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鮮やかなピンクの羽根に、目を奪われた。
ピンクの羽根を纏う者は一人で、楽しいこともないというのにフッフと笑いながらここ、海軍の基地を闊歩している。
あれは七武海の一人、ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。
彼の者の姿が見えなくなったときにはもうレイの頭からは任せられた仕事の事など抜け落ちていた。





彼の姿が見えなくなった頃に、彼が進んだ道を辿る。そんな不気味な存在に勿論ドフラミンゴは気がついていた。自分を警戒した海軍がこっそりと付けた見張りといったところだろうと見当はつけている。良い加減鬱陶しくもなり暇潰しがてら遊んでやろう。
通路を右折してすぐの場所に気配を殺して佇む。


「…と、右か」


十分もしないが待ち伏せに既に飽きてきたドフラミンゴはこんな回りくどいことをしないでとっとと締めておけば良かったか、と壁から背中を離し、気配を消すのもやめる。しかしちょうどそのタイミングで付け回してきた人物が現れた。


「お」

「あっ」


その人物ことレイは気配を殺した彼の存在を全く嗅ぎとれず突然現れたピンク色の姿に突っ込む。
思わず双方から声が上がった。
慌ててピンクに埋もれた身を引こうとするが背中に回された手は離れない。取り敢えずそのままレイが頭を下げる。レイを一瞥して、ドフラミンゴはニヤリと唇を吊り上げた。


「何だ、女だったか」

「そういう貴方は単なる人間だったのですね…残念です」

「…はぁ?」


会って五分もしない女に残念と言われた。しかも、七武海を相手に単なる人間、と。


「フ…フッフフフフ!!」


突然の笑いに戸惑いが隠せない。そして考えていた以上に拘束時間が長いので誰かに遭遇しやしないかとレイはヒヤヒヤしてしまう。


「えーと…あの?」

「アンタ、名前は何ていうんだ?」

「レイですが」


ふうんと返事をして上から下まで舐めるように見回す。
そのねっとりとした視線に若干引き気味になりながら、他の誰かに見られたら何を言われるか分からないと考えてどうにか離れようと豊かな腹筋を腕で押す。離して貰えない。
一方捕まえているドフラミンゴは大層楽しそうな様子であった。


「よし、レイ。お前……………あの袋は何だ」


ぶつかった拍子に手から離れ地面に伏した厚い布で出来た袋。そしてその入り口からは微かに…


「お、お気になさらず」


桃色の羽根が見えていた。
視線に気付いたレイはばれるまいと彼に向かい合ったまま右足でサッと袋を自分の影に移動させる。


「フフフッ! 俺に隠し事出来るとでも思ってんのかァ?」


ドフラミンゴが密着していた身体を離し、クイッと何かを操るように手を動かす。レイの抵抗も虚しく彼女自身の手で袋は彼の目前へと掲げられた。


「俺の…コートの羽根か? 何だレイ、俺の熱烈なファンか」

「違います。貴方本人への興味は微塵も欠片もありません」

「酷い言い草だぜ。サインやろうか?」

「燃やしても良ければ受け取ってあげても構いません」


あんまりにもつれない反応にドフラミンゴは俯き、肩を震わせる。


「フ、フッフフフフフ!!! イイねアンタ、最高に面白いぜ!!!」

「どうも…全然嬉しくありませんが」


ひとしきり満足いくまで笑ったのか静かになった。急にへの口になり、何かを思案しているようだ。そろそろいいだろうとレイが踵を返す。


「あー…ま、事後承諾でいいか」

「事後…ってちょっと何ですか!」

背後から長い腕が伸びてきてレイの腰に巻き付き、抱き上げられる。自身の体格に対して随分とこぢんまりとした身体を横抱きにし、ドフラミンゴは歩き出す。


「何っつってもなあ。誘拐?」


目指すは海。彼の船だ。










後書き
海賊ブームが来てた頃の話です。三ヶ月ほど前でしょうか…。
桃鳥さんはぶん殴りたいほど好きです。

140124

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