、」

「たすけ、らく、」


もう一方の人物は彼女が何を言うのか気になり手を止めた。


「助けてえあらくにっど」


何を言うかと思えば。
溜息を吐きたい衝動を堪えて彼は作業を再開した。
繊細な場所だ。うっかり機能を壊してしまっては困る。
うつ伏せに固定され、神経を切られて動く事もままならないステラのスパーク、そこにノックアウトの手が差し込まれていた。
正確に言えばスパークのすぐ傍であるが。


「貴女も全く災難な方ですねぇ。仲間に売られてしまうとは」

「うそ、あのかたはそんなことしない」

「…そもそも何故貴女の様なオートボットがあの女と共にいたのです?」

「エアラクニッド、私を助けた」


どうだか、と真相が気になったノックアウトは一時的に彼女の当時の記録を引き出して見る事にする。
記憶回路を守る壁を開くと、予想通り何者かの手が入っており線が何本か組み替えられていた。
ま、あの蜘蛛でしょうがね。
慣れた手付きで元へ繋いでゆく。連動してステラが苦しそうな声を上げた。
最後の一本。
曇り空のようなその線を合わせた瞬間、ステラは強制的に意識を落とされた。勿論ノックアウトの仕業である。
一々彼女の言葉で聞くのが面倒であると、その記録を画面に映し出す。
そして考えていた以上のソレに目を見開いた。


『オプティマス』

『貴方が大好きよ』

『大丈夫、大丈夫よ。きっと…いえ必ず無事に帰るわ』


オートボットの司令官と、ステラはどうやら恋人というものだったらしい。
場面は変わる。
蜘蛛女とステラの戦いは人質を取られた結果、ステラの優勢からエアラクニッドの勝利に傾いたらしい。
そして囚われいたぶられた末に記憶回路を弄られて、オートボットに捨て駒にされた所をエアラクニッドが拾った、という事になったらしい。
以降は忠誠を誓うステラとエアラクニッドの映像だった。


「ふむ」


これは面白い。
闇医者は嗤った。
終わった時ちょうど届いた文章をざっと読み削除する。
そしてステラの体に再度手を掛けた。


「この方向性でいきますか」


別の所から取り出した管を、彼女の体に繋いだ。





「おやサウンドウェーブ。今終わったところですよ」


うん、とでも言うかのようにゆっくりとサウンドウェーブは頷いた。
ステラの眠る部屋の扉を無遠慮に開く。
先にサウンドウェーブが入り、続いてノックアウトが入って扉を閉める。


「ノックアウト…様っ」


意識を回復していたステラは宿敵の名を呼んだとき、漸く思い通りにならない言葉と体に気が付いたようだ。


「おっと失礼。私の名を先に呼んでしまうとは…悪い子ですね」


きちんと貴方の名を呼ぶように教えたのですが。
気にしていない。サウンドウェーブは首を振った。


「ちょうど本人も意識があるのでぱぱっと此処で説明しましょう」

「…」

「まずは記憶の方ですがね。先程送った通り、オプティマスプライムの恋人だなんて面白い過去があったので復元させておきました。代わりにエアラクニッドと一緒だった記憶を削除しておきましたよ。どうやらその時代にオートボットと接触していたようで、また今の状態で会わせると楽しいことになりそうです」

「………」

「なんせ自分の知らない間に完全に敵対していたのですから」


どういうことだ、とステラは混乱して一向に彼の言葉が理解出来ない。何故エアラクニッドの名前が出るのか。
…そうだあの時の任務はどうなったのだったか。
再生させようとしても真っ白だった。


「後はとりあえず、最初の依頼通りに絶対の服従と…声を無くす方向も考えたのですが、貴方は悲鳴が好きだという噂を聞いたので。……当たりですか、それは重畳」


言葉も体も、記憶も。
何もかも全て操作されてしまったということだけは理解した。
記憶の中では数時間前に会ったオプティマスを思い返す。
助けて、と声に出せずに呟いた。


「意志を持つ人形のようなものですかねぇ」


ノックアウトはそうサウンドウェーブに告げた瞬間、ぞくりとして体を震わせた。
陰鬱な笑い声が聞こえた気がしたからだ。
悟られないようゆっくりとサウンドウェーブに視線を向けると、タイミング良く彼はステラの顔を掴んで引き寄せ、瞳を覗き込んで事実を確認していた。
相変わらずの無表情に、気のせいだったかと密かに訝る。
サウンドウェーブはくるりと踵を返し、ステラを伴って部屋の出口に向かう。
ノックアウトは餞別にとステラの背中に一言を贈る。


「安心してください。貴女の仕事は主にメガトロン様の世話をするだけですよ。ちょっと痛いかもしれませんが。後は全てサウンドウェーブが教えてくれます」


お大事に。
最後にオプティマスに触れた右手を、ステラは固く握りしめた。










後書き
衝動書き。
まあ世話っていうか相手っていうか…ですね。
お察し下さい←
メガトロン様の相手(手加減無し)と、サウンドウェーブの相手(鬼畜)。…怖いものです。
鬼畜さんなんて、絶対服従な相手が悲鳴上げるまで頑張るっていうかそこからが本番っていうか…。
公開するのに躊躇っていたのですが先日放送の強い音波さん+踏み付けについ…←

121003

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