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午後三時二十分前。私は何故か駅前のファミレスで一人静かに烏龍茶を飲んでいた。しかも四人席。いや、何故かは分かりきっているが、どうしてそれに従い私は此処にいるのだろう。
キョロキョロ辺りを見回すと冬休みだというのか学生…それも男女が向かい合わせに腰掛けて談笑している。時々それ以外の人物も見かけるが友達同士であったり一人新聞を読み耽ったりと私のように一人を居心地悪く思っている人物は居ないようだ。心なしか店員の目が痛い。
午後三時十五分前。今何処とメールを打つとタクシーと返ってきた。
午後三時一分前。よし、一分前に来ないということは三時に間に合わないということだ。結論付けて鞄を手に取りコートを羽織ろうとしたところで手を止めた。一応義理として調度までは席についておく事にしただけだ。
午後三時一秒前。電波時計を見ながらよし、とコートを手に持つ。
午後三時。よし退散と席を立とうとすると声が掛かった。


「なんだ、もう行くのか」


…後ろから。


「しまった盲点だったというか来たなら同じ席に着け何故わざわざ真後ろを選んだの!」

「なに、約束の時間までだったら一人寛いでいたっていいだろ?」

「約束より早く来るのが大人としての礼儀でしょうが!」

「来てたさ」

「姿を見せなさい姿を」

「周り見た時に気付くべきだったな」


ああ言えばこう言う男には毎回ながら腹が立つ。激情家な私にとってこいつと話すのは大変疲れてしまう。分かっているのに毎回こんなことを繰り返している自分にも腹が立つ。


「さて」

「何よ」

「出るか」

「…こんにゃろ」


この場で話すのでないなら何故集合をファミレスにしたのか。
さっきから何故が多いが気にしないで欲しい。
取り敢えず勘定、と思って鞄を手にして奴を見ると。


「………」

「なんだ、惚れたか」


見ると。


「因みに、いつ来たの?」

「無視かよひでえ女。ま、黎が席に着いて三十分後といったところか」

「嘘でしょう」

「まあな」

「というかその場合何故私が来た時間を知ってるのかという話に繋がるし。こっわ」

「一時間前に来るなんてお前イカレてるぜ」

「結局知ってるの!?」


見ると伝票が入るべき場所には何にもない。


「一時間全く何も頼んでないのね…なんて迷惑な男なの」

「別にいいだろう」


つまりはそういうこと。
この男、要らなかったからなというだけで店の席を占領していたのだ。
店員の痛い目は私ではなく後ろの席に向かって注がれていた。


「いや烏龍茶一つで一時間居る方も見てただろ」


男に注がれていたようだ。
ああよかったとレジに向かう。


「後ろの席だった方はお連れ様でしょうか?」

「まあ、一応」

「では一緒に会計させていただきますね」


伝票は、二枚あった。奴のと私ので合わせて二枚。
…結局、頼んでいたじゃんか……!!


「貝木コノヤロー!」

「まだまだ甘いな」





後書き
お互いの名前が一回しか出てないのは笑う点なのでしょうか。
貝木さんは若干わざとです。
貝木さんにしては数は多いものの簡単な嘘ばっかになってしまいました。これも私の頭が回らないせです…。

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