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まだオールマイトがその威光に影を落とす前の話。
相澤とレイが出会ったのは何て事の無い酒場だ。
非効率を厭う相澤はその日ヒーローの中のヒーローことオールマイトに引き摺られ死んだ目で仕事終わりの一杯に付き合わされた。


「いやあ、久しぶりに相澤くんと親交を深めたくてね!」


白い歯の輝きを見せ付ける彼のことは嫌いではないが、如何せん場所が悪い。これが個室の静かで落ち着いた空間ならば文句は言いつつも付き合えただろう。


「…アンタがこんな人目に付くとこ来たらこうなるに決まってんだろ……」


扉を開けてから五分もしないうちにその場にいた客に囲まれキャアキャア(女は勿論だが、男も黄色い声を上げていた…きっと酔いが回ってテンションが高くなっていたからだと信じたい)纏わりつかれることは予め予測できてた。アングラヒーローは存在に気付かれもせずこれ幸いと店の奥、陰のカウンターに滑り込み適当に注文をする。
数分もしないうちに隣に誰かが座った気配は感じたが顔を上げもせず酒を待つ。
一、二杯も飲めば「確かにあの店の空間を共有して飲んだぞ」と後で言えるだろう。そんな打算を胸にチビチビ杯を煽る。
一時間が経過した辺りで会計を済ませ席を経った。





また別の日に、どういうわけか彼が少し飲みたいなと思ったときに思い出すのはその店だった。
人気はあるがあの店のあの一角は静かで落ち着いた雰囲気を醸し出し、人々の幸せそうな顔を眺めながら思考の波に飲まれることも出来る。かといって高級な訳でもない。
まだ余裕ある金銭を稼げない相澤にとって安い店であることは重要だ。
もう一度行き、あの雰囲気が今日もあるなら通うようになろう。そうでなければさっさと帰れば良いだけだ。
財布と連絡手段だけ確保してのっそりと起き上がり動き出す。





店に入ったが初めて来たときとは違いヒーローの中のヒーローを連れていなかった為、誰も彼がヒーロー業を営んでいることに気付かなかったようだ。あの時と同じ席が空いていたのでそこに座り最初の一杯を注文しようと顔を上げた。
そしてあの時同様に隣に人の気配がやってくる。あの日と違うのはそこで相澤が顔を上げていた事だろうか。隣に来たのは女だった。
その日は注文以外誰とも何も話すことはなかった。
やはりあそこは落ち着いていられる。
こうして相澤は行きつけの店というものを手に入れた。










あとがき
話していないのは仕様です。
このままゆっくり馴染んでから話すんでしょうかね…。

161015

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