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繋がられた手のひら

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∴擬人化




ディセプティコンとの戦いが終わり、地球に平和が訪れた。NEST部隊から引退した私は新しい職を探し、今では平和に暮らしている。普通に仕事に行って、仕事が終わったら夕飯の買い出しに行って、休日の日はショッピングに行ったりと平和な日々を送っていた。

「筈なんだけどなぁ…」

ニョロニョロと浮かびながら私を囲う無数のコードのようなもの。仕事の帰りに誰かに後を付けられている気配がして路地に逃げ込むと相手は人間ではなく、一台の高級車。それは紛れもなくメルセデスベンツで私がいくら働いても追い付きそうにない程高い車。よく見れば運転席には誰も座っていなく、勝手に動いていて、しかもコードが伸びてくるとくれば彼しかいない。

「…何の用ですか?サウンドウェーブ」

私が問えばコードが伸びて来て私の髪を掴む。する、と頬を滑り体が震えた。そして、乗れと言うかのように上下に開くドアが開いた。乗りたくはなかったが相手はあのメルセデスベンツだ。この短い人生で乗れることなんて二度と無いだろう。でも、すぐに家に帰って大好きな愛犬を抱っこしてお風呂に入ってふかふかのベッドに入って眠りたい。でも、乗りたい。二つの欲望が一斉に私を誘惑する。深々と悩んでいる私に痺れを切らしたサウンドウェーブは低い声でさっさと乗れ、と呟き、勿論断る勇気なんてなく怯えた声ではい、と言って怖ず怖ずとメルセデスベンツの運転席へと乗り込んだ。



「あの、サウンドウェーブ?一体どこまで行くんですか?」
「…黙って乗っていろ」

怖い。怖い怖い。もう死にたい。もう、走り出して一時間経つというのに一向にサウンドウェーブは止まらない。ただひたすら走り、目的地すら教えてくれない。サウンドウェーブとは戦いの最中と和解してから基地内で何度か顔合わせたくらいでそれ以外に何もない。一言二言言葉を交わした事はあるが必要最低限の会話だけで深く話したことはない。脱退してから二度と関わることはないだろうと思っていたのに何故私は彼に乗っているのだろうか。何をされるかなんて皆目見当がつかないし、されたくもない。考えている間に大分走ったらしく気付けば窓の外には海が広がっていた。町中に住んでいたため、海とは無縁の生活を送っていた私は海の広さに驚き窓に張り付きながら外を見ていた。そして、海の側の海岸着き、下りろ、と低い声で言われて下りると砂にヒールが埋もれバランスを崩した。ぅわ、と声を上げて次に来るであろう衝撃に目を閉じるとその衝撃は来なく体が止まっている。目を開くと水色のバイザーをした銀色の髪をした男が私を支えていた。

「…大丈夫か」
「あ、はい…えと、どちら様ですか?」

私の言葉に黙ってしまった男は屈んで私の足に触れる。慣れた手付きで履いていたヒールを脱がす。片手にヒールを持ち、私の手を持って歩き出した男に着いていくように歩き出すと男は私を見下ろす。

「わからないか?」
「え?は、はい…」
「では、先程乗ってきた車はどこへ行った」
「…え?」

振り向くとさっきまで乗ってきたベンツは消えていて、辺りを見渡してもあの高級車はなく、動いた形跡もない。ということは、と思い私の手を持っている男を見る。

「もしかして、サウンドウェーブ、ですか?」
「やっとわかったか」
「え、嘘、え?なんで、人間の姿に…」
「オートボットの軍医に頼んだ」
「ラチェットですか…」

あの似非軍医ならやりうることだ。それよりも触れなくてはいけない部分がある。何故、サウンドウェーブがヒューマンモードを搭載し、私を連れて海に来たのか。ディセプティコンの参謀であるサウンドウェーブがあのラチェットの所に行き、会話をしているところなんて想像がつかない。また私の手をとって歩き出したサウンドウェーブは海水が届きそうな所まで行き、ノエルと名前を呼んで私を見る。バイザーのせいでサウンドウェーブの瞳を見ることは出来ないがきっとバイザーの下では私を見ているのだろう。

「サウンドウェーブ?」
「オートボットの副官に、お前が海を見たことがないと聞いた」
「へ?ま、まぁ、」
「だから、こうして連れて行けば喜ぶと言っていた」
「そ、そうなんですか(ジャズの入れ知恵か…)」
「…今、お前は嬉しいか?」
「え、も、勿論!初めて海見ましたから」
「そうか」

ならいい、と頷いたサウンドウェーブは視線を海へと移し黙って見詰める。私も同じように海へと視線を移し見詰める。繋がられたままの手は温かくてディセプティコンらしくないそれに笑った私にサウンドウェーブは首を傾げた。




繋がられた手のひら


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『匿名』の佐々木様からの頂き物です!
サ、サ、サウンドウェーブー私も海に連れてって欲しい!
素敵なお話ありがとうございました!

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