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路地裏にて。
細く頼りない体がへたり込んだ。血こそ吐いてないもののその顔色はすこぶる悪い。
下を向いて荒れる息を整えようと深呼吸を繰り返すその姿はとてもあのオールマイトと同一人物とは思えない。
路地裏に蹲るその姿を見てレイは駆け寄る。


「ああ…レイ君かい。大丈夫だ、少しフラッとしただけさ」

「オールマイト。私は誤魔化されませんよ?」


顔を横に振り、未だ立てそうにないというのに無理をして立ち上がろうとするオールマイトを制すると弱々しい笑みを向けられる。


「少しだけ、ちょっとだけ休憩しましょう?」


ちょっとだけです。貴方にはそのちょっとの休憩すらありゃしない。
眉を寄せまるで自身の痛みの様に瞳を揺らすレイが不意に愛おしくなり手を伸ばしかけて。

いや、駄目だ。

浮きかけた掌をその場で握り締め留める。


「そうはいかないさ。私は…オールマイト!」


勢いをつけて立ち上がるとさっきまで自身を見下ろしていたレイの位置は遥か下となる。レイも立てどその身長差は埋まることはない。


「オールマイト」

「私は平和の象徴さ! だからこれしき…っ!」


息を大きく吸ってマッスルフォームへなろうとしたとき飛び込んできたレイを胸が詰まる思いで抱き止める。


「今日は駄目です。許しません。お仕事は禁止です」

「レイ君……私は君の言葉には弱いんだよ、やめておくれ」

「駄目ですって! …ねえ、ヒーローは貴方一人ではありませんよ。エンデヴァーにでも投げちゃいましょうよ。お願いです」


一人では無いなんて分かっている。それでもこの身体を動かすことを止めることなど出来ない。
オールマイトの胸元に顔を埋め小さく肩を揺らすレイのその背に手を添え弱く抱き締めた。


「ヒーローは人任せなんて出来ないさ! さあ、ほら離しておくれ、オジサン困っちゃってるから!」


妥協しない言葉を聞いてしまうともうヒーローを独り占めなんて出来ないではないか。
顔を上げオールマイトと目を合わせ、そうですねと小さく微笑むとそっと体を離す。


「っええ。ええ。それでこそ、私のヒーローです……あの?」


10cm程まで離れたのに今度はその要求をしてきたオールマイト自身によって強く抱き締められた。


「ありがとう、いつも」

「いいえ」

「今この瞬間はヒーローではなく君だけのオールマイトになるからね、それで勘弁してね」

「仕方ないですねー、じゃあこんなところ出ましょう。路地裏で抱き合う男女なんて今時無いですから!」


今度こそ本当に体が離れた。しかし直ぐにどちらからともなく手を伸ばして絡める。


「あのですね、オールマイト。お誕生日おめでとうございます。プレゼントに貴方の時間を貰ってあげましょう」

「君ね……誕生日なら寧ろ私がプレゼント貰う側!」

「でも満更でもない感じですし」










後書き
オールマイト誕生日おめでとうございます。
スランプ故に…いやそもそも私の技量の問題ですが。話の展開が揺れまくりですいません。
回復したらオーマガや他のキャラも書きたいです。

150610

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